植物種子等郵便物がなぜ届く?中国の謎の種と危険な理由

注文していない植物種子等郵便物がなぜ届くのか、その目的や危険性を解説します。中国からの謎の種の正体や、誤って受け取った際の正しい処分方法とは?植物防疫法違反になるリスクも知っていますか?
植物種子等郵便物の謎と対策
📦
なぜ届く?

ブラッシング詐欺の可能性大。安価な種で配送実績を作る手口です。

⚠️
危険性は?

外来種や病害虫のリスクがあり、植えたり捨てたりするのは厳禁です。

📞
対処法は?

開封せず、最寄りの植物防疫所に連絡・相談することが重要です。

植物種子等郵便物はなぜ

植物種子等郵便物が届く理由は中国の謎の種や詐欺


見覚えのない植物種子等郵便物が突然ポストに届くケースが後を絶ちません。多くの人が「なぜ自分に?」と不安に感じますが、これには主にインターネット通販に関連した明確な理由が存在します。


最も可能性が高いのは「ブラッシング詐欺(Brushing Scam)」と呼ばれる手法です。これは、海外の悪質な業者がECサイト(Amazonや楽天など)での検索ランキングを不正に上げるために行う行為です。ECサイトのアルゴリズムは、販売実績や配送実績が多い商品を「人気商品」として上位に表示する傾向があります。そのため、業者は注文されていない商品を勝手に送りつけ、配送完了の記録を作ることで、架空の販売実績を積み上げようとするのです。


では、なぜ「種」なのでしょうか。理由は非常に合理的かつ身勝手なものです。


  • 重量が軽い: 種子は非常に軽量であるため、国際郵便の送料を最低限に抑えることができます。
  • 原価が安い: 宝石や電子機器を送りつけるコストはかけられませんが、質の悪い種子ならほとんどタダ同然で調達できます。
  • 非課税・規制の網: 書類や少額の物品として偽装しやすく、税関をすり抜けやすい(実際には違法ですが)と考えられているためです。

過去には、2020年頃にアメリカや日本を含む世界中で、中国郵政(China Post)のラベルが貼られた謎の種子が大量に送りつけられる事件が発生しました。ラベルには「宝石」や「おもちゃ」と虚偽の内容品が記載されていることが多く、開封して初めて種だと気づくケースが大半です。これらの種は、受け取った人の個人情報が何らかの形で流出していることを示唆しており、単なる誤配送ではありません。自分の住所や氏名が、詐欺業者の「配送先リスト」に載ってしまっている可能性が高いのです。


また、ごく稀にですが、知人が善意で送ってくれたものが、正しい検疫手続きを経ていないために不審物として扱われるケースや、自身が過去に海外サイトで注文し忘れていたものが忘れた頃に届くケースもあります。しかし、ラベルの依頼主が不明瞭であったり、中国語や英語で書かれた見知らぬ住所である場合は、ほぼ間違いなくブラッシング詐欺の一環であると考えて対処する必要があります。


植物種子等郵便物の危険性と植物防疫所の検査ルール

「ただの種なら、庭に植えて花が咲けばラッキーではないか」と考えるのは非常に危険です。海外から送られてくる検査を受けていない種子には、日本の農業や生態系を壊滅させるかもしれない深刻なリスクが潜んでいます。


植物防疫法という法律では、海外から植物を日本に持ち込む際に厳しいルールを定めています。これは、日本国内には存在しない病害虫や、繁殖力の強い外来種が侵入するのを防ぐためです。正規の手続きを経て輸入される植物種子等郵便物には、必ず植物防疫官による検査が行われ、合格したものには外装に「植物検査合格証印(通称:合格スタンプ)」が押されます。


逆に言えば、この合格スタンプがない植物種子等郵便物は、すべて「植物防疫法違反」の違法な郵便物ということになります。これらを受け取ったり、植えたりすることには以下のような具体的な危険性があります。


