エトフメセートを「雑草が生えてから撒けば効く」と思っているあなた、土壌処理を怠ると防除効果が半減します。
エトフメセートは、ベンゾフラン環を持つ化学構造の除草剤です。 非ホルモン型の浸透移行性除草剤で、雑草の光合成と呼吸活性を同時に低下させることで細胞分裂を阻害し、殺草効果を発揮します。 分子式はC₁₃H₁₈O₅S、分子量は286.3で、白色固体・穏やかな芳香臭を持ちます。mhlw+2
この薬剤の大きな特徴は、土壌からの吸収(土壌処理効果)と、葉面からの接触・移行(茎葉処理効果)の両方を持つ点です。 一年生イネ科雑草と広葉雑草の両方に効果があり、てんさい畑での混合雑草対策に向いています。
つまり「1剤で2役」というのが基本です。
参考)https://www.acis.famic.go.jp/syouroku/ethofumesate/ethofumesate_01.pdf
水溶解度は25℃で50 mg/Lほど。 土壌中での半減期は圃場条件で31日程度とされており、散布後も一定期間は土壌中に残留します。
残留性は中程度ということですね。
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日本国内でエトフメセートが農薬として正式に登録されている適用作物は、現時点ではてんさいです。 製剤は10%乳剤が登録申請されており、使用量は10aあたり450mLが基準となっています。
参考)https://www.env.go.jp/content/900540808.pdf
登録外の作物に農薬を使用すると、農薬取締法違反になります。 罰則は「3年以下の懲役または100万円以下の罰金」(農薬取締法第31条)で、農家自身が刑事罰を受けるリスクがあります。
これは严しいところですね。
「少量なら大丈夫だろう」という考えは通用しません。適用作物外への使用が発覚した場合、出荷停止や取引停止処分につながった事例も報告されています。
登録ラベルの確認が原則です。
農林水産省:除草剤の販売・使用について(農薬登録の見分け方・違反使用の罰則を詳しく解説)
散布は「雑草茎葉散布」が基本で、雑草が発生した後の茎葉へ直接かける方法が主体です。 総使用回数は2回以内と定められており、これを超えると農薬取締法違反になります。
使用時期を間違えるとどうなるか。雑草が大きく育った後に散布しても効果が落ちます。 イネ科雑草では「3〜8葉期」が目安で、葉が展開し切る前に処理するのが効果的です。また、土壌が乾燥した状態では効果が劣るため、散布時の水量を多めにするのが推奨されています。
参考)https://ja-imakane.or.jp/manager/wp-content/uploads/2025/04/bc099be5ca5877f0559335e346c2f14f.pdf
展着剤の使用も重要なポイントです。 非イオン系展着剤を加えることで薬剤が葉面に均一に付着し、除草効果が安定します。
これは使えそうです。
薬液調製後は速やかに散布し、時間をおいて成分が変質するリスクを防ぎましょう。
エトフメセートは土壌中での分解がやや緩慢で、一定条件下では半減期103日以上になることが確認されています。 圃場での通常条件だと31日程度ですが、低温・嫌気条件では分解が大幅に遅れます。
参考)https://www.fsc.go.jp/fsciis/attachedFile/download?retrievalId=kai20110204no1amp;fileId=120
半減期103日というのをイメージすると、「春に撒いた農薬が夏を超えても土の中に残っている」状態です。
これは意外ですね。
土壌吸着係数(KFadsOC)は84〜410と報告されており、移動性は中程度です。 つまり、水と一緒に地下へ浸透するリスクがゼロではありません。
環境省の評価では、水濁PEC(水質汚濁予測濃度)はTier1で0.000015 mg/Lと算出され、登録保留基準値0.79 mg/Lを大幅に下回ることが確認されています。 適切な使用量・回数を守れば問題ありません。ただし、河川に近い圃場や傾斜地での使用では地表流出に注意が必要です。
農薬散布記録の保管と、周辺水路への飛散防止措置は、JAS認証やGAP認証取得農家では特に厳しくチェックされる項目のひとつです。散布日・天候・使用量を記録に残しておくのが条件です。
環境省:エトフメセートの水質汚濁に係る農薬登録保留基準の設定資料(水濁PECの算出データと残留性の詳細)
食品安全委員会は、エトフメセートのADI(許容一日摂取量)を0.3 mg/kg体重/日と設定しています。 この値は、ウサギを用いた発生毒性試験での無毒性量30 mg/kg体重/日を安全係数100で割った数値です。安全係数100倍という余裕があるということですね。
農薬散布時の吸入リスクについても評価が行われています。エトフメセートとフェンメディファムの推定無毒性量は、農薬散布時の推定吸入量よりも十分大きいとされており、急性吸入毒性に係る特別な注意事項の記載は不要とされています。 つまり、通常の作業手順を守れば急性吸入リスクは低いということです。
参考)https://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_sinsa/attach/pdf/index-15.pdf
ただし、「安全性が確認されている=保護具なしでOK」ではありません。農薬散布時は農薬登録ラベルに記載された保護具(マスク・手袋・長袖)を必ず着用してください。
これが原則です。
万一皮膚に付着した場合はすぐに水で洗い流し、異常を感じたら医療機関を受診してください。
食品への残留については、農産物残留試験でエトフメセートおよび代謝物M(M1・M2・M3)が分析対象となっており、てんさいでは定量限界未満という結果が報告されています。
残留基準値の範囲内に収まっています。
食品安全委員会:エトフメセートの食品健康影響評価(ADI設定の根拠と毒性試験結果の詳細)
あまり知られていないのが、「後作物(ローテーションで次に作る作物)への残留影響」です。エトフメセートは土壌中にある程度残留することから、次の作付け作物への移行リスクが評価対象になっています。 後作物残留試験では、後作物からの検出は定量限界未満という結果が出ていますが、圃場条件によって残留量は変動します。
具体的にリスクが高まる条件は次の通りです。
pH5という条件での加水分解半減期が2,050日とは、約5.6年です。日本の農地では、pH5〜6の酸性土壌が相当数あります。砂質・酸性圃場では後作物への影響を慎重に考える必要があります。
これだけ覚えておけばOKです。
pH改善のために石灰資材を投入して土壌のpHを6〜6.5の範囲に保つことは、エトフメセートの残留リスク低減にも効果的です。土壌pH管理は除草剤の効果・安全性の両面で農業経営を守る大事な視点といえます。
土壌診断の実施が推奨です。
食品安全委員会農薬専門調査会:エトフメセートの土壌残留・後作物残留試験データ(詳細な分解条件と残留期間の考察)