JGAP認証農薬の管理と基準や記録の適合リスクとは

JGAP認証における農薬管理は、単なる法令遵守を超えた厳しい基準と記録が求められます。保管から使用、廃棄に至るまでの具体的な手順と、審査で重視される意外なポイントとは?

JGAP認証と農薬

JGAP認証の農薬管理3つの要点
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厳格な保管管理

施錠管理や毒物・劇物の区分け、在庫の「先入れ先出し」徹底など、物理的な安全確保が必須です。

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追跡可能な記録

「いつ、誰が、何を」だけでなく、希釈倍率や収穫前日数の照合など、適合性を証明する詳細な記録が求められます。

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環境リスク対策

ドリフト(飛散)防止に加え、散布器具の洗浄排水の処理場所まで、環境への配慮が審査対象となります。

JGAP(Japan Good Agricultural Practice)認証を取得する上で、農薬の取り扱いは最も審査が厳しく、かつ不適合が出やすい項目の一つです。これは農薬取締法という法律がベースにあることはもちろんですが、JGAPが求めるのは「法律を守っていること」だけでなく、「法律を守っていることを客観的に証明できる仕組み」が構築されているかどうかだからです。多くの農家が日常的に農薬を使用していますが、JGAPの視点で見直すと、慣習で行っていた作業の中に多くの「リスク」が潜んでいることに気づかされます。例えば、単に農薬庫に鍵をかけていれば良いというわけではなく、その鍵を誰が管理し、万が一紛失した際にどのような対応をとるかまで決められている必要があります。また、農薬の散布記録においても、単に撒いた事実を記録するだけでなく、その農薬が適用作物に合致しているか、収穫前日数が守られているかを「散布前」に誰がどうやって確認したかというプロセスが重要視されます。


この記事では、JGAP認証の審査で求められる農薬管理の基準について、実際の現場での運用レベルまで落とし込んで解説します。マニュアルには書かれていないような細かい運用ルールや、審査員が現場でチェックする視点、そして多くの農場で見落とされがちな洗浄排水の問題など、実践的なノウハウを網羅しました。これから認証取得を目指す方はもちろん、既に取得している方も、更新審査に向けた自己点検の参考にしてください。特に、記録の修正方法や在庫の棚卸し頻度など、細かいけれど重要な「適合」のポイントを深掘りしていきます。


日本GAP協会:JGAPの概要と基準書
日本GAP協会の公式サイトでは、最新の基準書や管理点適合基準が公開されており、農薬管理に関する正確な要求事項を確認する際の一次情報として必須です。


JGAP認証農薬の基準と適正な管理の手順


JGAP認証において農薬管理がなぜこれほどまでに重視されるのか、その根本的な理由は「食品安全」と「環境保全」、そして「労働安全」の3つの柱を同時に満たす必要があるからです。一般的な農業生産工程管理(GAP)の中でも、農薬は使い方を誤れば消費者の健康を害するだけでなく、散布する生産者自身の健康被害や、周辺環境への汚染につながる強力な資材です。そのため、JGAPの基準では、農薬取締法よりもさらに踏み込んだ管理手順が求められます。


まず、管理の起点となるのが「農薬管理責任者」の設置です。JGAP認証農場では、農薬に関する知識を持った責任者を明確に指名しなければなりません。この責任者は、単に農薬を買ってくる人ではなく、その農場で使用する農薬が最新の登録情報に適合しているかを確認し、作業者に対して適切な指導を行う権限を持つ必要があります。特に重要なのが、登録内容の変更への対応です。農薬の適用作物は頻繁に変更されることがあり、去年まで使えていた農薬が今年は使えない、あるいは使用回数が変更になっているというケースが多々あります。管理責任者は、こうした情報を常に最新の状態にアップデートし、現場の作業者に周知徹底する役割を担います。


次に、適正な管理の実務として欠かせないのが「在庫管理表」の運用です。JGAPでは「現在、農場にどの農薬がどれだけあるか」をいつでも把握できる状態が求められます。これは、盗難や紛失があった際にすぐに気づくためであり、また過剰在庫による期限切れ農薬の発生を防ぐためでもあります。具体的には、入庫した日付と量、出庫(使用)した日付と量を記録し、定期的に実際の在庫数と帳簿上の在庫数が合致しているかを確認する「棚卸し」の作業が必要です。多くの農場では、忙しさにかまけてこの棚卸しが年に一回程度になりがちですが、JGAPの推奨としては、農薬散布シーズン中は月一回など、頻度を高めて管理することが望ましいとされています。在庫のズレは、記録漏れや不正持ち出しの兆候であり、審査でも厳しく見られるポイントです。


