庭木の近くで除草剤を使うとき、最初に押さえるべきは「茎葉処理剤」と「土壌処理剤」の違いです。
茎葉処理剤は、雑草の茎や葉に薬液を付けて枯らします。一方、土壌処理剤は土に処理層を作り、発芽を止めたり発芽直後の雑草を枯らしたりします。
庭木を枯らしてしまう事故は、土壌処理剤が原因になることが多いとされています。土壌処理剤は“雑草の根から吸収される”設計のため、庭木の根域に入ると庭木側にも影響が及ぶ余地があるからです。
つまり、庭木の根が伸びている可能性がある範囲(樹冠の外側まで広がることもあります)では、「土に効かせる」発想そのものがリスクになります。
現場での判断のコツは次の通りです。
農地・園地で使う場合は、農薬登録の有無や適用場所の確認が必須です。特に「樹木等」といった適用が“植栽がない場所に限る”ケースもあるため、ラベルの適用作物・適用場所を先に確認します。
庭木を守りながら雑草を落としたい場合、候補になりやすいのが「グリホサート系」と「グルホシネート系」の茎葉処理剤です。どちらも非選択性なので、庭木の葉や新芽に付けば薬害の可能性がありますが、「土に落ちた成分が根から吸収されにくい」という説明が一般向けに広く共有されています。
グリホサート系は吸収移行性で、葉から入った成分が植物体内を移行して根まで枯らします。多年生雑草や地下茎が強い雑草まで狙いやすい反面、効き始めは遅く、効果発現まで日数がかかるとされています。
一方、グルホシネート系は接触型で、散布した部分を中心に枯らし、速効性があるとされています。ただし“根まで”の効き方はグリホサート系とは性格が違うため、地下部がしぶとい雑草では再生に注意が必要です。
ここで重要なのは、「庭木を枯らさない=どれでも安全」ではない点です。非選択性である以上、飛散・跳ね返り・垂れ落ちで庭木の葉に付けば、庭木側も枯れる方向に働きます。
また、家庭向けの“便利な表現”がある商品ほど、土壌処理成分が混合されている可能性がある、という注意喚起もあります。現場では、成分と剤型(茎葉処理剤か土壌処理剤か)をパッケージとラベルで確定させてください。
庭木の近くでの散布は、除草剤の強さより「当て方」で結果が決まります。よくある失敗は、風で薬液が飛んで庭木の枝葉に付く、雨で流れて効きたい場所がズレる、同じ場所に繰り返し当てて局所的に負荷を上げる、の3つです。
散布の基本動作は、次のチェックリストで事故が減ります。
服装も、農業従事者としては「慣れ」で省略しがちですが、曝露を下げるほど作業の再現性が上がります。長袖・長ズボン・手袋・マスク・保護メガネは基本として、薬液が染み込みにくい素材を選びます。
機材面では、噴霧器とノズルの選定で「飛び」を抑えられます。ジョウロ代用などでドバっと出ると、狙った草より土面に落ちる割合が増え、流亡・跳ね返りの原因になります。
「庭木の近くに撒いたのに、なぜか別の木が弱る」という現象は珍しくありません。原因として語られるのが、(1)土壌処理剤の誤用、(2)風によるドリフト、(3)雨や散水による薬液の移動、そして(4)“木の根が地下でつながっている可能性”です。
特に(4)は、現場感覚として見落としやすいポイントです。隣の雑木だけ枯らすつもりが、根が近接・交差していて、守りたい庭木側にも影響が出るケースがある、とされています。
さらに、庭木の「根元だけ」を避けても十分でない場合があります。根は想像より広く伸びるため、樹冠の外側の雑草を処理したつもりが、結果として根域に作用してしまうことがあり得ます。
事故を減らす実務的な対策は次の通りです。
検索上位では「木を枯らさない」視点が中心になりやすい一方で、農業従事者の現場では“地形リスク”もセットで考える必要があります。特に傾斜地や畔に近い場所で、地下部までしっかり枯らすタイプを多用すると、根が担っていた土の保持が弱まり、崩れやすくなる可能性があると指摘されています。
これは「除草の成功」がそのまま「管理の成功」にならない典型例です。雑草や下草の根は、良くも悪くも土をつかんでいます。根まで抜く・根まで枯らす・長期間裸地化する、が連続すると、雨のたびに表土が動き、庭木の根が露出しやすくなることがあります。
対策としては、“薬剤でゼロにする”より“低く維持する”発想が有効です。
この視点は、庭木の健全性だけでなく、農道・法面・畔の保全(補修コスト)にも直結します。庭木を守ったつもりが、次の豪雨で根が露出して樹勢が落ちる、という遠回りの失敗を避けられます。
木を枯らさない除草剤の種類・選び方(茎葉処理剤と土壌処理剤、成分の特徴、散布注意):
https://www.noukaweb.com/herbicid-tree-not-wither/