  • 未知の病害虫の付着: 種子の表面や内部に、目に見えないウイルス、細菌、カビ、あるいは微細な害虫(センチュウなど)が付着している可能性があります。これらが国内の農作物に広がれば、日本の農業は大打撃を受けます。
  • 侵略的外来種のリスク: 送られてきた種が、日本では「雑草」として扱われる繁殖力の強い植物である可能性があります。これらが一度根付いてしまうと、在来の植物を駆逐し、地域の生態系を不可逆的に破壊してしまいます。
  • 法的な罰則: 輸入検査を受けずに植物を輸入することは犯罪です。近年の法改正により罰則が強化されており、違反した場合には「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」が科される可能性があります(法人の場合は最大1億円)。

植物防疫所は、こうしたリスクを水際で防ぐための「砦」です。しかし、郵便物の量は膨大であり、ラベルを偽装された郵便物をすべてチェックすることは物理的に困難です。そのため、受取人である私たちが「合格スタンプのない種子は危険物である」という正しい認識を持ち、絶対に安易に扱わないことが求められています。


海外から届いた種子が適法なものかどうかを見分けるには、外装を確認してください。


農林水産省 植物防疫所が公開している「植物検査合格証印」の見本を確認することで、手元の郵便物が安全かどうかの判断材料になります。


植物を海外から日本へ持ち込む場合の規制:植物防疫所

植物種子等郵便物の処分と連絡はどうする?

もし、注文していない植物種子等郵便物が届いてしまった場合、どのように対処すればよいのでしょうか。最もやってはいけないことは「そのまま家庭ごみとして捨てること」と「興味本位で植えること」の2つです。


正しい対処フローは以下の通りです。


  1. 開封しない:

    もし外装から中身が種だと推測できる場合、あるいは開封して種だと分かった時点で、それ以上いじらないでください。ビニール袋に入っている場合は、その袋を開けてはいけません。胞子や微細な害虫が飛散する恐れがあります。


  2. 植物防疫所へ連絡する:

    最寄りの植物防疫所に電話で相談してください。全国の主要な港や空港に事務所があります。「注文していない種が届いた」と伝えれば、専門家が適切な指示をくれます。


  3. 指示に従って送付または廃棄:

    多くの場合、植物防疫所へ現物を送付して調査してもらうか、指示に基づいて適切に処分することになります。


ここで注意したいのが「処分の方法」です。家庭のゴミ箱にそのまま捨てると、ゴミ収集車の中で袋が破れ、種がこぼれ落ちる可能性があります。あるいは、埋立地で発芽し、そこで繁殖してしまうリスクもあります。


また、2020年頃の事例では、郵便局の窓口に「受取拒否」として持ち込む方法も案内されました。未開封の郵便物であれば、受取拒否をすることで差出人に返送(または郵便局で廃棄処理)してもらうことが可能です。しかし、開封してしまった後では受取拒否はできません。その場合は、やはり植物防疫所の指示を仰ぐのが確実です。


「面倒だから熱湯をかけて捨てればいいだろう」という自己判断も推奨されません。種によっては極めて硬い殻を持っており、熱湯程度では死滅しない場合があるからです。また、種に付着しているウイルスによっては熱に強いタイプも存在します。プロである植物防疫官の指示に従うことが、日本の自然を守るための唯一の正解です。


各地の植物防疫所の連絡先は以下のリンクから探すことができます。


相談窓口は全国に配置されており、電話での問い合わせに対応しています。


植物防疫所 アクセス・お問い合わせ窓口一覧

植物種子等郵便物はなぜ送料が安いの?第四種郵便物の秘密

ここまでは「怪しい種」について解説してきましたが、「植物種子等郵便物」という言葉自体は、本来日本の郵便制度における正規のサービス名称です。なぜこのような区分が存在し、なぜ送料が安く設定されているのか、その背景を知っておくことも重要です。


日本では、郵便法によって郵便物が第一種から第四種まで分類されています。


  • 第一種: 手紙(定形・定形外郵便物)
  • 第二種: はがき
  • 第三種: 定期刊行物(新聞や雑誌など、承認を受けたもの)
  • 第四種: 通信教育用、点字郵便物、そして「植物種子等郵便物」など

