生活習慣病種類一覧と原因や予防と食事の診断ランキング

農作業で体を動かしているから大丈夫と思っていませんか。生活習慣病の種類一覧から、農業従事者が特に注意すべき原因や食事、意外なリスクまで徹底解説します。あなたの健康診断の結果は基準値内ですか?
記事の概要
📋
生活習慣病の全容

糖尿病や高血圧など、代表的な病気の種類と判定基準を網羅的に解説

🍙
食事と予防のポイント

塩分過多になりがちな食習慣の見直しと、具体的な改善策を提案

🚜
農業特有のリスク

「労働」と「運動」の違いや、農作業ならではの健康リスクを深掘り

生活習慣病の種類と一覧

生活習慣病の原因とリスク

 

生活習慣病は、かつて「成人病」と呼ばれていましたが、成人特有の病気ではなく、長年の生活習慣の積み重ねが発症や進行に深く関わっていることからその名が改められました 。遺伝的な要因もゼロではありませんが、それ以上に日々の環境や行動が大きなウェイトを占めています。

 

参考)主な生活習慣病

主な原因としては以下の要素が複雑に絡み合っています。

 

  • 不適切な食生活:塩分の過剰摂取、野菜不足、不規則な食事時間、過食によるカロリーオーバー。
  • 運動不足:慢性的な活動量の低下、筋肉量の減少、基礎代謝の低下。
  • 喫煙:血管の収縮、発がん性物質の摂取、肺機能の低下。
  • 過度な飲酒:肝臓への負担、中性脂肪の増加、血圧の上昇。
  • ストレス:自律神経の乱れ、ホルモンバランスの崩壊、過食や不眠の誘発。

これらの要因が重なることで、「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)」という状態に陥りやすくなります。メタボリックシンドロームは、内臓脂肪型肥満に加え、高血糖、高血圧、脂質異常のうち2つ以上を併せ持った状態を指します 。この状態を放置すると、ドミノ倒しのように次々と重篤な病気を引き起こす「メタボリックドミノ」という現象が発生し、最終的には透析が必要な腎不全や、失明、足の切断、あるいは突然死につながる心血管事故などを招くリスクが跳ね上がります。

 

参考)あなたは知ってる?生活習慣病ランキング - ららぽーと横浜ク…

特に農業従事者の場合、「自分は毎日体を動かしているから大丈夫だ」という過信が、最大のリスク要因になることがあります。農作業による身体活動と、健康維持のための有酸素運動は質が異なります。また、収穫期の極端な忙しさによるストレスや睡眠不足も、生活習慣病を加速させる隠れた原因となっています。

 

生活習慣病の食事と予防

生活習慣病の予防において、最も重要かつ即効性があるのが「食事」のコントロールです。特に日本の農業従事者において課題となりやすいのが「塩分摂取量」です。自家製の漬物や味噌汁、作業の合間のお茶請けなど、知らず知らずのうちに塩分を過剰に摂取しているケースが非常に多く見られます 。

 

参考)https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2005/058071/200501187B/200501187B0001.pdf

具体的な予防策としての食事ルールは以下の通りです。

 

  • 塩分を控える(減塩)
    • 高血圧予防の要です。男性は1日7.5g未満、女性は6.5g未満が厚生労働省の目標値ですが、高血圧の方は6.0g未満を目指しましょう。
    • 漬物は「小皿に少しだけ」にする、麺類の汁は飲み干さない、調味料は「かける」のではなく「つける」を徹底します。
  • 野菜を「先に」食べる(ベジファースト)
    • 食事の最初に食物繊維が豊富な野菜を食べることで、糖質の吸収を緩やかにし、食後の急激な血糖値上昇(血糖値スパイク)を抑えます。
    • 自身で栽培した新鮮な野菜を、マヨネーズやドレッシングをかけすぎずに食べることが推奨されます。
  • バランスの良い食事(主食・主菜・副菜)
    • 忙しい農繁期は、おにぎりやパンだけで済ませてしまいがちですが、これでは炭水化物(糖質)に偏ります。
    • タンパク質(肉、魚、大豆製品)を毎食取り入れ、筋肉量を維持することが代謝の維持につながります。
  • 夜遅い食事を避ける
    • 食べてすぐ寝ると、摂取したエネルギーが消費されず、そのまま脂肪として蓄積されます。就寝の3時間前には食事を終えるのが理想です。

