青虫の防除で最初に固めるべきは、「何を使うか」より「その農薬をその野菜にその条件で使ってよいか」です。農薬は登録されていないものは使用できず、登録されていても「使用できる作物」「使用できる時期」「使用してよい量」などの使用基準が定められており、基準以外の方法で使用してはいけません。
ここを曖昧にしたまま散布すると、青虫が減らない以前に「適正使用」の前提が崩れ、後工程(出荷・記録・説明)で取り返しがつかなくなります。
使用基準の読み取りで、現場で特に落とし穴になりやすいのは次の5点です。
「適用作物以外に使用しない」「定められた使用量を超えて使用しない」「定められた使用時期以外の時期に使用しない」「総使用回数を超えて使用しない」などは、現場向けに“守るべき基準”として繰り返し注意喚起されている項目です。
作業のたびに全文を読み直すのは現実的ではないので、ラベル(または登録票)を見ながら、圃場で使う候補を「作物×害虫×時期」で固定し、そこから薬剤を選ぶ順にするとミスが激減します。
参考:農薬の登録と使用基準(適用作物・使用時期・使用量など)の考え方
農林水産省:農薬コーナー
青虫対策の散布計画で、実務的に一番効くのは「収穫前日数」と「使用時期」を先に決めることです。収穫前日数は“使用から収穫までの必要日数”で、安全に収穫する観点で設定されています。
一方で残効期間は“効力が続く期間”であり、収穫前日数と残効期間は同じ意味ではありません。ここを混同すると、「まだ効いているはず」「そろそろ切れているはず」という感覚だけで判断してしまい、散布の間隔や収穫タイミングがブレます。
現場での実装としては、次のように“日付で管理”すると事故が減ります。
特に青虫は、食害が見えてから慌てて散布しがちです。しかし収穫が近い野菜ほど、最終散布可能日を過ぎた時点で選択肢が急に狭くなります。だからこそ「青虫がいる」ではなく「青虫が増える前に、収穫前日数の枠内で打てる設計」にしておくと、結果として農薬の総量も減りやすくなります。
参考:収穫前日数と残効期間の違い(言葉の定義を整理したいとき)
営農知恵袋:収穫前日数と残効期間は同じものですか?
青虫(チョウ目害虫)対策で、BT剤は「作用のクセ」を理解して使うと強い選択肢になります。BT剤は土壌中の細菌が作り出す結晶タンパク質で、消化機能がアルカリ性のチョウ目害虫が対象とされています。
特徴として、数時間で効果が表れ、食べた害虫は食害をやめる一方、死亡まで数日かかるとされています。ここが意外と重要で、「死んでいない=効いていない」と誤判定しやすいポイントです。
BT剤を“青虫の野菜”で活かすなら、観察の評価軸を変えるのがコツです。
この3段階で見ると、BT剤の「時間差」を織り込んだ判断ができます。
また、青虫は若齢ほど薬剤が当たりやすいことが多いので、「小さいうちに当てる」運用とBT剤の相性はよく、圃場の巡回頻度そのものが防除の成否を左右します。
参考:BT剤の対象(チョウ目害虫)と“食害停止は早いが死亡は遅い”という特性
園芸通信:農薬の成分は何でできているの?(BT剤の特徴)
散布の失敗は、青虫の強さよりも「使用量・希釈・到達」のミスで起きることが多いです。農薬の適正使用では、適用作物、使用量、希釈倍数、使用時期、総使用回数などの遵守が重要だと整理されています。
つまり、同じ薬剤でも“当たり方”と“ルールの守り方”が整っていないと、結果が不安定になります。
実務で再現性を上げるためのチェックポイントは次です。
「青虫が減らない」相談のうち、意外と多いのが“希釈は合っているが散布ムラがある”ケースです。葉の表だけが濡れていて裏が乾いている、株元だけが濡れて上部が乾いている、風で流れて畝の片側だけ濡れている、などが典型です。
この場合、薬剤の変更より先に、ノズル・歩行速度・圧・水量の見直しで改善することがあります。
参考:適正使用としての遵守事項(適用作物、使用量、希釈、使用時期、総使用回数、使用記録など)
J-STAGE:農薬情報の伝達(適正使用の遵守事項の整理)
検索上位では「おすすめ農薬」や「家庭菜園向け対策」に寄りがちですが、プロ現場で効く独自視点は“ラベルの意味を分解して、作業手順に落とす”ことです。特に「使用時期」「総使用回数」は、単なる行政ルールではなく、摂取許容量や急性参照用量、作物残留量などの考え方を踏まえて決められている、という説明があります。
ここを知っていると、ラベルの数字を「守らされている制約」ではなく「設計された安全枠」として扱えるようになり、現場の判断が落ち着きます。
さらに意外と見落とされがちなのが、「残留基準は農作物ごとに設定され、同じ農薬でも作物ごとに基準値が異なる」という点です。また、残留基準が設定されない農作物には一律基準(0.01ppm)が適用され、それを超える食品の流通が禁止される仕組みも示されています。
つまり、青虫の防除で“野菜なら同じ”と考えるのは危険で、同じ薬剤でも作物が変われば前提が変わる可能性がある、ということです。
この視点を作業に落とすための、現場用の簡易ルールを置いておきます。
参考:ラベル項目(使用時期・総使用回数)がどう決められるかの考え方
園芸通信:農薬のラベルを見よう!(使用時期、総使用回数)
参考:残留基準が作物ごとに異なること、一律基準(0.01ppm)の仕組み
厚生労働省資料:残留基準の設定方法(一律基準0.01ppm等)

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