カオリンと日焼けと害虫と高温

カオリンは果実の日焼けや高温ストレス、害虫の被害を同時に抑える選択肢として注目されています。散布の基本、効き方の理屈、失敗しやすい点、作物別の勘所まで現場目線で整理しますが、あなたの圃場ではどこから試しますか?

カオリンと日焼け

この記事の概要(農業現場向け)
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粒子フィルムで温度を下げる

カオリンは葉や果実表面に白い膜を作り、光(特に強い日射)を反射して日焼け・高温障害のリスクを下げます。

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害虫の“行動”を邪魔する

殺虫ではなく、寄りつき・吸汁・産卵をしにくくする方向で効くため、早めの予防散布が鍵になります。

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濃度・付着・洗い流しが成否を分ける

均一な被膜を作れないと効果がブレやすく、降雨や頭上灌水で落ちる前提で再散布計画が必要です。

カオリン 粒子フィルム 日焼けの仕組み


カオリンは「粒子フィルム(particle film)」として葉や果実の表面に微粒子の白い被膜を作り、過剰な日射を反射することで表面温度の上昇を抑え、日焼け(サンバーン)や熱ストレスを軽減する考え方です。
研究報告では、カオリン散布により葉・果実の温度が低下し、その結果として日焼けの発生が抑えられることが示されています(濃度が高い区ほど温度低下が大きい傾向の報告もあります)。
ブドウの試験でも、カオリン処理は反射率を上げて果実温度を緩和し、高温・過剰放射の悪影響を和らげる実用的手段になりうると整理されています。
ここで重要なのは、カオリンは「植物体を強くする薬」ではなく、外側に“遮熱・拡散”の薄い層を作って環境ストレスを弱める資材だという点です。


参考)https://www.aua.gr/roussos/Roussos/Papers%20PDF/Surround%20Paper%20Biol%20Conf%20vF.pdf

つまり、日焼けが毎年起きる圃場では「被害が出たら散布」より「危険な時期の前に被膜を作っておく」ほうが理屈に合います。


参考)カオリン粘土:持続可能な害虫管理のために

また、被膜の量(残り方)が温度低下や障害抑制の程度に関係することが示されており、ムラなく付けることが効果の再現性に直結します。


参考)https://www.ars.usda.gov/ARSUserFiles/2017/Sunburn%20paper%20ASHS.pdf

カオリン 散布 濃度とタイミングの実務

実務では、狙うのは「乾いた後に、白く均一な膜が見える状態」で、葉裏や果実面まで“全面被覆”を意識すると効果が出やすいとされます。
一方で、カオリンは雨や頭上灌水で洗い流されやすく、被膜が切れると効きが落ちるため、降雨後の再散布を前提に計画を組むのが基本になります。
「予防策である」という位置づけがはっきりしており、害虫・日焼けのどちらの目的でも“問題が大きくなる前に先回りする”運用が推奨されています。
温度低下や日焼け抑制は、散布濃度(例:3~4%の区で葉・果実温度低下が大きいとする報告)と関連づけられて議論されることがあり、圃場条件に合わせて濃度と回数を調整する発想が必要です。


参考)https://mjppf.journals.ekb.eg/article_176024_8fef572a6af320f7e84c7d4bdc09e964.pdf

ただし濃度を上げれば万能、ではなく、ノズル詰まり・沈降・攪拌不足でムラが出ると、同じ濃度でも結果が割れます(「付着=性能」と考えると判断が速くなります)。

また、カオリン処理と遮光ネット等は同じ“高温・過剰放射対策”でも効き方が異なり、例えばブドウではネットのほうが温度低下幅が大きい一方、カオリンも現実的な代替になり得る、と比較されています。