さらに、意外と見落とされがちなのが「使用期限切れ農薬」の管理手順です。どんなに管理を徹底していても、天候不順などで散布できず、使用期限が切れてしまうことはあります。JGAPの基準では、期限切れ農薬が使用可能な農薬と混在している状態を「不適合」とみなします。期限が切れた農薬は、明確に「使用不可」「廃棄待ち」といった表示を行い、使用可能な農薬とは物理的に場所を分けて保管するか、専用のボックスに隔離するなどの措置が必要です。これにより、作業者が誤って期限切れの農薬を持ち出し、散布してしまうリスクを物理的に遮断するのです。このように、JGAPの管理基準は、人の注意深さに頼るのではなく、ミスが起きないような「仕組み」を作ることこそが本質と言えます。


農林水産省:農薬コーナー
農林水産省の農薬コーナーでは、農薬取締法に基づく最新の規制情報や、登録変更に関する通知が掲載されており、管理責任者がチェックすべき重要情報源です。


JGAP認証農薬の保管とリスクの回避策

農薬の保管場所、いわゆる農薬庫の管理は、JGAP審査における物理的なチェックポイントの最重要項目です。ここでは「リスクの回避」という観点から、建物や設備に求められる具体的な要件と運用ルールについて解説します。まず大前提となるのが、「施錠管理」の徹底です。農薬庫は、関係者以外が容易に立ち入れないよう、常に施錠されていなければなりません。審査では、鍵の保管場所や管理者が明確かどうかも問われます。「トラクターの鍵と一緒に無造作に壁にかけてある」といった状態は、誰でも持ち出せるため不適合となる可能性が高いです。キーボックスを使用し、そのキーボックスの暗証番号を知っているのを特定の担当者に限定するなど、二重の管理体制が推奨されます。


次に、保管庫内部の環境とリスク対策です。農薬は温度変化や直射日光によって変質する恐れがあるため、保管庫は直射日光が当たらず、通気性が良く、高温にならない場所である必要があります。また、万が一の地震や事故に備えた対策も必須です。具体的には、液剤のボトルが落下して破損するのを防ぐための「落下防止柵」の設置や、粉剤と液剤を分けるといった工夫が求められます。さらに重要なのが、農薬が流出した際の「拡散防止措置」です。もし保管庫内で液剤がこぼれた場合、それが保管庫の外に流れ出し、土壌や地下水を汚染することを防ぐため、床面はコンクリートなどの不浸透性材料で仕上げられている必要があります。また、万が一こぼれた際に回収するための砂や吸着マット、専用の掃除用具(ほうき、ちりとり、バケツなど)を「スピルキット」として保管庫のすぐ近くに常備しておくことも、JGAPの適合基準に含まれています。


そして、最もリスクが高いのが「毒物・劇物」の扱いです。これらは一般の農薬とは明確に区分して保管し、保管庫の扉や棚に「医薬用外毒物」「医薬用外劇物」という文字を、赤地に白文字(毒物)や白地に赤文字(劇物)で表示する義務があります。JGAPでは、これらを他の農薬と混ぜて置くことを固く禁じています。理想的には、毒劇物専用の鍵付きロッカーを農薬庫内に設置し、二重ロックの状態にすることです。これにより、作業者が普通の殺虫剤と間違えて毒物を持ち出すリスクを限りなくゼロに近づけます。


また、保管庫には「関係者以外立入禁止」の表示や、緊急時の連絡先リストの掲示も必要です。これらは、作業者が倒れたり、火災が発生したりした際に、消防や救急隊が「ここに危険物(農薬)がある」と認識するためにも重要です。さらに、農薬の空容器の保管についてもルールがあります。使用済みの空容器は、産業廃棄物として処理されるまで適切に保管されなければなりませんが、これらが風で飛ばされて農場外へ散出したり、雨水が入って残留成分が溢れ出したりしないよう、ネットをかけたり屋根のある場所に置いたりする対策が必要です。空容器の放置は、環境汚染リスクだけでなく、農場の景観を損ね、周辺住民からの信頼を失う要因にもなるため、JGAPでは厳しくチェックされます。


農薬工業会:農薬の安全な使用法
農薬工業会のサイトでは、農薬の保管管理や毒劇物の取り扱い表示、空容器の処理方法に関するガイドラインがイラスト付きで分かりやすく解説されています。


JGAP認証農薬の使用記録と適合の証明

JGAP認証において「記録」は、農産物の安全性を担保する唯一の証拠資料です。どんなに正しく農薬を使用していても、その記録が不備であれば、その農産物は「JGAP認証農産物」として出荷することはできません。ここで求められる記録は、いわゆる5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)が完全に網羅されている必要があります。具体的には、散布日、場所(圃場名)、作業者名、対象作物、農薬名、使用量、希釈倍率、使用方法、そして散布の理由(対象病害虫)です。


特に審査で細かく見られるのが「適合性の検証」のプロセスです。多くの農家は散布後に記録をつけますが、JGAPが推奨するのは「散布前の確認」とその記録です。散布しようとしている農薬が、その作物に登録されているか、使用時期(収穫前日数)は守られているか、使用回数は上限を超えていないかを、散布作業を始める前に確認し、チェックマークを入れるなどの運用が理想的です。これは、散布してしまってから「実は登録が切れていた」「収穫まであと3日しかないのに7日前までの農薬を撒いてしまった」という取り返しのつかないミスを防ぐためです。この事前確認のプロセスが記録として残っていると、審査員に対する心証も非常に良くなり、管理レベルの高さを示すことができます。


