タデ科一覧と特徴や栽培利用

タデ科植物の種類や形態的特徴、農業における利用法と雑草防除について詳しく解説します。ソバや藍染めの原料としての栽培品種から、畑で問題になる雑草種まで、実用的な知識をお探しですか?

タデ科一覧と特徴

この記事でわかること
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タデ科の代表種

日本で見られる主な属と種類を網羅的に紹介

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形態的特徴

葉鞘や花被など識別ポイントを詳しく解説

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農業での活用

栽培品種から雑草対策まで実践的な情報

タデ科の主な属と代表種

 

タデ科は北半球の温帯を中心に約55属1100種が分布し、日本には約10属60種が自生しています。代表的な属として、約200種を含むギシギシ属Rumex、約100種のイヌタデ属Persicaria、約250種のエリオゴヌム属Eriogonum、約130種のハマベブドウ属Coccolobaがあります。日本で見られる主な属には、イヌタデ属、ギシギシ属、ミチヤナギ属Polygonum、ソバ属Fagopyrum、ツルタデ属Fallopia、イタドリ属Reynoutria、ミズヒキ属Antenoron、ハルトラノオ属Bistorta、オンタデ属Pleuropteropyrum、マルバギシギシ属Oxyriaなどがあります。

 

参考)タデ科 - Wikipedia

各属の代表種としては、イヌタデ属にはイヌタデ、ヤナギタデ、サクラタデ、ミゾソバ、ママコノシリヌグイ、ハナタデなどが含まれます。ギシギシ属にはスイバ、ギシギシ、アレチギシギシ、ナガバギシギシなどがあり、特にスイバは雌雄異株で根生葉がやじり形をしています。ソバ属のソバは重要な作物として広く栽培され、イタドリ属のイタドリは太い地下茎を伸ばして繁殖する多年生草本です。

 

参考)https://rumex.web.fc2.com/family/tade/tade.html

国立科学博物館のタデ科データベース - 種名一覧と学名の確認に有用

タデ科植物の形態的特徴と識別法

タデ科植物の最も特徴的な形質は、節のところに托葉が円筒形の鞘をなしてつく「葉鞘」です。この葉鞘の上部が広がって葉の形をした托葉を持つものもあり、サデクサやイシミカワなどで顕著に見られます。葉は単葉で互生し、全縁のものが基本ですが、つる性のものはやじり形やハート形になり、イシミカワはほぼ三角形の葉を持ちます。

 

参考)タデ科(たでか)とは? 意味や使い方 - コトバンク

花の構造は進化的に古い特徴を示しており、花弁は退化して消失しています。花弁に見えるのは実は萼で、花被片は4~6枚あり果期にも落ちず、ときに翼状に広がります。イヌタデ属の花被は通常5枚で二重になっておらず、ソバでは6枚だったものが1枚消失して5枚になったとされます。めしべの柱頭は基本的に3本で、ギシギシ属では房状になりますが、ミズヒキのように2本のものもあります。おしべの数はイヌタデ属やミチヤナギ属では基本8本ですが、何本か消失しているものも多く、ギシギシ属は6本で風媒花として機能します。

 

参考)http://plantidentifier.ec-net.jp/ss_tade-index.html

果実は三稜形またはレンズ形で、花柱が3本の場合は三稜形の果実に、2本の場合はレンズ形の果実になります。ギシギシ属の雌花では3枚の内花被片が大きくなって果実を包み、果実が大きくなるにしたがって緑色から白色に変化する特徴があります。

タデ科の特徴 - 花被、托葉、葉、果実の詳細な形態観察

タデ科の栽培品種と農業利用

タデ科で人類に最も役立っている植物は、ソバ、タデアイ、紅タデの3種です。ソバは重要な穀物として栽培され、花は5枚の花被片を持ち、8本のおしべがあります。栽培方法としては、日当たりの良い場所で育て、適度な水やりを行います。

 

