農薬みかん残留基準値使用回数適正使用

農薬みかんの「残留基準値」と「使用回数」を軸に、現場で迷いやすい表示・検査・記録の要点を整理します。農家として説明責任まで含めて、どこを押さえれば不安を減らせるでしょうか?

農薬みかん残留基準値

農薬みかん残留基準値で迷わない要点
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基準値は「農薬ごと・食品ごと」

みかんは近年「外果皮を含む」扱いが明確化され、農薬によっては基準値の食品名表記が変わります。

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収穫前日数と使用回数が核心

現場のミスは濃度より「散布時期」「回数」「対象作物違い」が多いので、ラベルと防除暦で潰します。

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記帳は“保険”ではなく“武器”

散布履歴が残っていれば、出荷先・近隣・社内への説明が速く、トラブルの延焼を止めやすくなります。

農薬みかん残留基準値と外果皮を含むの注意点

みかんの残留基準値は「農薬ごと・食品ごと」に設定され、同じ農薬でも食品名の扱い(検体部位の前提)が変わる点が、現場の誤解を生みやすいポイントです。
実務で特に意識したいのは、厚労省の告示・通知の中で、みかんが「みかん(外果皮を含む。)」として整理されるケースが明記されていることです。例えば令和6年9月18日告示関連の通知では、「みかん」に設定されている残留基準値を削除して「みかん(外果皮を含む。)」として残留基準値を設定する旨が記載されています。
ここでの“落とし穴”は、消費者向け説明で「皮は食べないから関係ない」と短絡しがちな点です。基準値の枠組みは「取引・検査・行政運用」を前提に作られており、出荷段階での説明責任は「どの食品名区分で管理していたか」に寄ってきます。だからこそ、栽培側は“体感”ではなく“表記”で合わせるのが安全です。


参考)https://www.semanticscholar.org/paper/178207f0fb8b3ccb04df94c4fb42830367cfcc8a

もう一つの注意点は、一律基準の存在です。通知では「表中にない食品」等には一律基準(0.01 ppm)が適用される旨が示されています。

みかんに限らず、適用拡大・基準改正のタイミングで「いつから」「何が対象か」が変わるので、古い資料のコピペ運用は事故のもとになります。とくに輸出や加工(果皮利用)に踏み込む場合は、食品名区分のズレが“説明不能”につながりやすいので要注意です。

参考:みかん(外果皮を含む。)等の残留基準値の運用・適用期日(改正の概要)
https://www.mhlw.go.jp/content/11135200/001305616.pdf

農薬みかん使用回数と収穫前日数で事故を防ぐ

残留基準値の話になると「ppm」「検査値」に意識が寄りがちですが、生産現場の管理で一番効くのは、結局「使用回数」と「収穫前日数」を守る運用設計です。都道府県の技術資料でも、薬剤ごとに「前日/何回」など具体の縛りが明記されており、ここを外すと一発で“適正使用”から外れます。例えば大阪府の資料では、そうか病防除などで薬剤の使用条件として「【みかん 1000~2000倍 前日/3回】」のように、希釈倍率と収穫前日数・総使用回数がセットで示されています。
使用回数でありがちな失敗は、(1) 同一有効成分の別商品を「別カウント」だと思い込む、(2) 対象害虫が変わったからといって同じ系統を重ねる、(3) 降雨で流れた気がして“追加散布”して回数を超える、の3つです。防除暦に「使用回数は合わせて○回まで」と書かれるのは、まさにこの誤解を潰すためです。実際、柑橘の防除基準資料には「使用回数は合わせて4回まで」などの注意書きが見られ、複数剤の合算で管理する前提が示されています。


参考)http://www.mikan.gr.jp/tech/boujyo/2021%E3%80%80%E9%98%B2%E9%99%A4%E6%9A%A6%E3%80%80%E6%9F%91%E6%A9%98.pdf

収穫前日数は、残留の“最終関門”です。散布のタイミングを後ろにずらすほど残留のリスクが上がるため、病害虫の山場と収穫を同時に見る必要があります。生産者側の工夫としては、薬剤を選ぶ前に「収穫予定日→逆算」で使える剤を絞り、そこから病害虫・抵抗性・薬害リスクで最適化する順番にすると、判断がブレにくくなります。


参考)https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/84837/2503_10_08_mikan.pdf

