遅効性肥料と緩効性肥料の効果と違い

遅効性肥料と緩効性肥料は、どちらも「長く効く」肥料として扱われがちですが、効き始めるタイミングや、設計思想(溶け方・分解のされ方)が違います。元肥・追肥の判断を迷わずに決めるには、何を基準に選べばよいのでしょうか?

遅効性肥料と緩効性肥料

遅効性肥料と緩効性肥料の要点
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違いは「効き始め」

緩効性肥料は施肥直後から効き始めつつ長く続き、遅効性肥料は分解・反応が進んでから効き始めます。

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温度・地温でズレる

被覆尿素などは地温の影響で溶出速度が変わり、設計日数は「25℃で80%溶出」など条件付きの目安です。

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環境と流出も論点

被覆肥料は肥料成分の無駄を減らせる一方、被膜殻が流出する懸念があり、ほ場での流出防止が求められています。

遅効性肥料と緩効性肥料の違い


遅効性肥料と緩効性肥料は、どちらも「持続」する系統ですが、いちばん大きい違いは“効き始めるまでの時間”です。
緩効性肥料は「施肥したときから効き始め、少しずつ溶け出して長期間効果が持続する」タイプで、元肥にも追肥にも使える設計です。https://www.noukaweb.com/fertilizer-effect-type/
一方で遅効性肥料は「施肥したときには作物が吸収できない」タイプで、微生物分解などを経て吸収可能になってから効き始めるため、基本的に元肥向きとして整理されます。https://www.noukaweb.com/fertilizer-effect-type/
農業現場では、この“効き始め”の差が、施肥設計の失敗を生みます。


  • 例:初期から窒素が必要な作型で、遅効性肥料に寄せすぎると初期の立ち上がりが鈍りやすい
  • 例:逆に、緩効性肥料を「遅効性のつもり」で多めに入れると、初期に効きすぎて徒長・軟弱化や過繁茂のリスクを上げる

さらに注意点として、緩効性肥料という言葉は“すべての成分が均一に長く効く”ことを必ずしも意味しません。緩効性肥料は「三要素が平均して続くタイプ」と「特定成分だけが長く続くタイプ」があるため、ラベルや設計(何が緩効化されているか)を確認するのが実務上の近道です。
https://www.sc-engei.co.jp/qa/category3/5/

遅効性肥料と緩効性肥料の元肥と追肥

元肥・追肥の使い分けは、「作物の吸収ピークに肥効カーブを合わせる」発想で整理すると判断が速くなります。
緩効性肥料は元肥にも追肥にも使えるとされ、施肥直後から効きつつ持続するため、追肥回数の削減や施肥作業の平準化に向きます。https://www.noukaweb.com/fertilizer-effect-type/
遅効性肥料は“今すぐ効かない”前提なので、播種定植前後の元肥として「あとで効かせる」設計に向きます。https://www.noukaweb.com/fertilizer-effect-type/
ここで、現場でよく起きる誤解を1つ挙げます。


「緩効性=一発で最後までOK」という理解は危険で、作型が長いほど途中の天候・潅水土壌条件でズレが出ます。


  • 雨が多い時期:表層の溶脱・流亡や、根域の酸素不足で吸収効率が落ち、“効いているのに吸えていない”状態が起きる
  • 乾燥が強い時期:溶出が進みにくく、“肥料はあるのに出てこない”状態が起きる

つまり、元肥で緩効性肥料・遅効性肥料を使うほど、「途中の生育診断(葉色・草勢・茎葉の硬さ)」で微調整する視点が重要になります。


遅効性肥料と緩効性肥料の被覆肥料

緩効性肥料の代表格として、表面を樹脂などで被覆して溶け出しを制御する「被覆複合肥料(被覆肥料)」があります。https://www.sc-engei.co.jp/qa/category3/5/
被覆肥料は“被膜の設計”で溶出期間をコントロールでき、成分がバランスよく溶け出すと説明されています。https://www.sc-engei.co.jp/qa/category3/5/
ただし、被覆肥料の設計表示を「日数=そのまま現場日数」と受け取るとズレます。


