佐渡では、コシヒカリ作付けほ場の99%で5割以上の減農薬減化学肥料栽培が実践されています。特別栽培米として表示されるお米は、化学合成農薬と化学肥料の両方を佐渡地域の慣行栽培基準比で50%以下に減らして栽培されます。この取り組みは、単なる農薬削減だけでなく、トキとの共生を目指した環境保全型農業の一環として位置づけられています。
参考)JA佐渡(佐渡農業協同組合):特別栽培米ガイドライン
特別栽培米の基準は、都道府県や地域ごとに設けられた「慣行栽培」の基準に基づき、対象農薬の使用回数が50%以下、化学肥料の窒素成分量が50%以下という厳格な条件を満たす必要があります。佐渡では、この基準に加えて「朱鷺と暮らす郷」認証制度を設け、さらに高い環境基準を設定しています。
参考)佐渡市認証米「朱鷺と暮らす郷」とは? - 新潟県佐渡市公式ホ…
認証米の要件として、平成25年産米からは美味しさを追求するため、タンパク含有率6.2%以下という食味基準も加わりました。これにより、環境保全と高品質の両立が図られています。一部の地区では、節減対象農薬6割減・化学肥料7割減という、さらに厳しい基準での栽培も行われています。
参考)JA佐渡(佐渡農業協同組合):おいしい佐渡米と販売店・購入情…
JA佐渡は2015年にネオニコチノイド系農薬の米作向け販売を中止し、2018年からはネオニコチノイド系農薬不使用の米のみを販売するという全国に先駆けた決断を行いました。平成30年産米より全面的に禁止されたこの取り組みは、「生きものが安心して共生できる環境作りが、佐渡米の安心・安全にもつながっています」という理念に基づいています。
参考)農業問題 素朴な疑問2 佐渡はネオニコチノイド系農薬をやめた…
ネオニコチノイド系農薬は水溶性が高く、水田環境に残留しやすい特性があり、トキの餌となる水生生物への悪影響が懸念されていました。佐渡では2013年にネオニコチノイド系農薬の使用を控えるよう農家へ周知を始め、段階的に削減を進めてきました。2008年に始まったトキの放鳥が市民の機運を高め、JA佐渡という組織が動いたことで、地域全体を巻き込むスピーディーな動きにつながったとされています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11755762/
この禁止措置により、佐渡の田んぼには多様な生きものが戻り、トキの餌場として機能する豊かな生態系が回復しました。日本全体では依然としてネオニコチノイド系農薬の規制が遅れている中、佐渡の取り組みは先進的な事例として注目されています。
参考)世界に遅れを取る日本のネオニコチノイド規制
佐渡のネオニコチノイド系農薬禁止の経緯について詳しく解説されています
「生きものを育む農法」は、佐渡市の環境保全型農業の中核を成す取り組みです。この農法では、田んぼで生きもの調査を年2回実施することが義務付けられており、農業者自身が生物多様性保全に視点を当てた農業を実践します。田んぼの畦に除草剤を使わないことも重要な要件となっており、水田周辺環境全体の生態系保全が図られています。
参考)https://www.biodic.go.jp/biodiversity/shiraberu/policy/pes/satotisatoyama/satotisatoyama03.html
ビオトープの設置は、この農法の特徴的な取り組みの一つです。作付けされていない水田も活用しつつ、年間を通じて常に水の張られた状態の池や沼を田畑に隣接して設置することで、トキや水生生物の生息環境が整備されます。田んぼに「江(深み)」を作り、年間を通じて水を保つことで、生きものが安定して暮らせる環境を提供しています。
参考)トキとの共生に向けて:環境保全型農業に取り組むJA佐渡
水田・水路のネットワークの中にビオトープも繋げることで、生きものを育む団地が形成されます。夏場には休耕田をビオトープとして保つ取り組みも行われており、無農薬・無化学肥料による栽培区域も設けられています。これらの取り組みにより、ドジョウやヤゴ、オタマジャクシなどの生き物たちが一年中安心して棲める、豊かな自然環境が維持されています。
参考)https://www.jesc.or.jp/Portals/0/center/library/seikatsu%20to%20kankyo/202303_Ikarashi.pdf
環境省による佐渡のトキと米づくりに関する詳細な解説
2011年6月、佐渡地域は石川県能登地域とともに日本で初めて世界農業遺産(GIAHS)に認定されました。認定システム名は「トキと共生する佐渡の里山」であり、トキとの共生を目指した田んぼの生態系に配慮した「生きものを育む農法」の取り組みや、棚田などの美しい景観、昔から受け継がれている伝統的な農文化が評価されました。
参考)世界農業遺産(GIAHS:ジアス) - 新潟県佐渡市公式ホー…
世界農業遺産は、2002年から始まった国連食糧農業機関(FAO)による認定制度で、世界中から選ばれた7人の専門家による科学助言グループが調査して認定されます。佐渡の農業が認められたポイントは3つあります。①トキと共生する農業が生物多様性保全に大きな役割を果たすこと、②消費者や都市と連携し環境と経済が循環する農業生産体制を構築していること、③伝統的な農業文化を継承していることです。
参考)https://satokouen.jp/downloads/journal/02_04.pdf
この認証制度を農業者、行政、JAなど関係者が一体となって進めた結果、今では400羽以上のトキが佐渡の里山に暮らしています。佐渡産コシヒカリをブランド米「朱鷺と暮らす郷」として販売し、利益の一部をトキの保全活動にあてるなど、持続可能な農業モデルとして世界から注目されています。
参考)佐渡の世界農業遺産について
佐渡市の世界農業遺産に関する公式情報
佐渡米の品質管理において、タンパク質含有率は食味を左右する重要な指標です。タンパク質含有率が高いほど食味は低下するため、佐渡では厳格な基準を設けています。「朱鷺と暮らす郷」認証米では、コシヒカリBLについて5割以上の減減栽培に加え、タンパク含有率6.5%以下(玄米水分15%換算)という要件が設定されています。
参考)https://www.city.sado.niigata.jp/uploaded/attachment/41673.pdf
JA佐渡では平成25年産米から美味しさを追求し、タンパク含有率6.2%以下を認証米要件に追加しました。これは日本穀物検定協会の米食味ランキングで特A評価を目指すための取り組みです。食味総合評価を高めるため、生育状況に応じて徹底した水管理を行い、過剰生育とならないよう調整しています。
参考)JA佐渡 | 厳選 佐渡育ち
減農薬・減化学肥料栽培は有機肥料の施用が主体であるため、登熟後期の高温に対応できる栄養が不足する傾向があり、高い品質が確保しにくいという課題もあります。そこで佐渡では、カキ殻粉末、米ぬか、鶏ふん、牛ふんなどを独自にブレンドした有機肥料を用いた土づくりを行い、ケイ酸やカリの補充も行っています。田んぼ全体を大きな堆肥場のように活用することで、環境保全と食味の両立を実現しています。
参考)米作りの1年
JA佐渡の特別栽培米ガイドラインで詳細な栽培基準を確認できます