参考)https://oeno-one.eu/article/view/86

カオリン 害虫 忌避と防除の位置づけ

カオリンは一般的な殺虫剤のように「虫を倒す」より、虫が作物表面を認識・定着・摂食・産卵しにくくする“行動阻害”として使われることが多い資材です。
そのため、すでに密度が上がった後の一発逆転には向きにくく、発生初期~発生前の“予防散布”が効果の出方を左右します。
実際に、カオリンは予防戦略に適合し、必要に応じて再散布して被膜を維持する、という運用が推奨されています。
また、カオリン資材(例:Surroundのような加工カオリン)については、熱・日焼け対策に加えて、特定害虫の活動を減らし、通常の殺虫剤散布回数の削減につながる可能性が述べられています。


参考)Surround

“害虫対策なのに白くする”ことに抵抗が出やすいですが、狙いは見た目ではなく、表面特性(反射・触感・付着)を変えて「そこに居たくない」状態を作ることです。

独立行政法人等の整理でも、カオリン粒子フィルム噴霧が害虫・病害・貯蔵障害に関係しうるという形で研究蓄積が確認できます。


参考)カオリンに基づく粒子フィルム噴霧は害虫,病害および貯蔵障害の…

カオリン トマト 糖度 水ストレスの意外な使い方

あまり知られていない応用として、カオリンを“果実表面に塗布する”ことで、トマト果実の糖度が上がる現象が農研機構の成果情報として示されています。
この報告では、カオリン塗布が果実部の蒸散を促進し、含水率を低下させ、果実部に特異的な水ストレスが生じたことが糖度上昇につながった可能性が推定されています。
つまり「遮熱で守る」だけでなく、「果実の水分動態を変えることで品質を動かす」という、日焼け対策とは逆方向の発想が成立するのが面白い点です。
ただし、糖度を上げる技術全般に言えることとして、水ストレスのかけ方次第で収量や尻腐れ等のリスクも動きうるため、圃場で試すなら“目的(糖度)と副作用(生理障害)をセットで観察する”設計が必要です。


参考)https://agresearcher.maff.go.jp/seika/show/227480

農研機構の同成果は、節水条件での効果や糖度と含水率の関係を明らかにする狙いも書かれており、単なる経験談ではなくメカニズム仮説まで踏み込んでいます。

日焼け・害虫対策の延長でカオリンを知った現場ほど、この「糖度側からの使い方」は盲点になりやすいので、小規模試験で確認してから拡大すると安全です。

カオリン 粘土鉱物 カオリナイトと土壌の誤解(独自視点)

カオリンは粘土鉱物で、一般にはカオリナイト系として語られることが多い一方、「土に入れれば万能に土壌改良できる」と短絡されがちです。
実際には、粘土鉱物の吸着や交換容量(CEC)などの性質は鉱物種で異なり、例えば研究では“カオリナイトよりモンモリロナイトのほうが吸着量が大きいことを示している”といった比較が述べられています。
つまり、土壌改良の議論で“粘土=全部同じ”として扱うと、期待値の置き方を誤りやすい、というのが現場での落とし穴です。
さらに、リン酸吸着のような挙動もpHや条件で変化しうることが研究テーマになっており、「入れる量」だけでは語れない性質があります。


参考)https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2030932551.pdf

土壌pHは作物の養分吸収性に直結し、緩衝能が大きい土壌では施用量の見積りに誤差が出やすいので、土壌分析に基づいて調整する重要性が解説されています。


参考)土壌pHを適正領域に改善しましょう! - アグリポートWeb

この視点から言うと、カオリンを“土に混ぜる話”と“葉や果実に被膜を作る話”は分けて考えるのが合理的で、今回の主題(粒子フィルムによる日焼け対策)では後者に集中したほうが成果が出やすいです。

有用:カオリン塗布でトマト糖度が上がるメカニズム(蒸散・含水率・水ストレス)の要約
https://www.naro.go.jp/project/results/laboratory/vegetea/1996/vegetea96-011.html
有用:土壌pHの基本、緩衝能が大きい土壌での注意点(分析に基づく施用量調整)
土壌pHを適正領域に改善しましょう! - アグリポートWeb
有用:カオリン粒子フィルムの温度低下・日焼け抑制の考え方(反射と残渣量の関係が読み取れるPDF)
https://www.ars.usda.gov/ARSUserFiles/2017/Sunburn%20paper%20ASHS.pdf




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