室内で楽しむ観葉植物として、シダ植物はその美しい葉の形状と耐陰性の高さから非常に人気があります 。ここでは、特に有名でインテリアとしても評価の高い種類を厳選して紹介します。
参考)【プロが選ぶ】神秘的な美しさ! 育てたい魅力あるシダ“マスト…
NHK出版 みんなの趣味の園芸:アジアンタムの育て方と詳細情報
参考リンク:NHK出版によるアジアンタムの基本データ、栽培カレンダー、主な品種解説など、信頼性の高い栽培情報が網羅されています。
シダ植物は室内だけでなく、庭のシェードガーデン(日陰の庭)を彩る植物としても優秀です 。直射日光が当たらない建物の北側や、樹木の下草として、独特の質感と涼しげな雰囲気を提供してくれます。
| 品種名 | 特徴と庭での活用法 | 耐寒性 |
|---|---|---|
| クサソテツ(Matteuccia struthiopteris) | 別名コゴミとしても知られる大型のシダです 。春に渦巻き状の新芽を展開し、鮮やかな緑色の葉を漏斗状に広げます。非常に丈夫で、和風庭園だけでなく洋風のガーデンにもマッチします。地下茎で増えるため、グランドカバーとしても利用可能ですが、広がりすぎる場合は根域制限が必要です。 | 強 |
| ニシキシダ(Athyrium niponicum 'Pictum') (ジャパニーズ・ペインテッド・ファーン) |
葉に銀白色や紫色の斑が入る美しい品種で、海外のガーデナーから「Japanese Painted Fern」として絶大な人気を誇ります。暗くなりがちな日陰の庭を明るく照らすような色彩効果があり、ホスタ(ギボウシ)やヒューケラとの混植相性が抜群です。日本原産のため気候に合っており、放置しても育つほど強健です。 | 強 |
| ベニシダ(Dryopteris erythrosora) | 新芽が赤褐色に染まることからその名が付きました。成長すると緑色に変化しますが、春の芽出しの時期の色彩変化は非常に美しいものです。常緑性であるため、冬の庭でも緑を保ちたい場合に重宝します。乾燥した場所でも比較的育ちやすく、石組みの隙間や生垣の下などに適しています。 | 中~強 |
| オニヤブソテツ(Cyrtomium falcatum) | 分厚く光沢のある濃い緑色の葉が特徴で、革質で硬い質感を持っています。海岸近くの崖などにも自生するほど潮風や乾燥に強く、非常にタフなシダ植物です。和風の庭園でよく見られますが、その幾何学的な葉の並びはモダンなコンクリート打ちっぱなしの空間などにも意外とマッチします。 | 強 |
GardenStory:プロが選ぶ育てたい魅力あるシダ植物図鑑
参考リンク:ガーデンデザイナーなどのプロが推奨する、庭づくりに役立つシダ植物の具体的な品種と、他の植物との合わせ方が解説されています。
シダ植物を枯らさずに美しく育てるためには、彼らが自生している「森林の樹冠下」や「湿った岩場」の環境を再現することが鍵となります。多くの初心者が失敗する原因は「湿度不足」と「日照管理」にあります 。
シダ植物と聞くと観賞用のイメージが強いですが、日本には古来より食用として親しまれてきた種類が存在します 。スーパーで「山菜」として売られているものの多くが、実はシダ植物の新芽なのです。ただし、食用にする際には毒性への理解と適切な下処理が不可欠です。
参考)http://www2.kobe-c.ed.jp/shizen/shida/shida/03126.html
最も有名な食用シダの一つですが、実は生食は厳禁です。ワラビには「プタキロサイド」という発がん性物質が含まれており、またビタミンB1を破壊する「アノイリナーゼ」という酵素も持っています 。しかし、重曹や木灰を使った伝統的な「あく抜き」処理を行うことで、これらの毒性成分を無毒化・除去し、美味しく食べることができます。根茎から取れるデンプンは「わらび餅」の原料となりますが、本蕨粉は非常に貴重で高価です。
ゼンマイ科のシダで、綿毛に覆われた新芽を採取します。ワラビと同様に強いアクがあるため、重曹や灰でのあく抜きに加え、天日で乾燥させて揉み込む工程を経て「干しゼンマイ」として保存食にされます 。乾燥と揉み込みを繰り返すことで繊維が柔らかくなり、煮物などに適した独特の歯ごたえが生まれます。ナムルの材料としても有名です。
観賞用としても紹介したクサソテツの若芽は「コゴミ」と呼ばれ、山菜の中でも特に人気があります。その理由は、ワラビやゼンマイと違ってアクがほとんどないため、下処理なしで天ぷらやお浸しにして食べられる手軽さにあります 。クセが少なく、マヨネーズ和えやパスタの具材としても優秀で、現代の食卓に取り入れやすい「美味しいシダ」の代表格です。
スギナ(トクサ科)も広義のシダ植物の仲間です。春に出てくる胞子茎であるツクシは、ハカマを取り除いてアク抜きをすれば、佃煮や卵とじとして食べることができます。ただし、スギナ本体は硬くて食用には向きません。
農林水産省:野菜・山菜とそれに似た有毒植物
参考リンク:農林水産省による公式情報で、食用可能な山菜と、誤食しやすい有毒植物(シダ類含む)の見分け方や注意喚起が掲載されています。
シダ植物は、単なる植物以上の熱狂的な歴史と、種子植物とは全く異なる驚異的な繁殖システムを持っています。この章では、あまり知られていないシダのディープな世界を紹介します。
19世紀のビクトリア朝時代のイギリスでは、「シダ熱(Pteridomania / テリドマニア)」と呼ばれる社会現象が巻き起こりました 。産業革命によって都市が汚染される中、人々は自然の神秘と清浄さを求めてシダに熱狂しました。
参考)観葉植物が叶える、心と体のリセット術!科学が証明するグリーン…
このブームを後押ししたのが「ウォードの箱(Wardian case)」の発明です。これは現在のテラリウムの原型であり、ガラスケース内で湿度を保つことで、煤煙の多いロンドンでも繊細なシダを育成することを可能にしました。貴族や中産階級の女性たちは、こぞって珍しいシダを収集し、シダ柄の陶磁器、ドレス、家具などが大量に生産されました。当時の図鑑や押し葉帳は、現在でも骨董的価値を持っています。
シダ植物には花が咲かず、種子もできません。代わりに「胞子」で増えますが、そのプロセスは非常に複雑でSF的です 。
参考)http://www.ha.shotoku.ac.jp/~kawa/KYO/SEIBUTSU/syokubutsu/SogoZukan/shida/index2.html
このように、シダは「親(胞子体)」と「子(前葉体)」で全く姿形が異なる「世代交代」を行っています。この原始的かつ精巧なシステムこそが、恐竜時代から現代まで生き延びてきたシダ植物の生命力の秘密なのです。園芸店で売られているシダの葉の裏に茶色い粒々(胞子嚢群)がついていることがありますが、それは病気ではなく、次の世代へ命をつなぐための重要な器官です。
国立科学博物館:日本産シダ植物図鑑
参考リンク:国立科学博物館が提供するデータベースで、日本に自生するシダ植物の詳細な分類、分布、標本画像などが閲覧できる学術的なリソースです。