鉄(Fe)は植物の「必要元素」で、光合成に関わる葉緑体の形成や呼吸回路にも関与するため、不足すると生育が鈍りやすいとされています。
現場で典型的に見えるのは「新葉側(先端の若い葉)からの黄化」で、葉脈は残り、葉脈間が薄くなる“葉脈間クロロシス”として進むパターンです。
ただし、ここで重要なのは「土に鉄が無い」のか「鉄があっても吸えない」のかを切り分けることです。
切り分けのチェック(圃場で再現性が出やすい順)
ここでの実務的なコツは、症状が出た株だけを追うのではなく、同じ区画の「軽い株・重い株」「畝の端・中央」など、根域条件が変わる場所で症状の出方を見比べることです。鉄は“要素そのもの”より“根が吸える状態かどうか”で差が出やすいからです。
鉄資材は、葉面散布で「目に見える黄化」を素早く止める用途に向きます。
市販の鉄系複合液肥の例では、葉面散布・灌水の両方に対応し、希釈倍率の目安として5,000〜10,000倍が提示されています。
実務での考え方(数字より「当て方」)
また、養液栽培やタンクで溶かして使う鉄(キレート鉄など)では、最終倍率10,000〜100,000倍といった“かなり薄い領域”で使う考え方も示されており、希釈倍率ではなく必要成分量を基準にする注意喚起があります。
この「薄いのに効く」感覚は、微量要素の鉄ならではで、濃度を上げても効きが比例しない(逆に障害や拮抗の原因になる)点は、現場で事故を減らす重要ポイントです。
鉄はpH条件で“効き方”が大きく変わります。
キレート鉄(EDTA-Feなど)を使う場合、pHがアルカリ側に傾くと鉄が機能しにくい(キレートの効果が落ちる)ため、pH 6以下で使う、pH 7以上ではキレートの効果を失う、といった注意が示されています。
ここが「鉄が効かない圃場」の定番の落とし穴です。
意外に効く現場の工夫として、鉄を入れる前に「希釈水のpHを測る」だけで、再現性が一段上がります。特に養液・点滴灌水では、鉄は“入れ方”が収量に直結しやすいので、測ってから入れる運用に変える価値があります。
鉄資材は混用と保管(タンク滞留)で性能が崩れやすいことがあります。
2価鉄イオン供給や有機酸を使う鉄資材の説明では、希釈後はカビやすくなり、タンク内の滞留は3日程度になるよう注意する、という具体的な運用注意が示されています。
混用で起きやすい実害(“効かない”の正体になりがち)
参考)https://www.sakanaka.co.jp/syouhinnsyoukai/hiryou/tetsuriki.html
現場向けの基本ルール(トラブル予防として強い)
鉄欠乏の対策は「黄化を緑に戻す」だけで終わらせると、収量面の取りこぼしが起きます。
鉄は葉緑体の形成や呼吸回路にも関与するため、見た目が戻っても“弱っていた期間の光合成ロス”が残り、回復の遅れが出る可能性があります。
そこで、上位記事が触れがちな「欠乏症状」「希釈倍率」だけでなく、圃場の運用として次の視点を入れると、鉄の費用対効果が上がりやすくなります。
要するに、ホリン feを鉄資材として使うなら「症状を消す作業」から「鉄が働く環境を作る作業」へ一段上げるのが、収量に近い実装です。
根域pHとキレート鉄の扱い(養液向けの注意がまとまっている)
キレート鉄-13%鉄肥料|EDTA Fe【800g】|鉄|微…
2価鉄・有機酸系の特徴と、希釈後タンク滞留の注意(運用事故を減らす)
https://www.sakanaka.co.jp/syouhinnsyoukai/hiryou/tetsuriki.html