稲カメムシは体長12~13mmの大型斑点米カメムシ類で、成虫で越冬した後、7月の早生品種出穂期に水田に飛来します。1950年代まではイネの主要害虫でしたが、その後一部地域では絶滅寸前まで減少していました。しかし近年、耕作放棄地の増加や温暖化による越冬死亡率の低下により、再び全国的に発生が増加傾向にあります。
参考)https://www.maff.go.jp/chushi/seisan/hukyu/attach/pdf/smart-117.pdf
イネカメムシの年間発生回数は1~2回で、越冬地から直接水田に飛来して交尾・産卵を行います。他のカスミカメ類とは異なり、イネ科雑草での増殖を経ずに水田内で世代を繰り返す特徴があります。出穂期頃から活動を開始し、稲の穂を吸汁することで深刻な被害をもたらします。
参考)水稲-斑点米カメムシ類/茨城県
越冬地については現在も調査が進められていますが、雑木林などで成虫越冬することが確認されています。春から初夏にかけて越冬地で過ごし、イネの穂が実り始める時期に合わせて水田に移動する生活史を持っています。
参考)将来、米の収量への影響は!? 温暖化でイネカメムシが増加? …
稲カメムシによる被害は「不稔籾」と「斑点米」の2つに大別されます。出穂直後から乳熟期にかけて穂を吸汁されると、籾の発育が停止して不稔が発生し、収量が著しく低下します。研究データによると、1頭/株の密度で6%の不稔が発生することが報告されています。
参考)https://www.maff.go.jp/kanto/seisan/nousan/suiden/kouon/attach/pdf/250120-2.pdf
穂が立ったまま不稔となる症状は、出穂期から登熟初期の加害が甚だしい場合に顕著に現れます。特に早生品種と晩生品種での被害報告が多く、出穂のタイミングとカメムシの飛来時期が重なることが原因とされています。
参考)不稔米を発生させるイネカメムシの被害にご注意ください!!/茨…
登熟後半のモミを加害された場合は、籾の基部を中心に黒点が生じて斑点米となり、玄米品質を大きく低下させます。イネカメムシは幼虫での斑点米被害も多いとの報告があり、水田内で産卵・増殖することで被害が長期化する傾向があります。
参考)http://www.jagunma.net/takasaki/wp-content/uploads/news_2025082601.pdf
稲カメムシの発生源対策として、水田周辺の雑草管理が極めて重要です。特にイネ科雑草はカスミカメ類の増殖源となるため、出穂2~3週間前と出穂期頃の2回除草を行うことが推奨されています。両時期の除草ができない場合は、最低でも稲の出穂10日前までに除草を完了させます。
参考)斑点米カメムシ類の発生状況と防除対策 - 宮城県公式ウェブサ…
⚠️ 注意すべき除草のタイミング
参考)https://www.nichino.co.jp/products/materials/hantenmaikamemushi2024.pdf
畦畔等の雑草管理では、稲の出穂1ヶ月前とその2~3週間後に2回草刈りを行うことで、出穂期に畦畔の雑草に出穂させず、カメムシの発生を抑制できます。農道、法面、休耕田も含めた地域一斉の除草が効果的です。
参考)水稲に発生するカメムシを防除する農薬について
イネ科雑草の発生を長期的に抑えるには、高刈り(草刈りの高さ10cm程度)を継続することでイネ科以外の雑草の植被率を高める方法も有効です。また、グリホサートカリウム塩液剤などの非選択性茎葉処理除草剤を4月下旬頃に散布し、6月からは地際から草刈りを行う組み合わせも効果的です。
参考)イネ科雑草の発生を抑える畦畔の草刈り方法 - 新潟県ホームペ…
稲カメムシの薬剤防除は、他の斑点米カメムシ類とは異なる防除時期が必要です。イネカメムシの防除適期は以下の通りです:
参考)https://www.pref.gunma.jp/uploaded/attachment/671853.pdf
防除スケジュール
一般的なカスミカメ類の防除適期が穂揃期(7~8割出穂)以降であるのに対し、イネカメムシは出穂直後の吸汁を抑えることが特に重要なため、より早い時期の防除が必須です。
参考)栃木県/カメムシ防除作戦・ 基本的な防除対策技術
📊 効果的な薬剤の選択
参考)スタークル粒剤
大型のカメムシ類が多い場合は、穂揃期から3~7日後の乳熟初期とその7~10日後にずらして薬剤防除を行うと効果的です。また、例年斑点米被害が多い水田や登熟後期の発生が多い場合は、最終散布の7~10日後に追加散布を行います。
参考)なくそうカメムシ被害!水稲の高品質生産に向けて防除を徹底しま…
粒剤によるカメムシ防除は省力的で、隣接地に飛散する心配もなく、人畜・魚類・鳥類への毒性が低いという利点があります。
稲カメムシの効果的な防除には、発生状況の適切な把握が不可欠です。フェロモントラップを活用した発生予察は、害虫の個体密度が低い時期でも捕獲が期待でき、発生初期から害虫の存在を把握できます。
参考)http://jppa.or.jp/archive/pdf/63_12_47.pdf
フェロモントラップの特徴
参考)業務用:発生予察用フェロモン剤
カメムシ類は移動能力が高く、雑草地から水田に侵入するため、発生量の把握が難しい害虫です。そのため、合成性フェロモン剤を用いた調査法の開発が進められています。
参考)中日本農業研究センター:研究成果ダイジェスト
朝を中心に注意深く水田を観察し、初発を見逃さないことも重要です。すくい取り調査や払い落とし調査を定期的に行い、カメムシの密度を把握することで、適期防除につなげることができます。
参考)カメムシ対策完全ガイド:効果的な駆除と予防法|農林水産省・環…
🔍 意外と知られていない予察のポイント
イネカメムシの収穫後対策として、稲刈り後は速やかに耕うんすることが推奨されています。これは水田内に残存する虫を物理的に駆除し、次世代の発生源を断つ効果があります。また、防風林を適切な樹種で設置することで、カメムシの飛来を物理的に阻害できる可能性も指摘されています。
参考)イネカメムシ対策として収穫後は速やかに耕うんしましょう/行田…
農林水産省中国四国農政局:イネカメムシの生態、被害、および防除法について(PDF)
イネカメムシの詳細な生態と被害メカニズム、防除法がまとめられた資料です。本記事の「稲カメムシの発生時期と生態的特徴」セクションの参考資料として活用できます。
栃木県:カメムシ防除作戦・基本的な防除対策技術
出穂期の防除の重要性と具体的な防除タイミングが解説されています。「稲カメムシの薬剤防除と散布適期」セクションの補足情報として有用です。
シンジェンタジャパン:斑点米カメムシ発生を低減する、圃場周辺の雑草管理
畦畔等の発生源対策と除草の具体的なタイミングについて詳しく説明されています。「稲カメムシ対策の雑草管理と除草時期」の実践方法として参考になります。