農研機構系の公開ツールでは、銘柄名の「L」は緩効型(直線型)、「S」は遅効型(S字型)を表し、続く数字は“標準温度25℃で80%溶出にかかる日数”の意味だと明示されています。
https://soil-inventory.rad.naro.go.jp/main/fertilizer/exp
この説明は、現場的には「同じL50でも、地温が低い時期は伸び、高温なら縮む」ことを示唆します(表示はあくまで条件付きの基準)。
https://soil-inventory.rad.naro.go.jp/main/fertilizer/exp
意外に知られていない実務的なポイントは、「同じ被覆尿素でも“溶出カーブの形”が違う」点です。


  • L(直線型):ある程度コンスタントに出る前提
  • S(シグモイド型):序盤は抑えて、中盤以降に出やすい前提

    この違いは、分げつ・着果・肥大など“ピークが中盤以降”の設計に直結するため、品目だけでなく作期(気温帯)とセットで選ぶのが合理的です。
    https://soil-inventory.rad.naro.go.jp/main/fertilizer/exp

参考:地温を用いた被覆尿素の窒素溶出量の計算(L/Sの意味、25℃で80%溶出日数の定義、入力方法の考え方)
https://soil-inventory.rad.naro.go.jp/main/fertilizer/exp

遅効性肥料と緩効性肥料の温度と溶出

遅効性肥料と緩効性肥料は、カタログ上は“持続期間”が書かれていても、実際は温度と水分で肥効が大きく動きます。
被覆尿素の溶出推定では、地点の地温(5cm)の日平均値(30年平均値)を用いて計算する、と明確に示されています。https://soil-inventory.rad.naro.go.jp/main/fertilizer/exp
つまり、同じ施肥設計でも、地域差(地温の平年差)と年次差(その年の気温・地温)が出るのは自然なことです。https://soil-inventory.rad.naro.go.jp/main/fertilizer/exp
ここで「現場の調整レバー」を整理します。


  • 施肥時期:同じ銘柄でも、低温期に早めに入れるか、高温期に遅らせるかでズレ幅が変わる
  • 混用設計:直線型(L)とS字型(S)を組み合わせ、ピークを広げる(ただし過剰は禁物)
  • 施肥位置:条施・全層・側条などで根域到達が変わり、“溶出したのに吸えない”を減らせる

そしてもう1つ、独自視点として強調したいのは「遅効性=安全」と決めつけないことです。


遅効性肥料は微生物分解を経ることが多く、土壌の微生物活性が落ちる条件(低温、過湿、酸素不足、極端なpHなど)では、狙ったタイミングで立ち上がらないことがあります(“効かない”のではなく“遅れ過ぎる”)。
https://www.noukaweb.com/fertilizer-effect-type/
このズレを防ぐ実務は、遅効性に寄せるほど「初期は少量の速効性(あるいは緩効性)を添えて保険をかける」発想で、肥効曲線を作物側に寄せることです。
https://www.noukaweb.com/fertilizer-effect-type/

遅効性肥料と緩効性肥料の被膜殻と流出

検索上位の“使い分け”記事では触れられにくい一方で、近年の実務論点として重要なのが、被覆肥料の「被膜殻(抜け殻)」問題です。
農林水産省は、プラスチックを使用した被覆肥料について、肥料成分が溶出した後の被膜殻が河川などを通じて海洋へ流出するおそれがあるとして、流出防止の情報を整理しています。https://www.maff.go.jp/j/seisan/sien/sizai/s_hiryo/hihuku_hiryo_taisaku.html
同ページでは、被覆肥料は作物の生育に応じて肥料成分が溶け出すため無駄が少なく、投入量削減や水域への栄養分流出抑制など環境負荷低減が期待できる一方、被膜殻の流出による環境影響が懸念される、と利点と課題を併記しています。https://www.maff.go.jp/j/seisan/sien/sizai/s_hiryo/hihuku_hiryo_taisaku.html
農業従事者として現場でできる対策は、「製品選択」だけでなく「ほ場外へ出さない運用」です。


  • 水管理・排水の工夫:降雨直後や落水時に殻が流れやすい条件を作らない
  • ほ場周りの物理対策:排水口側で回収しやすい仕組みを作る
  • 施肥方法の見直し:表層に残りやすい散布を避け、必要に応じて土中に位置づける

参考:被覆肥料のメリットと、被膜殻の流出懸念、流出防止の考え方(行政情報)
https://www.maff.go.jp/j/seisan/sien/sizai/s_hiryo/hihuku_hiryo_taisaku.html




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