いちじく芽かきは「いつやるか」で作業難易度が大きく変わります。早すぎると残す芽の強弱がまだ読めず、遅すぎると不要な芽に養分が流れて樹勢配分が崩れ、折れやすい徒長枝の整理にも時間がかかります。現場で扱いやすい合図が「芽が3~4葉になったら」で、これは一文字仕立ての成木管理でも明確に示されています。
参考:JA埼玉中央の成木管理では「芽が3~4葉になったら芽かき」とし、遅れて伸びる芽があるため「2~3回巡回して実施」としています。
どの圃場でもこの“巡回前提”が効きます。いちじくは同じ結果枝の基部付近から複数の新芽がまとまって出やすく、先に伸びた芽だけ見て一発で決めると、後から良い位置の芽が出たのに残し損ねることが起こります。そこで、1回目は「明らかに不要」を落として骨格を作り、2回目以降で間隔と向きを最終調整すると失敗が減ります。
実務での“見落としポイント”も押さえます。遅れて出た芽は小さく見えても、根際の水分条件が整うと一気に追い上げることがあります。長雨後や灌水後に急に伸びるケースもあるので、芽かきの巡回は天候の変わり目に合わせると合理的です。
芽かきは「何本にするか」以前に、「どの向きの芽を残すか」が重要です。一文字仕立ての管理指針では、残す芽は「横芽」や「やや下芽」が基本とされています。上向きの芽ばかり残すと、枝が立ち上がって込みやすく、誘引の手間が増えます。
ここでいう横芽・下芽のメリットは、単に樹形が整うだけではありません。枝が水平に近い角度で伸びるほど、主枝の背面側に日陰ができにくく、結果枝同士の葉が重なりにくくなります。結果として、園内の湿りが抜けやすくなり、作業者が通る列の視認性も上がります(芽かき・誘引・収穫のすべてが楽になります)。
さらに、芽かきは「冬の剪定」とセットで意味を持ちます。前年に伸ばした結果枝を切り戻して新梢(今年の結果枝)を出させる、という流れが前提にあるため、芽かきで“今年の結果枝候補”を選ぶ感覚を持つと判断が速くなります。JA埼玉中央では前年結果枝の切り戻し(2芽と3芽の間が基本)→5月の芽かき→6月の誘引という流れで整理されています。
「どれくらい残すか」の目安は、現場で迷いを減らすために必要です。一文字仕立ての成木では、片側40cmに1芽(結果枝間隔40cm程度)を基準にして芽かきし、その後の誘引で整列させる考え方が示されています。これは“枝数の上限”を決めるというより、「結果枝が伸びた先の葉面が重ならない配置」を先に確保するための基準です。
間隔を守るコツは、芽の段階で「最終的にどちらへ誘引するか」をイメージして残すことです。6月頃に結果枝が伸長したら水平パイプに誘引し、伸びに合わせて垂直に誘引する、という手順が一文字仕立てでは一般的です。芽かき時点で間隔が詰まっていると、誘引で無理な角度がつき、結果枝の付け根が裂けたり、支柱・パイプに擦れて傷が増えたりします。
また、芽かきは“1回で終わらせない”のが前提です。40cm間隔で一度決めても、後から遅れ芽が出て、しかも位置が良い場合があります。そのときは、先に残した芽の一部を入れ替える判断が必要です。巡回を2~3回行う、という指針はこのためにあります。
芽かきを「枝を減らす作業」だけで終えると、収量と品質が頭打ちになります。芽かきの次に来るのは枝の管理で、結果枝が伸びたら誘引し、さらに節数で摘芯する流れが示されています。一文字仕立ての成木管理では、結果枝が18~20節になったら先端部を摘芯する、と具体的です。
摘芯を芽かきとセットで考えると、現場の判断が一段ラクになります。芽かきで枝数を整理しても、摘芯が遅れて結果枝が伸びすぎると、樹全体の“上に偏った樹勢”が強まり、誘引作業も荒くなりがちです。逆に、芽かきで残す枝を適正化し、誘引で列を整え、18~20節で摘芯して成長点を止めると、葉面の配置が安定して作業動線も崩れません。
意外と見落とされがちなのが、「芽かきの時点で、将来の摘芯位置を想像する」ことです。結果枝1本が18~20節まで伸びる前提なら、枝同士の競合が起きないように、芽かきで早めに“居場所”を作っておく必要があります。ここが詰むと、後から摘芯しても混み合いは解消しにくく、結局は夏場の整理(徒長枝整理や不要枝除去)で二度手間になります。
検索上位の記事では「芽かきのやり方・時期・残す芽」が中心になりがちですが、農業現場で芽かきの成否を左右するのは、実は“芽が伸びる環境”です。特にいちじくは、根が酸欠に弱く湿害に弱い一方で、根が浅く蒸散量が大きく高温・乾燥にも弱い、という相反する弱点を同時に持ちます。これは成木管理の解説でも明確に書かれており、芽かきの判断にも直結します。
例えば、圃場が長雨で停滞水気味になった年は、樹の反応として新梢の伸びが鈍り、芽の強弱が読みにくくなります。そこで“いつもの感覚”で芽かきを強く入れすぎると、後から回復したときに結果枝が足りず、収量設計が崩れることがあります。逆に乾燥が強い年は、新芽が一気に伸びて徒長し、早めに「上向き・混み合い」を落としておかないと誘引が追いつきません。
このギャップを埋める方法は、芽かきの巡回時に「圃場の水分状態」と「葉のしおれ・張り」を同時に観察して、芽かきの強度を調整することです。成木管理でも、高温乾燥で果実肥大が遅れたり葉が萎れ気味なら適宜かん水、ほ場に水がたまったら速やかに排水、とされています。芽かきは“枝数調整”なので、水分ストレスで樹が出す芽の質が変わる以上、固定ルールで機械的にやるより、年の条件に合わせて微調整した方が事故が減ります。
さらに意外な小技として、芽かき後に「残した芽が風で揺れやすい配置」になっていないかも見ます。湿害年は根が弱りやすく、風で揺れる刺激で新梢の付け根が傷み、後の誘引時に裂けやすいことがあります。芽かきの段階で間隔(40cm目安)と向き(横芽・やや下芽)を守り、誘引の前から揺れを抑える配置にしておくと、結果枝の寿命が伸びやすくなります。
作業の“段取り”を最後に整理します(現場向けチェックリスト)。
参考:芽かき(3~4葉、40cm間隔、横芽・やや下芽、2~3回巡回)と、その後の誘引・摘芯(18~20節)の指針
https://www.ja-sc.or.jp/garden/ichijiku_yonenme/
参考:いちじくが「湿害に弱い」「高温・乾燥に弱い」こと、排水・潅水の注意点(芽の伸び方の年変動を読む根拠)
https://www.pref.nara.jp/16303.htm