青虫に効く農薬を「安全性」「収穫前日数」「天敵影響」まで含めて考えるなら、まずBT剤(Bacillus thuringiensis 由来)を軸にすると整理しやすいです。BT剤は、作物に付着した有効成分を幼虫が摂食し、体内で消化されて効くタイプなので、“食べさせる設計”が前提になります。BT剤は青虫のようなチョウ目幼虫に幅広く使われており、作物別・病害虫別に複数剤が整理されている一覧も公開されています。
例えば、青虫(アオムシ)に対してBT剤として「ゼンターリ顆粒水和剤」「デルフィン顆粒水和剤」「エスマルクDF」などが挙げられています。実際に、BT剤一覧では「アオムシ」に対して複数のBT剤が列挙されており、現場での候補出しに役立ちます。ここで重要なのは「青虫に効く農薬=どれを買うか」だけで終わらず、登録の作物・適用害虫・使用回数・使用時期(発生初期など)まで、ラベル(登録内容)で必ず最終確認することです。
また、BT剤は同じBTでも“菌株・亜種”の違いがあり、効き方の差や抵抗性との関係が議論されています。たとえば、ゼンターリ顆粒水和剤はBt菌亜種aizawai由来で、Bt菌の生芽胞と「σ-トキシン(結晶性タンパク毒素)」を有効成分として持ち、害虫が摂食→体内で消化されることで殺虫効果が発現すると説明されています。つまり「付着させる」だけでなく「食べさせる」工程を成立させることが、青虫に効く農薬としてBT剤を活かすコツになります。
参考:青虫(アオムシ)に使えるBT剤の候補を作物別・害虫別に一覧できる(薬剤名の洗い出しに便利)
https://www.greenjapan.co.jp/noyak_btlist.htm
参考:BT剤(ゼンターリ顆粒水和剤)の成分・効き方(摂食→体内消化で効く)や、コナガ等での特長(抵抗性の話題含む)がまとまっている
https://www.arystalifescience.jp/guide/t_84h.php
青虫に効く農薬を現場で「効いた/効かない」に分ける最大要因は、散布タイミングと付着の精度です。BT剤は特に、発生初期に散布する運用が前提として示されており、適用内容の例でも「発生初期 ただし、収穫7日前まで」など、時期が明確に書かれています。青虫が小さいうちに当てられるほど、葉の食害が小さく、薬剤の必要回数も減りやすいです。
散布のコツは、技術論に見えて、実は“青虫の居場所”の理解が中心です。青虫は葉表だけでなく葉裏や株の内側にも入り、結球野菜では外葉から内側へ移動して見えにくくなります。ここでよくある失敗が「畝の上から上向きに撒いているつもりでも、実際は葉裏に当たっていない」ことです。BT剤は接触毒ではなく摂食で効くため、食べる場所に薬液が残らなければ効きがブレます。
運用面で意識したいポイントを、現場で再現しやすい形に落とすと次の通りです。
このあたりは「農薬の強さ」ではなく「当て方の設計」です。青虫に効く農薬を選び直す前に、まず散布の再現性(誰が撒いても同じ結果が出るか)を疑うと、改善が早いです。
青虫に効く農薬を長期で効かせ続けるには、抵抗性(感受性低下)を避ける考え方が欠かせません。チョウ目害虫では薬剤抵抗性が問題になりやすく、BT剤についても地域によっては感受性低下が報告されている、といった指摘があります。ここで大事なのは「同じ薬を続けると、そのうち効かなくなる」という雑な理解ではなく、“同一系統を連用しない”という具体ルールに落とすことです。
意外と見落とされるのが、BT剤同士でも“中身が同じとは限らない”点です。ゼンターリ顆粒水和剤の解説では、Bt菌亜種aizawaiと、他の多くのBT剤で使われる亜種kurstakiでは産生するσ-トキシンの種類が異なることが述べられ、コナガのような害虫での効き方の違いの一因として議論されています。つまり「BT剤だから全部同じ」ではなく、「BT剤の中でも由来・特性を意識して回す」発想が、抵抗性回避の現実的な一手になります。
現場での運用としては、次のように“記録できる形”にするのがコツです。
