ビニルアルコール(CH2=CHOH)は、構造としては「二重結合(C=C)にOHが直結したエノール」そのものです。ところが多くのエノールは、より安定なカルボニル化合物(C=O)へ移り変わりやすく、この可逆変換が「ケト-エノール互変異性」です。実務的には、この互変異性の平衡がケト型(この場合はアセトアルデヒド)に大きく偏るため、ビニルアルコールを“単離して保管できる物質”として扱いにくい、という話になります。
ここで重要なのは、「不安定=すぐ反応して消える」というより、「熱力学的にアセトアルデヒド側が有利で、平衡としてそちらに寄る」という点です。Wikipediaの記述でも、ビニルアルコールとアセトアルデヒドの平衡がアセトアルデヒド側へ大きく偏るため、“ビニルアルコールを物質として扱うことはできない”という趣旨が明記されています。
参考)ビニルアルコール - Wikipedia
なお、同じ“エノール”でも例外的にエノール側が有利になる系があります。代表例は、芳香環と共鳴できる場合や、分子内水素結合でエノールが安定化される場合で、これは「エノールは常に不安定」という暗記を崩すポイントです。逆に言えば、ビニルアルコールはその手の安定化を受けにくい構造なので、アセトアルデヒドへ寄りやすい、と理解すると腹落ちします。
互変異性の核心は「プロトン(H+)の移動」と「二重結合位置の組み替え」で、酸や塩基があると一般に進みやすくなります。酸性条件ではカルボニル酸素のプロトン化などを経由し、塩基性条件ではエノラート(脱プロトン化体)を経由しやすい、という“教科書的な道筋”が知られています。
ビニルアルコールの場合も、プロトンが動ける環境があると、電子の流れとして「C=Cがほどける→C=Oができる」方向へ進み、結果としてアセトアルデヒドへ移ります。ポイントは、C=O結合がエネルギー的に有利(安定)になりやすいので、最終的にケト型へ寄ることです。高校~基礎有機で「エノールは不安定でケトが安定」と言われる部分は、ここを指しています。
意外と知られていない補足として、気相(大気)では“触媒がないと”互変異性が遅い場合がある、という研究もあります。たとえば大気化学の文脈では、ビニルアルコール→アセトアルデヒドへの変換が、特定の触媒(例:ギ酸など)でどう変わるかが議論され、再評価で「想定より遅い」と結論されるなど、速度論(どれくらいの速さで起きるか)が条件依存で揺れます。
参考)https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.jpclett.5b01787
つまり、「なぜアセトアルデヒドになるのか?」は熱力学(平衡の向き)の話が中心ですが、「どれくらいの時間でそうなるか?」は、水・酸・塩基・微量酸(有機酸)などの環境因子で大きく変わり得る、という二層構造で理解すると強いです。
農業の現場でも見かけるPVA(ポリビニルアルコール)は、名称だけ見ると「ビニルアルコールを重合したもの」に見えます。ところが、そもそもビニルアルコールのモノマーが実質的に存在しない(互変異性でアセトアルデヒドに寄る)ため、PVAは通常「酢酸ビニルを重合→ポリ酢酸ビニル→けん化でPVA」という手順で作られます。
この“回り道”が、化学を現場目線に落とし込むと意外に重要です。たとえば「PVAは水に溶ける/溶けない」や「資材としての溶出・分解の感触」が話題になるとき、起点がビニルアルコールではなく酢酸ビニル系であることを知っていると、添加剤や残留物の議論で迷子になりにくいからです。東京農工大の解説でも、ビニルアルコールモノマーが存在しないためPVAはPVAcを合成してからケン化する、と明確に書かれています。
参考)https://web.tuat.ac.jp/~oginolab/japanese/essay/20180902/20180902.html
さらに、PVA系材料は「水に溶ける」という性質が現場で利点にも欠点にもなります。利点は水系で扱える(有機溶媒を避けやすい)こと、欠点は高湿度・結露環境だと意図せず物性が変わる可能性があることです。こうした材料選定の判断に、互変異性そのものは直接は出てこないようでいて、“そもそもの化学的出自”として背景知識になります。
アセトアルデヒドは刺激臭のあるアルデヒドとして知られ、作業環境では「換気」「密閉」「吸い込み回避」が基本になります(特に濃厚な蒸気に触れる状況は避けたい)。農業そのものの化学反応としてビニルアルコールを扱う機会は多くありませんが、資材・接着・フィルム・樹脂・溶剤・分解生成物など“周辺”でアルデヒド類に触れる可能性はゼロではありません。
また、農薬分野でも「アセトアルデヒド」が代謝・分解の途中で言及される例があります。たとえばナメクジ等の防除に使われるメタアルデヒドは、体内でアセトアルデヒドに分解されることが評価資料に記載されています。ここで重要なのは、農家がアセトアルデヒドそのものを撒くという話ではなく、“化学物質の分解先として出てくることがある”という理解です。
参考)https://www.env.go.jp/council/10dojo/y104-06/ref05.pdf
独自視点として押さえておきたいのは、「なぜ」を突き詰めると、匂いや刺激の有無だけでなく、“水がある環境でプロトン移動が起きやすい”という化学の性質が、材料の劣化や変質の議論の土台になる点です。湿度が高い圃場周辺、液剤を扱う場所、洗浄水が多い作業動線では、微量の酸・塩基や金属塩も共存しやすく、結果として「反応が進む条件」が揃いやすいことがあります。こうした観点は、検索上位の受験化学的な説明だけでは出てきにくい“現場寄りの落とし込み”です。
参考)https://sekatsu-kagaku.sub.jp/organic-reaction-mechanisim3.htm
参考:ビニルアルコールが物質として扱いにくい理由(不安定性、互変異性、PVA製造の前提)
ビニルアルコール - Wikipedia
参考:PVAの教育的ポイント(「ビニルアルコールモノマーが存在しない」ことを含む背景説明)
https://web.tuat.ac.jp/~oginolab/japanese/essay/20180902/20180902.html
参考:メタアルデヒド評価資料(代謝でアセトアルデヒドに分解される記述)
https://www.env.go.jp/council/10dojo/y104-06/ref05.pdf

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