発色剤の危険性と亜硝酸ナトリウムの添加物によるガンのリスク

発色剤の危険性や発がん性が気になりませんか?ハムやソーセージに含まれる亜硝酸ナトリウムの役割やボツリヌス菌への効果、そして意外な野菜の硝酸塩リスクまで、正しい知識で安全な食卓を守る方法とは?

発色剤の危険性

発色剤と危険性の真実
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発がん性の懸念

ニトロソアミンの生成リスクとADI基準

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ボツリヌス菌対策

最強の毒素を防ぐための必要不可欠な効果

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野菜の硝酸塩

実は添加物よりも摂取量が多い意外な事実

発色剤の危険性:亜硝酸ナトリウムと発がん性物質ニトロソアミンの生成

 

発色剤として最も広く使用されている亜硝酸ナトリウム(NaNO2)は、食品添加物の中でも特に消費者からの不安が強い物質の一つです。その最大の理由は、特定の条件下で発がん性物質である「ニトロソアミン」を生成する可能性があるという化学的な性質にあります。

 

まず、なぜ発色剤がハムやソーセージの色を鮮やかにするのかというメカニズムを理解する必要があります。食肉に含まれるミオグロビンという色素タンパク質は、酸素に触れると酸化して茶褐色に変色してしまいます。しかし、亜硝酸ナトリウムを加えることで、ミオグロビンは「ニトロソミオグロビン」という安定した鮮赤色の物質に変化します。これにより、加熱しても色が茶色にならず、美味しそうなピンク色を保つことができるのです。

 

問題となるのは、この亜硝酸ナトリウムが食肉中に含まれる「アミン」という物質と反応した場合です。食肉にはタンパク質の分解過程で生じる「二級アミン」が存在します。これと亜硝酸が酸性条件下(例えば人間の胃の中のような環境)で反応すると、強力な発がん性を持つ「ニトロソアミン」類が生成されることが知られています。これが、「発色剤=危険」とされる科学的な根拠の核心です。

 

  • 反応式: 亜硝酸(HNO2) + 二級アミン(R2NH) → ニトロソアミン(R2N-NO)
  • 生成条件: pHが低い酸性環境(胃酸など)や、加熱調理(特にベーコンなどを高温で焼いた場合)

しかし、現代の食品加工技術においては、このリスクを低減するための工夫が凝らされています。例えば、酸化防止剤として知られるビタミンC(アスコルビン酸ナトリウム)を併用することが一般的です。ビタミンCは亜硝酸と優先的に反応し、ニトロソアミンの生成を阻害する働きがあります。現在市販されている多くのハムやソーセージでビタミンCが添加されているのは、単なる酸化防止だけでなく、この発がん性物質の生成抑制という重要な安全対策の一環なのです。

 

亜硝酸ナトリウムに関する内閣府食品安全委員会のQ&A詳細です。

 

亜硝酸ナトリウム(発色剤)について - Q&A詳細

発色剤の危険性:ボツリヌス菌の抑制効果と食品添加物の必要性

「発色剤は危険だから使わないでほしい」という声がある一方で、食品衛生の専門家が発色剤の使用を完全に禁止することに慎重な理由があります。それは、亜硝酸ナトリウムが持つもう一つの重要な機能、「ボツリヌス菌の増殖抑制効果」です。

 

ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)は、自然界の土壌などに広く存在する細菌ですが、酸素のない状態(嫌気性環境)を好みます。ハムやソーセージ、真空パック食品の内部はまさにこの「酸素のない状態」であり、ボツリヌス菌にとっては絶好の繁殖環境となります。

 

ボツリヌス菌が作り出す毒素は、自然界で最強の毒性を持つと言われる神経毒です。その致死量は極めて微量で、呼吸筋を麻痺させ、死に至らしめる危険性があります。過去には、自家製のハムやソーセージによるボツリヌス菌食中毒で多くの命が失われた歴史があります(「ソーセージ」の語源が「ボツルス=腸詰め」に関連するという説もあり、ボツリヌス菌の名前の由来にもなっています)。

 

  • ボツリヌス菌の特徴:
    • 熱に強い「芽胞」を作るため、通常の加熱(100℃程度)では死滅しない。
    • 酸素がない場所で増殖し、致死性の高い毒素を産生する。
    • 亜硝酸ナトリウムに対して感受性が高く、添加することで増殖を抑えられる。

    「無添加」を追求するあまり、この致死的な食中毒のリスクを高めてしまっては本末転倒です。亜硝酸ナトリウムは、単に見た目を良くするためだけの「化粧品」のような存在ではなく、食中毒から命を守る「防腐剤」としての極めて重要な役割を担っています。この「発がん性の懸念(長期的リスク)」と「ボツリヌス菌による食中毒(即効性の致死的リスク)」のバランスをどう取るかが、食品添加物行政の大きな課題となってきました。

     

    ボツリヌス菌と亜硝酸塩の殺菌作用に関する解説記事です。

     

    亜硝酸塩とボツリヌス菌 - 環境テクシス

    発色剤の危険性:ハムやソーセージの摂取量とADI(一日摂取許容量)の基準

    「危険性があるなら、一切食べないほうがいいのではないか?」と考える消費者も多いでしょう。しかし、食品添加物の安全性は「量」の概念なしには語れません。すべての物質は毒であり、毒でないものは存在しません。毒性を決定するのは摂取量です。これを管理するために設定されているのが、ADI(Acceptable Daily Intake:一日摂取許容量)という基準です。

     

    ADIは、動物実験で「無毒性量(NOAEL)」を求め、それに安全係数(通常は1/100)を掛けて算出されます。つまり、人間が一生涯毎日食べ続けても健康への悪影響がないとされる量の、さらに100分の1という非常に厳しい安全マージンを取った値です。