    予防には「特定保健指導」や「定期健診」の活用も欠かせません。自覚症状がない段階で数値の異常に気づき、早期に食事内容を見直すことが、将来の重病を防ぐ唯一の手段です。

     

    厚生労働省:生活習慣病予防に関する詳細情報
    ※厚生労働省が提供する、生活習慣病の定義や予防に向けた国の取り組み、ガイドラインが網羅されています。

     

    生活習慣病の糖尿病と高血圧

    生活習慣病の中でも患者数が多く、国民病とも言われるのが「糖尿病」と「高血圧」です。これらは初期段階ではほとんど自覚症状がないため、「サイレントキラー(沈黙の殺し屋)」とも呼ばれています 。

     

    参考)4章 生活習慣病を学ぼう - 神奈川県ホームページ

    1. 糖尿病(2型糖尿病)
    血液中のブドウ糖(血糖)が増えすぎてしまう病気です。インスリンというホルモンの分泌量が減ったり、効きが悪くなったりすることで起こります。

     

    • 診断基準:空腹時血糖値126mg/dL以上、またはHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)が6.5%以上など。
    • 症状:初期は無症状。進行すると、喉の渇き、多尿、倦怠感、体重減少が現れます。
    • 合併症:しめじ(神経障害、網膜症、腎症)と呼ばれる三大合併症に加え、脳梗塞や心筋梗塞のリスクも数倍に高まります 。農業機械の操作中に低血糖や意識障害が起きると重大な事故につながるため、厳格な管理が必要です。

      参考)生活習慣病とは?

    2. 高血圧症
    血管にかかる圧力が慢性的に高い状態です。血管壁が常に張り詰めた状態になり、動脈硬化を進行させます。

     

    • 診断基準:診察室血圧で最高血圧140mmHg以上、または最低血圧90mmHg以上。家庭血圧ではそれぞれ135/85mmHg以上が基準です 。

      参考)生活習慣病の種類ごとの症状・原因と治療方法|函館クリニック

    • リスク:血管が破れやすくなる、または詰まりやすくなります。特に冬場の農作業など、寒暖差が激しい環境(ヒートショック)では血圧が乱高下しやすく危険です。
    • 農業従事者の傾向:研究データによると、農業従事者の男性は非従事者に比べて高血圧の割合が高い傾向にあります 。これは前述の塩分摂取や、重労働による身体的ストレスが関係していると考えられます。​

    3. 脂質異常症(高脂血症)
    血液中の脂質(コレステロールや中性脂肪)が異常値を示す状態です。

     

    • タイプ:LDL(悪玉)コレステロールが高い、HDL(善玉)コレステロールが低い、中性脂肪が高い、の3タイプがあります。
    • 影響:血液がドロドロになり、血管の内側にプラーク(塊)を作って血液の通り道を狭くします。

    これらの疾患は単独で発症するだけでなく、互いに悪影響を及ぼし合います。例えば、高血糖は血管を傷つけ、そこからコレステロールが入り込みやすくなり、動脈硬化を加速させ、さらに血圧が上がるという悪循環を生み出します。

     

    e-ヘルスネット:高血圧 | 厚生労働省
    ※高血圧のメカニズムから診断基準、生活習慣での改善ポイントまで、専門的な内容が分かりやすく解説されています。

     

    生活習慣病の三大疾病と死亡

    日本人の死因の上位を占めるのが、いわゆる「三大疾病」です。これらは生活習慣病が重症化した最終的な結果として現れることが多く、命を取り留めたとしても、麻痺などの重い後遺症が残り、以前のように農作業ができなくなる可能性が高い病気です 。

    1. がん(悪性新生物)
    日本人の死因第1位です。生活習慣病の枠組みでは、特に肺がん(喫煙)、大腸がん(食生活・肥満・飲酒)、肝臓がん(肝炎ウイルス・飲酒)などが生活習慣と強い関連があります。

     

    • 予防:禁煙、節酒、適正体重の維持、そして何より「がん検診」による早期発見が重要です。
    • 農業との関連:屋外作業による紫外線は皮膚がんのリスク因子ですが、適度な日光浴はビタミンDを生成し、一部のがんリスクを下げる可能性もあります。対策としては適切な紫外線対策が求められます。

    2. 心疾患(心臓病)
    死因第2位です。主に狭心症や心筋梗塞を指します。心臓に血液を送る冠動脈が動脈硬化で狭くなり、血栓が詰まることで心臓の筋肉が壊死します。

