弾丸暗渠とサブソイラで畑の排水と収量を改善する方法

弾丸暗渠とサブソイラを使った排水改善は、コストを抑えながら畑の湿害を解消できる注目の技術です。施工間隔・深さ・時期のポイントを知って、収量アップにつなげるには何が必要でしょうか?

弾丸暗渠とサブソイラで排水と土壌を改善する

あなたが「1回施工すれば数年は効果が続く」と思っているなら、土壌条件次第で2年以内に効果がゼロになることがあります。


🌾 この記事の3ポイント
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弾丸暗渠の効果は1〜3年で再施工が必要

代かきや踏圧で孔が閉塞するため、持続性は土壌条件によって大きく変わります。

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施工間隔は2〜3mが標準

排水不良ほ場では間隔が広すぎると効果が出ません。土質に応じた間隔設定が重要です。

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本暗渠との組み合わせが大前提

弾丸暗渠単独では排水しきれません。本暗渠に直交させて施工することで効果が最大化します。

弾丸暗渠とサブソイラの基本的なしくみ

弾丸暗渠とは、サブソイラの先端に取り付けた直径8〜10cmの弾丸型器具(モール)を地中に引いて、深さ30〜40cmの通水孔を作る工法です。 いわゆる「弾丸」という名前は、この砲弾形のモールの形状に由来しています。


参考)畑に低予算で暗渠ができる!サブソイラーでの弾丸暗渠のメリット…


サブソイラはトラクターに装着する作業機で、通常の耕うんでは届かない深さの心土(硬盤層)を破砕します。 弾丸(モール)を装着することで、心土破砕と同時に暗渠施工の2つの作業を1工程で完了できます。これは使えそうです。


参考)土づくり編(2) 心土破砕|土づくり編|農作業便利帖|みんな…


振動式サブソイラは中小型トラクターでも扱えるのが特長で、振動によって効率よく孔を掘り進めます。 一方、非振動式は大型トラクターの牽引力を活かして広範囲の硬盤破砕が可能です。作業スタイルや圃場規模に合わせて選択することが基本です。


参考)https://www.yanmar.com/jp/agri/agri_plus/soil/knowhow/03.html


弾丸暗渠の排水効果が持続しない本当の理由

「一度施工すれば何年も大丈夫」と思いがちですが、実は違います。研究によれば弾丸暗渠の効果持続性は1〜3年ごとの再施工が必要と言われており、土壌条件によっては2年ほどで効果が失われる例も報告されています。pref.miyagi+1
なぜ効果が落ちるのか、主な理由は2つあります。


  • 代かき作業による孔上部の亀裂閉塞(代かきを行うたびに孔周辺の心土が圧密される)
  • トラクターの踏圧による孔壁の崩壊(地耐力が不十分なほ場で起きやすい)

効果消失を防ぐ対策として注目されているのが「籾殻充填弾丸暗渠」です。 スリット部に籾殻を詰めることで、通常1〜2年で閉塞するところを3年間排水機能が持続したという新潟県の試験結果があります。籾殻は手に入りやすく追加コストも低いため、排水不良ほ場では検討する価値があります。


参考)https://www.pref.niigata.lg.jp/uploaded/attachment/216790.pdf


5年目の調査では増収効果が2〜7%にとどまるという報告もあります。 効果を維持するには定期的な再施工の計画が必要です。


参考)https://www.naro.go.jp/org/tarc/to-noken/DB/DATA/014/014-156.pdf


弾丸暗渠の施工間隔と深さの正しい設定

施工間隔の設定は排水効果を左右する最重要ポイントです。標準的な補助暗渠(弾丸暗渠)の間隔は約2〜3mとされています。 東京ドームのグラウンド(約13,000㎡)ほどの面積のほ場であれば、2m間隔で施工すると相当な本数の暗渠が必要になる計算です。ishikari.pref.hokkaido.lg+1
深さは40cm前後、硬盤層より高い位置に施工するのが基準です。 硬盤層より深く入れても水が流れる経路がつながらず、効果が出ません。深さは原則として硬盤層の直上を狙います。


参考)実践編 地表排水と地下排水|機械編|農作業便利帖|みんなの農…


施工間隔の目安は土質によって異なります。


土壌タイプ 推奨施工間隔 備考
砂質土・埴壌土 3〜5m 透水性が比較的高い
重粘土・グライ土 2〜3m 透水性が低く間隔を狭める必要あり
細粒強グライ土 2m以下 排水改善に密な施工が必要