この「第四種郵便物」に植物種子が含まれている理由は、日本の農業振興と深い関わりがあります。明治時代、郵便制度が整い始めた頃、農作物の種や苗を遠隔地の農家へ安価に届けることは、国の食料生産を支える上で極めて重要なインフラでした。その名残と理念が現在も続いており、「農産種苗の流通を円滑にし、農業の発展に寄与する」という公益的な目的のために、特例として安い送料(格安料金)が適用されています。


第四種郵便物として送れるものは厳格に決められています。


  • 植物の種子
  • 苗、苗木
  • 茎、根(栽植の用に供するもの)
  • 蚕種(カイコの卵)

つまり、「栽培すること」を目的とした植物に限られます。観賞用のドライフラワーや、食用の野菜そのものを送ることはできません。また、第四種郵便物として送る際は、中身が確認できるように封筒の一部を切り取るか、透明な部分を作る必要があります。これは、不正な利用を防ぐためのルールです。


フリマアプリ(メルカリなど)で植物の種や小さな苗が安く売られているのをよく見かけますが、その多くはこの「第四種郵便物」を利用して発送されています。送料が72円(重量による)からと非常に安いため、個人間の植物取引には欠かせない配送方法となっています。このように、本来は日本の農業と園芸文化を支える素晴らしい制度なのですが、その名称が悪質な海外業者によって「中身の分からない不審物」のラベルとして悪用されているのが現状です。


植物種子等郵便物の生態系への悪影響と未知の病原菌

最後に、少し視点を変えて、なぜこれほどまでに「謎の種」を恐れなければならないのか、生物学的な視点から深掘りしてみましょう。単に「外来種が増える」というレベルを超えた、目に見えない脅威が存在するからです。


植物検疫を経ていない種子が持ち込む最大のリスクは、種子そのものよりも、それに付着している「微生物」にあります。


正規のルートで輸入される種子は、輸出国での栽培段階から病気の管理が行われ、輸出時にも消毒や検査が行われます。しかし、ブラッシング詐欺で送られてくる種子は、衛生管理が全くなされていない場所で採取された可能性が高いものです。


  • カビ毒(マイコトキシン):

    種子の表面には、猛毒を産生するカビ類が付着していることがあります。これらが土壌中で繁殖すると、その土で育つ他の植物にも感染し、土壌そのものを「汚染」してしまいます。一度汚染された土壌を浄化するのは極めて困難で、家庭菜園プランターの土を捨てた場所から汚染が広がることもあり得ます。


  • 植物ウイルス

    植物に感染するウイルス(例えばトバモウイルス属など)は、種子の内部に潜んでいることが多く、表面の消毒だけでは除去できない場合があります。発芽した植物がウイルスに感染していると、アブラムシなどの昆虫を媒介して、近隣の農作物にあっという間に広がります。特定の作物にとって致死的なウイルスであれば、地域の農業は壊滅します。


  • 土壌センチュウ:

    目に見えない微小な虫であるセンチュウ類も、種子や混入した微量の土に紛れて移動します。これらは根に寄生し、植物の養分を吸い取ります。センチュウの中には、一度侵入すると数十年は消えない種類もいます。


「たかが一粒の種」と思うかもしれませんが、生態系というのは微妙なバランスで成り立っています。進化の歴史の中で出会うことのなかった病原菌が突然持ち込まれると、在来の植物には抵抗力が全くなく、パンデミック(感染爆発)を引き起こす可能性があります。


私たちが守るべきは、自分の庭の美観だけではありません。日本の豊かな自然と、安全な食料生産の基盤を守るために、怪しい植物種子等郵便物は「生物化学的な危険物」であるという認識を持つことが大切です。安易な開封や植栽は、未来の環境に対する破壊行為になり得るのです。




ウクレレ園芸SHOP ★子持ち高菜★ 種子 0.2㎖330円 アジア野菜の種 つぼみな・祝蕾・児菜の種 家庭菜園 観葉植物 野菜の種 vegetable seeds (1袋0.2ml(約100粒))