水道水の酸化還元電位は地域によって大きく異なり、水質が良好な地域では+300mV台、都市部では+500~+600mV台を示します。最高値として千葉県花見川区で+773mVという記録もあり、塩素濃度の違いが大きな要因となっています。一般的な目安として、水道水は+500~+900mV、ミネラルウォーター類は+300~+500mV、アルカリイオン水は-100~+50mVの範囲です。
参考)いろいろな水の酸化還元電位、計ってみました - アオレイル
全国各地の測定例を見ると、東京都港区で+565mV、品川区で+678mV、福岡市で+580mVなど、都市部ほど高い傾向が確認されています。一方、天然水では新潟天下甘露水が+280mV、岩手県龍泉洞の水が+188mV、出雲のアルカリ天然水が+173mVと比較的低い数値を示しており、山間部を流れる清水は約+800mV、湖水ではマイナスの値を示すこともあります。
参考)【分析項目解説!】酸化還元電位(ORP)とは?測定方法・求め…
純水の場合、pH7.0の条件下で+305mVを示すことが基準値とされており、この平衡線を基準として水質の酸化還元状態を評価します。還元水や水素水は-200mV以上のマイナス電位を有し、高濃度水素水では-400~-600mV程度まで低下させることが可能です。
参考)いろんな水のアルカリ・酸性、酸化・還元力(ORP)を示す図表
酸化還元電位(ORP)はOxidation Reduction Potentialの略称で、標準水素電極をゼロ基準とした電位(Eh)の正負で表されます。測定単位はボルト(V)またはミリボルト(mV)を使用し、Ehの数値がプラス側ほど酸化状態、マイナス側ほど還元状態を示します。
参考)酸化還元電位(ORP)とは – 水問屋
農業分野における測定では、専用の電極を土壌に刺して電気抵抗を測定することで電位を数値化します。土壌のORP計測には基準電極(比較電極)と白金電極をそれぞれ埋設し、電極間の電圧をデータロガーで連続計測する方法が採用されています。標準液としてゾーベル溶液(塩化カリウム0.1mol/L溶液)を用いるのが妥当とされており、既知の酸化還元電位を持つ溶液として校正に使用されます。
最近ではスマートフォンと連動する土壌挿入型センサーも開発されており、pH、EC、ORP、温度を同時に測定できる製品が実用化されています。測定範囲はORP-2000~+2000mV、精度±0.2mVという高性能な機器により、現場での迅速な測定が可能になっています。
参考)土壌挿入型ISFET pH/EC/ORP/温度センサーセット…
畑地土壌の酸化還元電位は通常+600~+700mV(+0.6~+0.7V)を示しますが、灌水下の水田土壌では有機物による酸素消費が進むため還元が進み、-200~-300mVまで低下することがあります。土壌のEh値がプラスで大きいほど酸化的であり、土壌中の物質は酸化状態で安定な形態となります。
参考)酸化還元電位と微生物の生育
微生物の生育環境という観点では、有害微生物は+400mV近辺の高い電位を好み、有用微生物は+200mV~0mV近辺の低い電位を好む傾向があります。畑作土壌は電位が高く(+600~+700mV)有害微生物の好む環境であるため、酸化還元電位を下げることで有害微生物を抑え、有用微生物が活発になる環境づくりが可能です。
土壌中の窒素や鉄、マンガンなどの微量元素は酸化還元反応により利用可能な形に変化し、この反応は微生物の活動に依存して土壌の健康状態に直接影響します。酸化還元電位が高いと酸素が豊富な酸化状態、低いと酸素が少ない還元状態であることを示すため、施肥や水管理の方法を調整する際の重要な指標となります。
電解水素水を農作物に散布・灌水することで、作物の高品質化や収穫量の増加が期待できることが実証されています。草津メロン栽培の事例では、電解水素水を使用したメロンの茎と葉が通常の2倍の大きさに成長し、6L以上のサイズが通常栽培4.2%に対して29%、5Lサイズが19.2%に対して43.8%と大幅な増収を実現しました。
参考)「電解水素水」で農作物を高品質へ農業分野|日本トリムウォータ…
還元水素水の効果として、根の張りが良く根腐れしにくい特性があり、発芽後2~3枚の葉が出てから使用すると効果的とされています。また、アルカリ還元した際の銅イオンの効果により、小さな害虫による被害を最小限に抑える副次的な効果も報告されています。
参考)水素水を利用した農業活性化 - 髙藤総合研究所合同会社
水耕栽培においてもORP管理は重要で、養液中の酸化性物質(溶存酸素、次亜塩素酸ナトリウム、3価の鉄イオンなど)と還元性物質(2価の鉄イオン、硫化物、有機物など)の物質量のバランスで決まります。容易にpHが変化する水耕栽培では、細かなpH調整とともにORP値のモニタリングが栽培成功の鍵となります。
参考)リモート監視/操作システム構築・環境機器/計測装置販売・メン…
酸化還元技術を活用した水管理により、水資源の有効利用と環境保護を同時に実現できます。先進的な水処理技術では、酸化・還元状態を制御することで水質改善を図る研究が進められており、実験室や一部の処理施設では酸化剤や還元剤を用いて水中の有害物質を分解する技術が実践されています。
土壌の酸化還元電位を適切に調整することで、栄養分の吸収を最適化し、作物の成長促進と収量向上に寄与します。バイオスティミュラント資材を使用することで酸化還元電位の低い状態を実現し、有用微生物の活性化を促すことができます。施肥した肥料の形が酸化還元電位によって変化し、想定したような肥効を示さない場合や予想外の肥効を示す場合があるため、定期的な測定と管理が重要です。
浄水場では酸化還元反応を利用して微生物や化学汚染物質を除去し、飲用に適した水を提供しており、このような技術を農業用水管理に応用することで、灌漑水の質を向上させて土壌の健康を維持できます。土壌の化学的状態や微生物活性を評価するための重要な手法として、ORP計測は今後さらに普及が期待される分野です。
参考)ORP測定用白金電極
京都農販日誌:稲作と酸化還元電位の詳細な関係性について
ウェザーニューズ:土壌ORP測定用白金電極の技術情報と測定原理

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