再仕込み醤油の原材料は、基本的に大豆・小麦・食塩の3点に集約され、実際の製品表示でもその構成が繰り返し見られます。
たとえば、国産100%をうたう再仕込み醤油では「大豆(国産)・小麦(国産)・食塩」の表記が明確で、原料由来の味の違いを前面に出す設計になっています。
一方で「丸大豆(アメリカ)・小麦・食塩・米麹」のように麹原料を補助的に加える商品もあり、原料の選択幅自体は広いのが現実です。
農業の視点で重要なのは、原料表示がシンプルであるほど「大豆の出来」が味の差として出やすいことです。
参考)国産原料 二段仕込 再仕込 醤油
特に再仕込みは“濃厚さ”が価値なので、原料由来のクセ・香り・甘みが良くも悪くも増幅され、原料の品質が誤魔化しにくいカテゴリーだと捉えると設計しやすくなります。
まずは、取引先(醤油蔵・加工所)が求める原材料表示(国産表記、丸大豆表記など)を逆算し、その条件に合う大豆の供給計画を立てるのが実務的です。
再仕込み醤油(さいしこみ)は、醸造を二度繰り返すような製法で、食塩水の代わりに生揚げ(きあげ)しょうゆで仕込む点が大きな特徴です。
この「生揚げ」は、発酵・熟成したもろみを搾った“搾ったまま”の状態で、熱処理などをしていないしょうゆを指す、と説明されています。
つまり再仕込みでは、二回目の仕込みの液相に“すでに旨味を含む液体”を使うため、最終的に濃厚な味わいに寄りやすい、という理屈が成り立ちます。
農業従事者向けに言い換えると、1回目の仕込みで作られた旨味の土台(生揚げ)を、2回目の発酵・熟成の「培地」として再利用するイメージです。
このとき、2回目に投入する大豆・小麦の品質が、すでに味の強い液体の中でも負けずに効いてくるため、タンパクや香りの出方が弱い原料だと“埋もれる”リスクもあります。
だからこそ、再仕込みは「大豆の設計」を前提に、香り担当の小麦や塩の角の出方まで含めて、最初から“濃い世界”で成立する原料設計に寄せるのが堅い戦略です。
参考)https://www.maff.go.jp/j/jas/kaigi/pdf/140529_sokai_c.pdf
同じ「大豆」でも、丸大豆を使うかどうかは商品価値の打ち出し方に直結し、「丸大豆二度じこみ」「国産丸大豆100%」のような表現で差別化される例が見られます。
また「丸大豆しょうゆ」は、丸のままの大豆を原料としたしょうゆで、醸造中に大豆の油成分の一部が変化し、まろやかな風味と深みにつながる、という説明があります。
一方で、脱脂加工大豆(油分を取り除いた大豆)を原料にするしょうゆもある、とされており、どちらを採用するかはコストだけでなく、狙う風味にも関わります。
農業側の実務としては、まず「丸大豆」表記を狙うのか(=丸粒での集荷・選別・保管を前提にするのか)を決めるのが分岐点です。
丸大豆は“原料ストーリー”が作りやすい反面、虫害粒・割れ・夾雑物が目立つと、そのまま品質印象に響きやすいので、JA出荷でも個別契約でも異物・水分の管理基準を早い段階で握る必要があります。
再仕込みは濃厚さが売りのため、少しの雑味が「濃いから目立たない」ではなく「濃いから残る」方向に出やすい、と想定しておくと原料設計が守りやすいです。
再仕込み醤油の製品説明では「国産大豆・国産小麦」や原料原産地(県名)まで踏み込んで示す例があり、原料の出どころが価値として扱われやすいことが分かります。
さらに、商品説明の中には「遺伝子組換え作物の心配なく」といった表現で安心感を訴求する例もあり、原料調達の透明性が販売に直結する場面があります。
このため、農業従事者としては、単に“国産”であるだけでなく、ロット管理・栽培履歴・保管履歴を「説明できる形」にしておくと、加工所や小売のストーリー要求に対応しやすくなります。
意外と見落とされがちなのが「小麦」の位置づけです。
参考)https://www.koshi-no-murasaki.co.jp/products/products_04/
醤油の原料は大豆が旨味、小麦が香りや甘味のもとになる、と整理されているため、再仕込みで大豆の濃さを狙うほど、小麦由来の香り設計も同時に必要になります。
大豆だけ“上げる”と香りが追いつかず、濃厚なのに平板な印象になりやすいので、原料供給の提案をするなら「大豆+小麦のセット最適化」まで踏み込むと通りやすいです。
検索上位の解説は「二段仕込み」「濃厚」「刺身向き」といった使い方の説明が中心になりやすい一方で、農業従事者が価値を出すなら「用途別に大豆を設計する」発想が効きます。
たとえば、再仕込み醤油はつけ・かけ用途で濃厚さが評価されるとされるため、加工側は“単体で成立する旨味”を求めがちで、タンパクの安定や粒揃いの安定が調達要件になりやすいです。
ここでの独自視点は、食用品種の中でも「味噌向け」「豆腐向け」のように用途で評価軸が変わるのと同様に、「再仕込み醤油向け」の評価軸(香りに負けない旨味の立ち上がり、雑味の少なさ、ロットの均一性)を、生産者側が言語化して提案することです。
現場で使える、提案のたたき台を置いておきます(加工所と擦り合わせて更新する前提)。
さらに、再仕込みの「生揚げで仕込む」という特徴を逆手に取り、1回目の生揚げの品質指標(香り、塩なれ、発酵のクセ)を、2回目の原料ロットに合わせて“設計し直す”余地があるのも面白い点です。
つまり、農業側が大豆の供給だけでなく、蔵の仕込み設計(どの生揚げを使うか)まで会話に入れると、原料が単なるコモディティから「共同開発の部材」に変わり、単価のロジックを作りやすくなります。
原料価格だけの競争に巻き込まれないために、再仕込み醤油は“農と醸造の共同設計”がしやすい領域だと捉えるのが実務的です。
生揚げ(きあげ)や再仕込みの定義・JAS分類(種類/製法/等級)
https://www.kikkoman.co.jp/enjoys/soysaucemuseum/various.html
大豆が「うま味のもと」、小麦が「香りや甘味のもと」といった原料の役割整理(公的資料)
https://www.maff.go.jp/j/jas/kaigi/pdf/140529_sokai_c.pdf