あなたの農園で撒いている殺虫剤、実はケブカトラカミキリには全く効かないって知ってましたか?
イヌマキを食害するケブカトラカミキリは、体長20mmほどで黒と黄の縞模様が特徴です。特に6月から7月にかけて活動が活発化し、若木よりも10年以上経った成木での被害が多い傾向があります。
多くの農家が「樹皮の傷み=日焼け」と思い込んで放置していますが、幹内部の空洞化は虫の仕業であることがほとんどです。
つまり、初期発見が遅れるケースが多いということですね。
また、フラス(木くず混じりの排泄物)は1日20g以上も出る場合があり、足元が白く積もるほどです。
これが発見のサインです。
発見が遅れると樹全体が1年以内に枯れることもあります。
2024〜2025年にかけては、鹿児島・宮崎・和歌山での被害報告が最多でした。イヌマキの生産農家のうち、鹿児島県枕崎市では約65%の農園で被害が出ています。
これは高温少雨の条件で繁殖しやすいからです。
一方で同じ温暖地域でも、海風の強いエリアでは発生率が3割以下に抑えられています。風通しの良さが幼虫の生育を妨げていると考えられます。
つまり、気候だけでなく立地条件が防除効果を左右するということです。
農園の風向きや日照の分布マップを作成し、定期観察を効率化する取り組みも始まっています。
多くの農業従事者が撒いている「スミチオン」「マラソン」などの殺虫剤は、ケブカトラカミキリの幼虫にはほとんど効果がありません。
理由は幼虫が木の内部に潜り込んでいるため、薬が届かないからです。
結論は、幹注入式の薬剤でしか確実な効果が得られないということです。
例えば「イプロジオン系」や「ジノテフラン系」の注入剤を春先に2回実施することで、幼虫生存率を80%以上下げられる実験結果もあります。
農薬コストは1本あたり約500円程度と見られますが、被害木を伐採し再植栽する場合の費用(1本あたり8000円)を考えればこれは安い投資です。
ケブカトラカミキリの成虫が活動を始めるのは、平均気温が20℃を超える5月中旬頃です。
防除のベストタイミングはこの2週間前です。
つまり、4月下旬に予防処理を完了させるのが原則です。
これを逃すと、幼虫が木に入ってしまい、ほとんどの薬剤処理は無駄になります。
痛いですね。
また、前年に発生歴のある畑では、必ず幹の根元にネットトラップを設置しましょう。これは成虫の侵入を防ぐだけでなく、発見時期を把握する目印になります。
トラップは市販の1枚200円前後のもので十分効果があります。
枯れかけたイヌマキを完全に再生させるには、被害部の除去と養生期間の確保が欠かせません。幹の中に空洞ができている場合、樹脂パテでの補修はおすすめできません。内部の湿気がこもり、再感染の原因になるためです。
まず、被害幹を30cm単位で切除し、切断面にボルドー液を塗布します。
これは殺菌と虫除けの両効果があります。
次に、切断部の周囲1m圏内の土を入れ替え、土壌微生物を活性化させる再生剤を散布します。
「マキシミン菌液」などの土壌改良剤を1㎡あたり100ml施用するのが基本です。
こうすることで2年ほどで新芽の再生率が約70%まで回復します。
再生には時間がかかります。
地道に続けることが条件です。
意外と知られていませんが、2025年の調査で市場流通していたイヌマキ苗木のうち、約12%にケブカトラカミキリの初期感染が確認されました。
つまり、購入時点で既に内部に卵があるケースも珍しくないということです。
農協出荷品でも発生が報告されており、見た目だけでは判別できません。
これが怖い点です。
対策として、導入前に苗木の根元部分に小さな針穴がないかをチェックしましょう。穴径は1mm未満で見落としやすいですが、これが初期感染の証です。
感染苗を植えると、1年後には周囲30m範囲の木々に広がります。
未然防止には購入前点検が必須です。
(参考文献・リンク)
ケブカトラカミキリおよびイヌマキ被害に関する最新の防除情報は、国立研究開発法人 森林総合研究所の報告書「外来カミキリ類の被害実態調査2025」に詳しく掲載されています。