メニスカス表面張力違いと土壌水分管理

メニスカスと表面張力の違いをご存知ですか?農業における土壌水分管理で重要な両者の特性を、毛細管現象や実用例とともに詳しく解説します。この知識で作物の水分吸収を最適化できるでしょうか?

メニスカスと表面張力の違い

メニスカスと表面張力の基本概念
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メニスカスの特徴

容器表面との相互作用で形成される液面の湾曲現象

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表面張力の本質

液体分子同士が引き合い表面積を最小化する力

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農業での重要性

土壌の水分保持と作物への供給メカニズムに関与

メニスカスとは、容器の表面との相互作用によって形成される液面の屈曲現象を指します。ギリシャ語で「三日月」を意味し、ガラスと水の場合は凹型メニスカス、水銀の場合は凸型メニスカスを形成します。一方、表面張力は液体分子同士が互いに引き合う力により、液体表面が最小の面積になろうとする現象です。水分子は水素結合によって強く引き合うため、コップの縁を越えて盛り上がることができます。

 

参考)メニスカス - Wikipedia

両者の最大の違いは、メニスカスが「液体と固体の界面で生じる形状変化」であるのに対し、表面張力は「液体内部の分子間力による現象」という点です。メニスカスの形成には表面張力が関与しますが、固体表面の性質(親水性・疎水性)も大きく影響します。ガラスのように表面張力が強く水との界面張力が弱い材料では、水は壁面に沿って引き上げられてメニスカスを形成します。

 

参考)https://www2.kaiyodai.ac.jp/~kentaro/meni.html

メニスカス形成の物理メカニズム

 

メニスカスの形成は、液体の表面張力と固体との界面張力のバランスによって決定されます。二平面間に形成された液体架橋では、メニスカスの面曲率Cと表面張力γによって圧力差Δpが生じ、これが毛管力として作用します。土壌中では、土粒子間の隙間に水が保持されるとメニスカスが形成され、このメニスカスによる毛管力が土壌の保水力を決定する重要な要因となります。

 

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/kikaic/78/790/78_2266/_pdf

メニスカスの曲率が大きくなるほど、液体内部の圧力は低下します。このラプラス圧力の関係式ΔP=4γ/rによって、メニスカスの半径rが小さいほど圧力差が増大することが示されます。土壌が乾燥すると水の蒸発が進行し、毛管メニスカスの曲率が大きくなることで、毛管吸引力と粘土粒子間の有効応力が増大します。

 

参考)https://www.tus.ac.jp/about/information/publication/forum/file/forum_no438_08.pdf

表面張力が土壌水分に与える影響

表面張力は土壌中の水分保持において中心的な役割を果たします。土壌の保水力は、基本的に液体の表面張力、土粒子の表面張力、およびそのバランスによって規定されます。水の表面張力は20℃で約72.8mN/mという比較的高い値を示し、これが土壌の小さな隙間で水を保持する原動力となります。

 

参考)https://js-soilphysics.com/downloads/pdf/027006.pdf

土壌中の小さな隙間が多いほど、水に接する表面の縁の長さが増加し、表面張力の合計が大きくなるため毛管力が強くなります。そのため、粘土質土壌では砂質土壌に比べて保水力が高くなります。土壌が飽和に近い状態では、水は主として表面張力による毛管力によって保持されていますが、乾燥が進むと分子間力や浸透圧による力も作用するようになります。

 

参考)https://www.ffpri.go.jp/qa/moritomizu/documents/q2-2-1.pdf

農業において、界面活性剤を用いて水の表面張力を低下させることで、土壌への水の浸透を効果的にし、植物の根への到達を改善する技術も実用化されています。

 

参考)https://icl-growingsolutions.com/ja-jp/agriculture/categories/soil-surfactants/

毛細管現象とメニスカスの関係性

毛細管現象は、メニスカス形成と同様のメカニズムで起こる身近な現象です。細い管状の物体の内側にある液体が管の中を上昇する現象で、水の表面張力によるものです。一般的な水位上昇高さhcは、表面張力、接触角、管の半径によって決定されます。

 

参考)http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00074/2010/54-03-0105.pdf

土壌のような粒状体に発生するサクション(水位上昇)は、土中の間隙が毛細管として機能することで生じます。メニスカスが相隣るメニスカスと結合し始める時の土中水分を限界土中水分と呼び、これを用いて土中水分、毛管上昇高、水蒸気張力の平衡状態における相互関係を表現できます。

 

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/agrmet1943/12/4/12_4_159/_pdf

土壌表面からの蒸発速度よりも土壌水の毛管上昇の速度が上回る場合、深層の水分が表層に供給され続けます。この毛細管現象による水分移動は、農業において作物の根が水分を吸収する際の重要なメカニズムとなっています。

 

参考)毛細管現象の原理と土壌の隙間の水と植物の根の力

メニスカス現象の農業実用例

農業分野では、メニスカスと表面張力の理解が土壌水分管理に直接応用されています。土粒子には水の表面張力によって土粒子がお互いにくっつき合う力(サクション)が働き、これが盛土の強度や土壌構造の安定性に寄与します。水田を畑地に転換する際、粘土質土壌の透水性を高めるために、土壌亀裂の発生メカニズムを制御する研究が行われています。

 

参考)https://meiji.repo.nii.ac.jp/record/2000552/files/nogakubuhokoku_73_1_1.pdf

粘土粒子間にメニスカスが形成され、水の蒸発が進行すると毛管メニスカスの曲率が大きくなり、毛管吸引力が増大して亀裂が発生します。この現象を制御することで、土壌の透水性を意図的に改善できる可能性があります。また、土壌水分の測定にはpF値が用いられ、これは土壌が水分を保持しようとする力(水分張力)を表します。pF値が同じであれば、土壌の種類に関わらず作物の根が水分を吸収する難易度が同等であると判断できます。

 

参考)土壌水分の管理に役立つpF値とは? | コラム | セイコー…

森林総合研究所による土壌保水力の測定方法について、表面張力と毛管力の関係が詳しく解説されています
高知県IoP研究会のコラムでは、表面張力、毛管吸引力、界面張力が水移動にどう影響するか、農業視点で説明されています

 

 


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