農薬みかん適正使用と散布履歴の記帳

「農薬みかん」と検索される背景には、消費者の不安だけでなく、出荷先・加工先が求める“説明の速さ”があります。ここで効いてくるのが、適正使用と記帳です。農薬使用者が守るべきこととして、J-Stageの解説でも「適用作物以外に使用しない」「使用量・希釈倍数」「使用時期」「総使用回数」などの遵守義務が整理され、さらに「使用月日、場所、作物、農薬の種類、使用量を記載する」といった記帳が挙げられています。
加えて、法令としても帳簿記載が位置づけられています。e-Govの「農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令」では、農薬使用者が農薬を使用したときに、使用年月日・場所等を帳簿に記載するよう努めなければならない、という条文があります。


参考)e-Gov 法令検索


つまり記帳は“あると安心”ではなく、現場を守る最低限のインフラです。出荷後に「その日の散布は何を何倍で、どの園で、何リットルで、誰がやったか」を即答できないと、事実確認に時間がかかり、疑いが濃く見えます。


記帳を続けるコツは、難しくしないことです。最低限、次の項目だけは固定で残してください。


  • 散布日、園地、品種(温州・中晩柑など)、対象病害虫、農薬名(商品名と有効成分が理想)、希釈倍率、使用量、散布者、天候メモ(風・雨)。
  • 収穫前日数に関わる薬剤は、散布時点で「収穫予定日」を併記(後から逆算しない)。
  • 追加散布や混用をした日は、理由(降雨・多発など)も一言残す(“意図”が残ると説明が通りやすい)。

参考:農薬使用者の遵守義務・努力義務、記帳項目の考え方
生産者への情報伝達について
参考:帳簿記載(散布履歴の記帳)の条文(e-Gov)
e-Gov 法令検索

農薬みかん残留農薬検査とGCMSLCMSの現実

「検査で調べている」と一言で言っても、何をどこまで見ているかは大きく違います。公的検査や委託分析の主流は、多成分一斉分析で、GC-MS/MS・LC-MS/MSなど複数の装置系を組み合わせて対象農薬を広くカバーする設計です。温州みかんを対象にしたアプリケーションノートでも、GC・LCの両方で多成分一斉分析を行い、前処理から測定までの流れや、対象成分数・回収率評価などが示されています。
現場が押さえるべき“現実”は次の通りです。


  • 検査は「ゼロ確認」ではなく「基準との照合」であり、定量下限や回収率など測定条件に依存します。

    参考)https://www.miuraz.co.jp/e_science/doc/2024/05/d25aeaf580c0f00876fbf2ae53b1d593915e91c1.pdf

  • みかんはマトリックス(糖・酸・精油成分など)で測定が難しくなることがあり、前処理(精製)の出来が結果の安定性に効きます。​
  • どの農薬を使ったかが分かっていれば、検査設計(ターゲット成分の確認、必要な装置系、前処理条件)の精度が上がり、不要な再検査を減らせます。​

さらに、基準値の運用は「食品名(みかん(外果皮を含む。)など)」の前提とセットです。検査側も、その前提に合わせて検体の取り扱いを詰めます。通知の中には、みかんを「外果皮を含む」扱いとして整理する方針が示されているため、栽培側も“皮は剥くから”ではなく“制度の食品名”で会話するのが重要です。

参考:温州みかんの残留農薬の多成分一斉分析(GC・LC、前処理時間・回収率評価など)
https://www.miuraz.co.jp/e_science/doc/2024/05/d25aeaf580c0f00876fbf2ae53b1d593915e91c1.pdf

農薬みかんの独自視点:精油と外果皮を含むで説明が変わる

検索上位は「残留農薬は大丈夫?」に寄りがちですが、農業従事者として差がつくのは“どの用途の取引か”まで言語化できることです。みかんは果肉だけでなく、外果皮が加工用途(ピール、香料原料、乾燥果皮など)に回ることがあり、このとき説明の軸が「皮は食べない」から「外果皮を含む取扱い」へ一気に切り替わります。残留基準値の通知でも、食品名として「みかん(外果皮を含む。)」の整理が明記されているため、皮利用が絡む取引では特に整合が求められます。
ここでの“意外な落とし穴”は、同じ園・同じ散布でも、販路によってリスクの見え方が変わる点です。


この視点を持つと、日々の防除判断も変わります。病害虫防除だけでなく「どの販路の要件に合わせるか」を先に決め、使用回数・収穫前日数・記帳の粒度まで揃えると、後工程(選果・出荷・営業)が楽になり、農家の精神的コストも下がります。


参考)生産者への情報伝達について


参考:温州みかんの各国・地域の残留農薬基準値の情報(輸出向けの注意点)
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/attach/pdf/zannou_kisei-787.pdf