     

    • 亜硝酸ナトリウムのADI: 0.06 mg/kg体重/日(JECFAによる評価)
    • 食品衛生法の使用基準:
      • 食肉製品: 亜硝酸根として 0.070 g/kg(70ppm)以下
      • 魚肉ソーセージ: 0.050 g/kg(50ppm)以下

      実際の摂取量はどうでしょうか。厚生労働省などの調査によると、日本人の平均的な食生活における亜硝酸ナトリウムの摂取量は、ADIの数パーセント程度に留まっていることが分かっています。例えば、体重50kgの人がADIの上限に達するには、ハムを毎日数キログラム単位で食べ続ける必要がありますが、これは現実的な食事量ではありません。

       

      また、WHO(世界保健機関)とFAO(国連食糧農業機関)の合同食品添加物専門家会議(JECFA)の評価でも、「現在の摂取レベルにおいて、発色剤としての亜硝酸ナトリウムの摂取と発がんリスクとの間に関連があるという証拠はない」と結論付けられています。つまり、「ハムを食べるとがんになる」という短絡的な不安は、科学的な摂取量の観点からは過剰な心配である可能性が高いのです。

       

      ハムやソーセージの安全性とリスク評価に関するコープ京都の記事です。

       

      【食の安全・安心】ハム・ソーセージの安全性は? - KYOTO COOP

      発色剤の危険性:無添加食品のメリットと保存における食中毒のリスク

      近年、「無塩せき(むえんせき)」と呼ばれるハムやソーセージが人気を集めています。これは、発色剤を使用せずに製造された製品のことです。パッケージには「発色剤無添加」と大きく記載されていることが多く、健康志向の消費者に選ばれています。

       

      無塩せき製品のメリットは明確です。亜硝酸ナトリウムを意図的に添加していないため、ニトロソアミン生成のリスクに対する心理的な不安が解消されます。また、肉本来の自然な色(加熱された肉の色、つまり灰色や褐色に近い色)をしており、素材そのものの味を楽しめるという側面もあります。

       

      しかし、無塩せき製品にはデメリットやリスクも存在します。

       

      1. 賞味期限が短い: 発色剤による保存効果(抗菌作用)が得られないため、一般的な製品に比べて賞味期限が短く設定されています。
      2. 食中毒リスクの管理: ボツリヌス菌などの増殖を抑えるバリアが一つ減っているため、温度管理(要冷蔵)をより厳密に行う必要があります。開封後は速やかに消費しなければなりません。
      3. 色調の変化: 酸化による変色が早いため、見た目が悪くなりやすく、お弁当など時間が経ってから食べる用途では敬遠されることがあります。

      「無添加だから絶対に安全」とは言い切れません。保存料や発色剤を使わないということは、それだけ腐敗や食中毒のリスクに対して脆弱であるということを意味します。特に家庭での保存状況が悪ければ、添加物のリスクよりもはるかに高い確率で、細菌性の食中毒を引き起こす可能性があります。消費者は「添加物のリスク」と「食中毒のリスク」を天秤にかけ、自身のライフスタイル(買い物頻度や冷蔵庫の管理状況)に合わせて商品を選択する必要があります。

       

      発色剤の危険性:野菜に含まれる硝酸塩と農業における窒素肥料の影響

      多くの人が見落としている、しかし非常に重要な事実があります。それは、「人間が摂取している亜硝酸塩・硝酸塩の大部分は、加工肉からではなく、野菜から摂取されている」という事実です。

       

      植物は成長のために窒素を必要とします。農業において窒素肥料が施されると、植物は根から窒素を「硝酸塩(硝酸態窒素)」の形で吸収します。特に、ほうれん草、小松菜、春菊、レタスなどの葉物野菜には、比較的高濃度の硝酸塩が含まれています。

       

      人間が野菜を食べると、含まれていた硝酸塩は体内に吸収され、血液を通じて唾液腺に運ばれます。そして唾液として口の中に分泌される際、口腔内の細菌によって「亜硝酸塩」に還元(変換)されます。驚くべきことに、私たちが唾液を通じて飲み込んでいる亜硝酸塩の量は、ハムやソーセージなどの添加物から摂取する量の何倍、あるいは何十倍にもなると言われています。

       

      • 硝酸塩の循環: 肥料(窒素) → 野菜(硝酸塩) → 人間(摂取) → 唾液(亜硝酸塩に変換) → 胃(ニトロソアミン生成の可能性?)

      もし亜硝酸塩が絶対的な悪であるなら、野菜を食べることも危険だということになってしまいます。しかし、疫学調査において「野菜の摂取が多い人ほどガンのリスクが高い」という結果は出ておらず、むしろ野菜摂取は健康に良いとされています。これは、野菜にはビタミンCやポリフェノールなどの抗酸化物質が豊富に含まれており、これらがニトロソアミンの生成を抑制したり、発がんリスクを打ち消したりしているためだと考えられています。

       

      農業の現場では、過剰な窒素肥料の使用が野菜中の硝酸塩濃度を異常に高めることが問題視されています。色が濃すぎる緑色の葉物野菜は「窒素過多」の可能性があり、えぐみ(苦味)の原因にもなります。有機農業や適切な施肥管理によって、硝酸塩濃度を抑えた健康的な野菜作りが求められています。

       

      つまり、「発色剤=危険、野菜=安全」という単純な二元論ではなく、物質としての化学的な挙動と、それを摂取する際の食品全体のバランス(抗酸化物質の有無など)を総合的に見ることが不可欠なのです。

       

      野菜中の硝酸塩と農業、健康への影響に関する農林水産省の情報です。

       

      食品中の硝酸塩に関する基礎情報 - 農林水産省

       

       


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