ヒユ科と聞くとあまり馴染みがないかもしれませんが、実は私たちの食生活に深く関わっている野菜が多く含まれています。かつてはアカザ科に分類されていた野菜も、近年の研究でヒユ科に統合されました。ここでは、代表的なヒユ科の野菜とその特徴を紹介します。
食卓の定番から、スーパーフードとして注目されるものまで、その個性豊かなラインナップを見ていきましょう。
| 野菜の名前 | 主な特徴 | 豆知識・別名 |
|---|---|---|
| ほうれん草 | 栄養価の高さで知られる葉物野菜の代表格。おひたしや炒め物、スープなど幅広い料理に活用できる。 | 日本には江戸時代初期に中国から伝来。「菠薐草」と書く。 |
| ビーツ | 「食べる輸血」とも呼ばれるほど栄養豊富。鮮やかな赤色はベタシアニンという色素によるもの。サラダやスープ、スムージーなどに。 | 根だけでなく、葉も食べることができる。葉はほうれん草のように調理可能。 |
| スイスチャード | カラフルな茎が特徴的で、食卓を華やかにする。クセが少なく、サラダや炒め物にむいている。 | 和名は「フダンソウ(不断草)」。一年を通して収穫できることから名付けられた。 |
| アマランサス | 驚異的な栄養価から「スーパーグレイン(驚異の穀物)」と呼ばれる。種子を穀物のように炊いたり、若葉を野菜として食べたりする。 | 古代アステカ帝国ではトウモロコシと並ぶ重要な主食だった。グルテンフリー食材としても人気。 |
| オカヒジキ | シャキシャキとした食感が特徴で、見た目が海藻のヒジキに似ていることから名付けられた。おひたしや和え物が定番。 | 海岸の砂地に自生する野草だったが、江戸時代から野菜として栽培されるようになった。「陸の海藻」とも呼ばれる。 |
| ヒユナ(バイアム) | 熱帯アジア原産で、暑さに強い夏野菜。アクが少なく、炒め物やおひたしで手軽に食べられる。 | 「ジャワほうれん草」や「チャイニーズ・スピナッチ」などの別名を持つ。 |
ヒユ科の野菜は、私たちの健康維持に欠かせない多様な栄養素を豊富に含んでいます。特に、現代人に不足しがちなミネラルやビタミンが多く含まれているのが特徴です。ここでは、ヒユ科の野菜が持つ代表的な栄養素とその健康効果について詳しく見ていきましょう。💪
シュウ酸に関する注意点
ほうれん草など一部のヒユ科野菜には、「シュウ酸」というアクの成分が含まれています。シュウ酸を過剰に摂取すると、体内でカルシウムと結合して結石の原因になる可能性があります。 しかし、シュウ酸は水に溶けやすい性質があるため、調理前にさっと茹でこぼすことで、その量を大幅に減らすことができます。 また、カルシウムを多く含む食品(ごま、かつお節など)と一緒に食べることで、シュウ酸の体内への吸収を抑えることができます。
ヒユ科の野菜は、家庭菜園でも比較的育てやすい種類が多く、初心者からベテランまで楽しむことができます。種類によって栽培のポイントは異なりますが、基本的な育て方と、特に注意したいコツをいくつかご紹介します。自分で育てた新鮮な野菜は、味も格別ですよ!🌱
土づくりの基本
ほうれん草やビーツなど、ヒユ科の野菜の多くは酸性の土壌を嫌います。 植え付けの2週間ほど前に苦土石灰をまいて土の酸度を調整し、1週間前に堆肥や元肥をすき込んでよく耕しておきましょう。水はけと水もちの良い、ふかふかの土壌が理想です。
種まきのポイント
栽培管理と収穫
連作障害に注意!