「青虫に効く農薬がない」のではなく、「効く仕組みを壊す運用」をしていることもあります。抵抗性を疑う前に、まずは連用・過剰回数・タイミングのズレがないかを点検し、その上でローテーションを組み直すのが現実的です。
青虫対策は農薬だけで完結させず、「防除適期を当てる」ほど薬剤が少なくて済み、結果として効きも安定します。そのための代表的な道具がフェロモン剤(フェロモントラップ)です。チョウ目害虫の多くは、雌成虫が性フェロモンを放出し、雄成虫がそれを手がかりに交尾に至る仕組みを持つため、その仕組みを利用して誘引・捕獲するのが誘引タイプのフェロモントラップです。
フェロモントラップの価値は「大量に捕る」だけではなく、「今、飛んでいる(発生している)を数字で知る」ことにあります。一般的な設置方法として、粘着板を設置したトラップ中央にフェロモン剤を置き、一定面積に1台の割合で設置し、効果が薄れるため所定間隔でフェロモン剤を交換する、とされています。つまり、発生の山を掴めれば、ふ化幼虫(小さい幼虫)が出るタイミングを読みやすくなり、「発生初期に散布」というBT剤の強みを最大化できます。
さらに、フェロモントラップ資料では「殺虫剤は、ふ化幼虫をめがけて散布するのが最も効果的であり、防除適期はふ化幼虫の発生盛期から数日」といった趣旨が述べられています。ここが意外と“効かない圃場”の改善ポイントで、薬剤銘柄の変更より、散布日を数日ずらすだけで結果が反転することもあります。青虫に効く農薬を探しているのに成果が出ない場合、まず「狙っているのが若齢幼虫か」をトラップや見回りで可視化すると、手戻りが減ります。
参考:性フェロモンの仕組み、誘引タイプの設置・交換など、実務の注意点がまとまっている
https://www.jacom.or.jp/nouyaku/rensai/2019/08/190823-38933.php
参考:フェロモントラップを使った防除要否判定・防除適期(ふ化幼虫を狙う等)の考え方が書かれている
http://www.ipm-bio.jp/topic/pheromone_trap_16.pdf
検索上位でよく見る「おすすめ農薬○選」だけでは、青虫に効く農薬の“現場の詰まり”は解消しません。そこで独自視点として、農薬名ではなく「失敗モード」から逆算する確認表を入れます。これは現場の引き継ぎに強く、担当者が変わっても再現性を上げやすい方法です。
以下は、青虫が減らないときに、まず疑う順番の確認表です(意味のない精神論ではなく、チェックすれば改善点が見つかる形にしています)。
【青虫が減らない:確認表】
| 症状 | よくある原因 | 次の一手(具体) |
|---|---|---|
| 散布したのに食害が増える | 散布時点で幼虫が進齢、芯に潜っている | 若齢が出る前の監視を強化(見回り頻度を上げる、フェロモントラップ併用) |
| 葉表は濡れたが虫が残る | 葉裏・株元への付着不足 | ノズル角度と歩行速度を見直し、葉裏の濡れを目視確認してから面積を進める |
| 一部だけ効く | 散布ムラ、風でドリフト | 風速が出る時間帯を避け、1回で終わらせず“確認日”を前提に計画する |
| 最初は効いたが次から効かない | 同一系統の連用、抵抗性の疑い | ローテーション設計を作り直す(BT剤内の違いも意識) |
| 薬害が怖くて薄めすぎる | 希釈・散布量の自己判断 | ラベルの範囲内で運用し、圃場の一部で事前テスト(安全確認) |
この表のポイントは、農薬を変える前に“原因を言語化”することです。青虫に効く農薬は存在しても、散布の前提(若齢に当てる、食べさせる、付着させる、連用しない)が崩れると、どの薬でも期待値が下がります。逆に言えば、ここを整えるだけで「同じ薬なのに効きが戻る」ケースもあります。
最後に、青虫対策は作物・地域・作型で最適解が変わるため、必ず登録内容(適用作物・適用害虫・使用回数・収穫前日数・希釈倍数・注意事項)を確認し、記録(いつ・何を・どの条件で撒いたか)を残してください。記録が残れば、来年の自分や後任が同じ失敗を繰り返さず、青虫に効く農薬を“効かせる運用”が圃場に定着します。