     

    • 症状:胸が締め付けられるような激しい痛み、冷や汗、呼吸困難。
    • 前兆:階段の上り下りや、重い肥料袋を持ち上げた時などに胸の圧迫感を感じる場合は要注意です。

    3. 脳血管疾患(脳卒中)
    脳の血管が詰まる「脳梗塞」、破れる「脳出血」、動脈瘤が破裂する「くも膜下出血」の総称です。

     

    • 症状:片方の手足の麻痺やしびれ、ろれつが回らない、言葉が出てこない、激しい頭痛。
    • FAST:Face(顔の麻痺)、Arm(腕の麻痺)、Speech(言葉の障害)、Time(発症時刻)を確認し、すぐに救急車を呼ぶ必要があります。発症から治療開始までの時間が予後を大きく左右します。

    これらの病気は「ある日突然」発症するように見えますが、実際には数年〜数十年かけて血管の中で静かに進行しています。健康診断の判定で「要再検査」「要精密検査」が出た場合、それは「まだ間に合う」というサインです。このサインを無視して放置することが、最も死亡リスクを高める行為と言えます。

     

    国立がん研究センター:科学的根拠に基づくがん予防
    ※日本人のためのがん予防法として、禁煙や食生活、身体活動などの推奨事項が科学的根拠に基づいてまとめられています。

     

    生活習慣病と農作業の意外なリスク

    多くの農業従事者が抱いている「毎日畑に出て汗を流して働いているから、運動不足とは無縁だし健康だ」という認識。実はこれこそが、農業従事者を生活習慣病の罠に陥れる最大の誤解かもしれません 。

     

    参考)https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_1791

    「労働」と「運動」は別物です
    農作業は確かに重労働ですが、その内容は「長時間の中腰姿勢」「重いものの運搬」「特定の筋肉の酷使」といった偏った負荷がかかる動きが中心です。これは心肺機能を高めたり、脂肪を効率よく燃焼させたりする「有酸素運動」とは質が異なります。むしろ、過酷な肉体労働は活性酸素を発生させ、血管や細胞の老化を早める一因にもなり得ます。

     

    実際に、農業従事者は一般の事務職等と比較して、心血管疾患(CVD)のリスクが2〜4倍高いというデータも存在します 。

    農作業特有の「隠れたリスク要因」一覧

    • 1. 収穫期の不規則な生活リズム
      • 収穫シーズンには早朝から日没後まで作業が続き、食事時間が不規則になりがちです。空腹時間が長引いた後のドカ食いは、急激な血糖値上昇を招きます。また、睡眠不足は食欲抑制ホルモンの働きを低下させ、肥満の原因になります。
    • 2. 休憩時の「甘い飲み物」と「塩辛いお茶請け」
      • 疲れた時の糖分補給として缶コーヒーやスポーツドリンクを多飲していませんか?これらは「ペットボトル症候群(急性の高血糖)」のリスクがあります。また、休憩時のお茶請けとして出される漬物は、塩分過多の大きな要因です。
    • 3. オフシーズンの活動量低下
      • 農繁期と農閑期の活動量の差が激しいのも特徴です。冬場に極端に動かなくなると、筋肉量が落ち、基礎代謝が下がった状態で春を迎えることになります。この急激な変化に体がついていけず、代謝異常を起こしやすくなります。
    • 4. 農薬散布や紫外線によるストレス
      • 長年の紫外線暴露や、防護服着用による夏の暑熱ストレスは、体内で炎症反応を引き起こし、動脈硬化のリスク因子となる可能性があります。

      対策:農作業を「健康的な運動」に変える工夫
      農作業を単なる労働で終わらせないためには、意識的な工夫が必要です。

       

      • 作業前にラジオ体操などで全身のストレッチを行い、血流を良くする。
      • 作業中はこまめに水分補給をする(糖分の多いジュースではなく、水や麦茶を選ぶ)。
      • 機械作業が続く日は、あえて少し歩く時間を設ける。
      • 農閑期こそ、ウォーキングや筋力トレーニングを行い、体力を維持する。

      「自分は健康だ」と過信せず、職業特有のリスクを理解し、毎年の特定健診(メタボ健診)を必ず受診すること。これが、長く現役で農業を続けるための最大の秘訣です。

       

       


      週刊ポストGOLD 名医13人が教える「生活習慣病」の治し方と防ぎ方 (ポスト・サピオムック)