ビーツやほうれん草は、同じ場所で続けて栽培すると「連作障害」が起きやすくなります。 病気や生育不良の原因となるため、一度栽培した場所では、3〜4年は他の科の野菜を育てるようにしましょう。 これは、同じ科の野菜を続けて植えない「輪作」の基本であり、健康な土壌を維持するために重要です。
ほうれん草の連作障害については、以下のJAグループのサイトで詳しく解説されています。
ほうれん草の後作には何がいい?相性の良い作物・悪い作物 | yuime
栄養満点のヒユ科野菜を、もっと美味しく、効率よく食卓に取り入れるための下処理のコツと、人気のレシピをご紹介します。ちょっとした工夫で、野菜本来の味を最大限に引き出すことができますよ。🍳
下処理のコツ
おすすめ人気レシピ
1. 捨てるところなし!ビーツの葉と茎のナムル
栄養豊富なビーツの葉は捨ててしまいがちですが、立派な食材です。さっと茹でてごま油と醤油、にんにくで和えるだけで、美味しい一品になります。 根とはまた違った、ほうれん草のような風味と食感が楽しめます。
2. 彩り鮮やか!スイスチャードとベーコンのバター醤油炒め
カラフルなスイスチャードの見た目を活かした、簡単でお弁当にもぴったりのレシピです。バターでベーコンとスイスチャードの茎を炒め、しんなりしたら葉の部分を加えてさっと炒め合わせ、仕上げに醤油を回しかければ完成。茎の食感と葉の柔らかさが同時に楽しめます。
3. プチプチ食感が楽しい!アマランサス入り炊き込みご飯
お米1合に対して大さじ1杯程度のアマランサスを一緒に炊くだけ。白米に不足しがちなミネラルや食物繊維を手軽に補給できます。プチプチとした食感がアクセントになり、いつものご飯がワンランクアップします。
私たちが普段口にしているヒユ科の野菜には、その美味しさや栄養価だけでなく、数千年にわたる壮大な歴史と、世界各地でのユニークな利用法が隠されています。その物語を知ることで、一皿の野菜がより味わい深く感じられるかもしれません。📜
神聖な穀物「アマランサス」
アマランサスの歴史は非常に古く、約7000年前の古代アステカ文明(現在のメキシコ)にまで遡ります。 当時、アマランサスはトウモロコシや豆と並ぶ三大主食の一つであり、人々のエネルギー源の80%を占めていたとさえ言われています。 しかし、その重要性は食料としてだけではありませんでした。アマランサスは神々への捧げものとして宗教儀式に不可欠な存在であり、神聖な穀物として扱われていたのです。 ところが16世紀、スペインがアステカを征服した際、キリスト教以外の宗教儀式を禁じる目的で、アマランサスの栽培を厳しく禁止しました。これにより、アマランサスは歴史の表舞台から一度姿を消すことになったのです。
砂糖の歴史を変えた「ビーツ」
ビーツの仲間である「テンサイ(甜菜)」、別名サトウダイコンは、世界の砂糖生産を大きく変えた歴史的な作物です。18世紀末、ナポレオンが大陸封鎖令を発令したことで、フランスはイギリス領の西インド諸島からサトウキビ由来の砂糖を輸入できなくなりました。そこで代替品として白羽の矢が立ったのが、寒冷地でも栽培可能なテンサイだったのです。ナポレオンの奨励によりテンサイからの製糖技術が確立され、これがヨーロッパ全土に広がりました。現在でも、世界の砂糖生産量の約3割はテンサイが占めています。私たちが普段使っている砂糖が、ビーツの親戚から作られていると考えると面白いですね。
ペルシャから世界へ「ほうれん草」
ほうれん草の原産地は、現在のイラン周辺、かつてのペルシャであると考えられています。そこからシルクロードを経て中国に伝わり、「菠薐(ホリン)」というペルシャの地名にちなんで「菠薐草(ホリンソウ)」と呼ばれるようになりました。日本へは江戸時代初期に中国から伝来しましたが、当時はアクが強く、あまり一般的には食べられていませんでした。現在のようなアクが少なく食べやすい「東洋種」が普及したのは、江戸時代後期になってからのことです。
以下の参考サイトでは、アマランサスの歴史について、より詳しく知ることができます。

アリサン G45 有機アマランサス粒 350g×2袋。アンデス地方でよく食べられるヒユ科の食物 お米に少し入れて炊いたり、スープに入れて