参考)【プロが監修】タデアイの失敗しない育て方。植付けから種の収穫…

タデアイは藍染めの原料として利用されるタデ科イヌタデ属の一年草で、江戸時代には庶民の色として親しまれました。明治30年には全国で約5万haが栽培され、徳島県は全国作付面積の25~30%を占めていました。栽培方法は、ヤエザクラが咲く4月中下旬から5月中旬にタネをまき、育苗箱で間引いて草丈が5~6cm程度の時に移植します。発芽適温は18~25℃で、日なたで育てることが重要です。収穫したタデアイは葉と茎に分別し、葉のみを利用して藍染料「すくも」を製造します。生葉染めは最も古い藍染の方法で、新鮮な生の葉があれば薬品や難しい技術がなくても簡単に染色できます。

 

参考)https://www.tokusanshubyo.or.jp/tokusann%20pdf21/21-22.pdf

紅タデはヤナギタデの変種で、双葉を刺身のつまに利用されます。ヤナギタデは子葉本葉に辛味成分を含み、「タデ酢」や刺身のつま用に栽培される重要な香辛野菜です。イタドリは高知県などで春の山菜として家庭で食べられ、休耕田を活用した栽培では草取り不要で獣害も少なく、収穫・加工の手間が少ないため収益事業として注目されています。

 

参考)ヤナギタデ

タデアイの失敗しない育て方 - プロ監修の植付けから種の収穫まで

タデ科雑草の種類と防除対策

農業現場では、タデ科植物の多くが雑草として問題になります。畑地では2年目以降や乾田ほ場で、オヒシバ、メヒシバ、エノコログサとともにタデ類、アカザ、シロザ、イヌビユ、スベリヒユが優先的に発生します。水稲不耕起栽培でもタデ類は雑草として問題となり、移植前後の雑草管理が重要です。

 

参考)https://www.naro.go.jp/event/files/naroautumn2021-nire2-1tsujo04.pdf

タデ類の発生は遅く、通常の土壌処理剤だけでの防除は困難です。茎葉処理剤のハーモニー(チフェンスルフロンメチル剤)は発生直前の散布でも効果が高いとされています。クロロIPCはタデ科雑草に対して特に効果が高く、タマネギ、ナタネ、カンラン、ビートなどの除草に適当です。

 

参考)麦編 雑草対策|麦・大豆編|農作業便利帖|みんなの農業広場

永年草地や飼料畑では、イタドリやギシギシ類が強害雑草として問題になります。イタドリは太い地下茎を伸ばして随所に芽を出すため防除が困難で、草丈50~150cmに達します。タデ類やギシギシが多発した草地では事前に多発が予想される場合、同日処理することが推奨されます。バサグランは1年生広葉雑草の防除に有効で、初期生育時に防除可能ですが、イネ科やマメ科に薬害が少ないものの牧草では農薬登録が取れていません。

 

参考)【飼料畑雑草】②カヤツリグサ科、ヒユ科、タデ科・・・

ヤナギタデの生態と防除 - 病害虫・雑草の情報基地

タデ科植物の産地特性と見分け方

タデ科植物は環境適応性が高く、日本各地の日当たりのよい道端から湿地まで広範に自生します。スイバなどは日本各地の低山に生育する多年生草本で、若葉を山菜として食用としますが、シュウ酸が含まれているため酸味があります。イタドリは荒地から湿地まで広範に自生し、やや湿った地形を好み河川敷などに多く、茎は中空で節があり竹のような構造となっています。

 

参考)タデ科

幼植物の段階での見分け方も農業従事者には重要です。オオイヌタデとハルタデの晩生型(オオハルタデ)は形態が酷似しており、オオイヌタデやヤナギタデは初夏以降に発芽し夏期以降に開花します。ホタルイ、イヌホタルイなど他の雑草との形態的特徴を理解することで、防除剤の選択や適用時期の判断が可能になります。

 

参考)302 Found

イヌタデの増加を防ぐには、作物生育期間の防除の徹底のほかに、栽培後の管理においてイヌタデを繁殖させない条件を整える必要があります。タデ類は種子で繁殖する一年生雑草が多いため、開花結実前の防除が効果的です。多年生のイタドリやギシギシ類は地下茎で繁殖するため、耕起前に除草剤で防除する必要があります。

 

参考)https://japr.or.jp/wp-content/uploads/shokucho-shi/40/shokucho_40-09_02.pdf

タデ科 Polygonaceae - 三河の植物観察(詳細な分類と自生情報)

 

 


ヒメツルソバ カンイタドリ ポリゴナム タデ科 多年草