記録の書き方についても注意が必要です。手書きの記録の場合、書き損じた時の修正方法には明確なルールがあります。修正液や修正テープの使用は認められません。なぜなら、修正前の数値が見えなくなり、データの改ざんを疑われる余地が生まれるからです。間違えた場合は、二重線を引いて訂正印を押し、その近くに正しい数値を記入するのが正しい作法です。デジタルツールやアプリを使って記録する場合も、いつ誰がデータを入力・修正したかという履歴(ログ)が残るシステムであることが望ましいです。Excelなどで管理する場合も、安易に過去のデータを書き換えられないような運用ルールを定めておく必要があります。


さらに、トレーサビリティ(追跡可能性)の観点から、収穫記録と農薬使用記録の紐付けも重要です。出荷されたあるロットの野菜について、「どの圃場で栽培され、いつどのような農薬が散布されたか」が即座に検索できる状態でなければなりません。例えば、消費者から「異臭がする」といったクレームがあった場合、直ちにその商品の栽培履歴を遡り、最後に散布した農薬の種類や時期を確認できる体制が必要です。また、JGAPでは自分の農場だけでなく、隣接する圃場からのドリフト(飛散)の可能性についても記録することが求められます。散布当日の天候、特に「風向き」と「風の強さ」を記録することは、ドリフト防止に配慮して作業を行ったという重要な証拠になります。「風が強かったが散布した」という記録ではなく、「風が弱まった夕方に散布した」あるいは「風向きを考慮して隣接圃場側は散布を控えた」といった、判断のプロセスが見える記録がベストです。


JGAP認証農薬の洗浄排水と環境への配慮

JGAP認証の審査項目の中で、多くの生産者が対策に頭を悩ませる、あるいは見落としがちなのが、農薬散布器具の「洗浄」と、そこから出る「排水」の処理問題です。これは環境保全の観点から非常に重視されるポイントですが、一般的な農業指導ではあまり深く触れられない「独自視点」の管理領域でもあります。農薬散布が終わった後、動噴やタンク、ホース、ノズルなどを洗浄しますが、その「洗い水」をどこに流しているかが問われます。側溝や水路、あるいはそのまま地面に垂れ流している場合、それは河川汚染や土壌汚染を引き起こすリスクとして、重大な不適合となる可能性があります。


理想的な処理方法は、まず「現場での使い切り」です。散布計画を綿密に立て、タンクに残る薬液を最小限にし、最後にタンク内を少量の水で共洗いしたその水も、防除対象の圃場内に撒き切ってしまう(もちろん登録基準の範囲内で)のが最も環境負荷が低い方法です。しかし、どうしても残ってしまった洗浄水を処理する場合、JGAPでは「環境に影響を与えない方法」を求めています。具体的には、農薬分解機能を持つ微生物を利用した「バイオベッド」や「蒸発処理装置」の導入が先進的な事例として挙げられますが、これにはコストがかかります。現実的な対応策としては、防水シートを敷いた上に土や吸着材を設置した簡易的な処理場を設け、そこで洗浄水を蒸発・分解させる、あるいは産業廃棄物処理業者に委託して回収してもらうといった方法があります。


また、洗浄を行う「場所」も指定する必要があります。井戸や水源の近くで洗浄を行うことは、水源汚染のリスクがあるため厳禁です。農場内の特定の場所を「洗浄エリア」として定め、そこ以外では洗浄を行わないというルールを徹底し、その場所が地下水や周辺の農地へ流出しないような構造になっていることを証明しなければなりません。これは、自分の農場の作物だけでなく、地域の水環境全体を守るというJGAPの理念を反映しています。


さらに、環境配慮という点では「ドリフト対策」も欠かせません。これには物理的な対策とコミュニケーションによる対策の両輪が必要です。物理的な対策としては、ドリフト低減ノズルの使用や、隣接圃場との間に遮蔽ネット(防風ネット)を設置すること、あるいは緩衝地帯(バッファーゾーン)として境界付近の作付けを行わないエリアを設けることなどが挙げられます。一方、コミュニケーションによる対策とは、近隣の生産者や住民と散布計画を共有することです。特に、隣接する畑で収穫間際の作物が栽培されている場合や、有機JAS認定の圃場がある場合、こちらの農薬が飛散すれば相手に甚大な経済的損失を与えることになります。JGAPでは、こうした周辺状況を把握し、リスクを評価し、必要な対策を講じていることを記録として残すことを求めています。自分たちだけが良ければいいのではなく、地域社会と共生しながら持続可能な農業を行う姿勢こそが、認証取得の鍵となるのです。


環境省:農薬による水質汚濁の防止
環境省の情報サイトでは、農薬の環境への影響評価や、水質汚濁を防ぐための技術的な指針、ドリフト対策に関する詳細なマニュアルが提供されており、環境対策の根拠資料として役立ちます。




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