また本暗渠に対して直交方向に7〜10m間隔でサブソイラ・弾丸暗渠を配置すると、表面の停滞水が効率よく排水されます。 向きと配置が条件です。


参考)https://www.town.iide.yamagata.jp/006/28gijutu09.pdf


弾丸暗渠の施工時期と失敗しないための注意点

施工の基本タイミングは大豆播種前が原則です。 ただし湿田で作業しにくい圃場や労働力が足りない場合は、前年の水稲収穫後に行っておく選択肢もあります。


参考)https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kihyo03/gityo/g_manual/pdf/1_7.pdf


施工日の土壌状態には特に注意が必要です。畑がぬかるんでいる日に施工すると、トラクターの自重で孔がつぶれてしまいます。 また、ぬかるみにはまって切り返しを繰り返すと、かえって土壌を締め固めてしまいます。乾いた日に行うのが原則です。


地表の水平レベルも見落としがちな注意点です。 地面が盛り上がっている箇所があると、その部分だけ暗渠も盛り上がり、排水されずに水が溜まります。施工前に圃場の凸凹を確認しておきましょう。


さらに浅層暗渠がすでに設置されているほ場では、サブソイラで既設暗渠を破損しないよう深さ管理が必要です。 既設の構造物がある圃場では設計図や施工記録を確認してから作業に入ることが大切です。


参考)https://www.pref.miyazaki.lg.jp/documents/72332/72332_20230227084820-1.pdf


弾丸暗渠×サブソイラを麦・大豆作に活かす実証データ

石川県のデータでは、サブソイラによる弾丸暗渠を施工したほ場の多くで麦の苗立向上・茎数確保・登熟向上などの効果が確認されています。 湿害による出芽不良が解消されることで、雑草の繁茂も抑制されるという副次効果もあります。


参考)http://www.is-ja.jp/nomi/eino/img/pdf/r05/r05_omugi_01.pdf


大豆作においても湛水解消時間が1日程度早まるという試験結果があります。 重粘土ほ場での新潟県の実証では、籾殻充填弾丸暗渠によって地下水位の低下量と暗渠排水率が大幅に向上しました。収量の安定化につながるということですね。


ただし穿孔暗渠を本暗渠と平行に施工した場合、暗渠同士の不連結や閉塞が起きやすく排水効果が小さいという愛知県の報告もあります。 本暗渠と直交させる配置が排水効果を最大化する鍵であることが、各地の実証データで裏付けられています。


参考)https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/542448.pdf


農林水産省が公開している「小型・中型トラクタによる弾丸暗渠施工技術」マニュアルには、圃場ごとの施工事例と手順が詳しく記載されています。施工前の参考資料として役立ちます。


農林水産省:小型・中型トラクタによる弾丸暗渠施工技術マニュアル(PDF)
宮崎県の農地排水対策検討手順書では、工法選定から施工手順・注意事項まで体系的にまとめられています。排水工法を比較検討する際に参考になります。


宮崎県:農地の排水対策検討手順書(PDF)

サブソイラと弾丸暗渠を使いこなす独自視点:再施工サイクルの「見える化」

多くの農業者が見落としているのが「再施工タイミングの判断基準」です。効果が落ちてきたと感じてから施工するのでは遅く、翌作の収量に直接影響します。


具体的な判断の目安として活用できるのが、降雨後の圃場観察です。降雨2〜3日後でも地表に水が残っている、または土がぬかるんだままであれば排水機能の低下サインです。 手順としては①降雨後48〜72時間で地表水の残存を確認、②残存があれば浸透能の簡易測定(内径30cm程度のシリンダで可)、③前回施工から1〜2年経過していれば再施工を計画する、という流れが合理的です。


参考)https://www.pref.iwate.jp/agri/_res/projects/project_agri/_page_/002/004/229/h11shidou_07.pdf


浸透能の測定に使えるシリンダや簡易測定キットは農業改良普及センターで貸し出しを行っている地域もあります。まずは地域の農業普及指導センターに問い合わせてみることをおすすめします。問い合わせ1件で的確な再施工時期がわかります。


また施工記録をスマートフォンのメモアプリやスプレッドシートで管理しておくと、「いつ、どの圃場に、何m間隔で施工したか」が一目でわかります。再施工の見落とし防止と、効果検証にも役立ちます。つまり記録管理が収量安定化の土台です。