食用油(廃食用油を含む)は、堆肥化の「発酵熱」を押し上げる材料として扱えます。大阪府立食とみどりの総合技術センターの試験として、鶏ふん・牛ふん・馬ふんに廃食用油を混合すると、堆肥の温度が高い期間が長くなる傾向が示されています。
特に牛ふんでは、廃食用油を10%添加した条件でも、4週間の堆肥化で油がほとんど分解されたとされています。
ただし、ここで重要なのは「油=魔法の添加剤」ではない点です。油は窒素・リン酸・カリのような肥料成分そのものを増やす話ではなく、微生物の活動を後押しして分解・発熱を進める“燃料”として働くイメージです。結果として高温期が伸びやすく、一次発酵の立ち上がりが遅い原料(含水率が高い、粒が細かい等)を補助できる場面があります。
農業現場の判断としては、次のように使い分けると安全です。
油を入れるときに最初に決めるべきなのは投入量よりも「通気の設計」です。公的な知見として、廃食油は通気性改善の効果がないため、オガクズ等で適切な容積重に調整した上で利用するよう注意されています。
つまり、油は“空気の道”を作れません。油が原料粒子をコーティングし、局所的に空気が入りにくい塊(だんご)を作ると、そこで嫌気化→悪臭→温度が落ちる、という逆回転が起きます。
そこで副資材は、単なる水分調整材ではなく「通気材」として選びます。現場で使いやすい候補は次の通りです。
投入量の考え方(目安づくり)は、「油を主役にしない」ことが安全です。まずは副資材で“空気が通る堆積”を作り、油は温度や分解速度を微調整する追加燃料と捉えてください。牛ふん+油の試験では10%でも分解が進んだ例がありますが、原料の種類・水分・粒度・切り返し頻度が違うと同じ比率が通用しません。
参考)ダンボールコンポストで作った堆肥の有効活用について|岐阜市公…
さらに注意点として、食用油には「分解されにくいタイプ」があり、その場合は微生物が分解できず、温度を上げる効果が出ない可能性があると指摘されています。
現場では、健康志向の加工油や機能性をうたう油(家庭や食品工場由来)など、原料が混ざるケースもあるため、“油の種類が一定しない回収ルート”ほど小さく試すのが合理的です。
堆肥化で問題になる臭気は、原料由来の匂い以上に「発酵時の臭気」です。環境省の堆肥化施設向け事例集では、堆積発酵の初期にアンモニア等が一時的に発生し得る一方、好気性発酵が進むにつれて臭気発生量は減ると整理されています。
逆に、原料に空気が入らないと嫌気性発酵になり、硫黄化合物や低級脂肪酸類などの悪臭物質が長期間発生するため、通気性の確保が臭気対策の基本になるとされています。
油を入れた山で「酸っぱい臭い」「腐敗臭」「いつまでも臭いが引かない」が出たら、油そのものより“空気不足の設計”を疑うのが近道です。対策は設備の有無で分かれます。
「どんな臭いがしたら危険か」を共有しておくと、担当が変わっても失敗を減らせます。簡易チェックの例です。
参考:堆肥化施設の悪臭が「嫌気性発酵で長期化しやすい」理由と、通気性確保・捕集脱臭の考え方(総論)
https://www.env.go.jp/content/000060653.pdf
油を使う堆肥化は、感覚だけで走るとブレやすいので、温度と臭気を「数字とメモ」で残すほど再現性が上がります。環境省の事例集でも、施設ごとに工程や手法の見直しを行い、堆肥の色や触感で発酵の具合を確認しつつ水分量等を微調整するなど、担当者の経験・知識が品質安定化に大きく影響するとされています。
農家の現場でできる“軽い運用”としては、次の2点だけでも効果があります。
切り返しは、油を入れたときほど重要になります。理由は、油は粘性があり局所に偏ると嫌気化しやすく、偏りを解消する操作が切り返しだからです。施設では撹拌機・床面通気など複数の通気方法を組み合わせる事例が多いことも示されています。
小規模でも考え方は同じで、「空気の入口(表面)」「空気の通り道(空隙)」「空気の出口(熱と水蒸気の抜け)」を切り返しで作り直します。
検索上位の一般論では「油は入れてよい/ダメ」の二択になりがちですが、現場で効くのは“油膜(コーティング)問題”を先に潰す設計です。油は通気性を改善しないという注意がある通り、空気を遮る方向に働きやすい素材でもあります。
そこで独自視点として、油を「液体のまま拡散させない」段取りに変えると失敗率が下がります。具体的には、
このやり方は、設備投資なしで「油を扱う難易度」を下げる発想です。油を堆肥化に回す価値はありますが、価値が出るのは“油を分解できる現場条件”を作れたときだけなので、投入より先に構造(通気・水分・切り返し)を整えてください。

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