メチルイソチオシアネート(MITC)は、土壌中で気化・拡散して殺菌、殺虫、殺雑草種子に効果を示す「土壌くん蒸剤」として位置づけられています。
さらに重要なのは、現場で「MITCそのもの」を入れるケースだけでなく、ダゾメットやメタム(メタムナトリウム等)のように、土壌中で分解して主にMITCとなり、そのガスが拡散して効くタイプが多い点です。
つまり、ラベル上の有効成分名が違っても、圃場内で最終的にMITCのガス挙動(拡散・揮散・滞留)が効き目を左右する、という理解が防除の安定化につながります。
農業従事者が押さえたい「同じMITC系でも効き方がブレる要因」は主に次の通りです。
参考)https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/uploaded/attachment/218168.pdf
メチル=イソチオシアネートはGHSモデルラベル上、「吸入すると生命に危険」「皮膚に接触すると生命に危険」など、強い急性毒性リスクが明記されています。
また「呼吸器への刺激」「長期又は反復ばく露による呼吸器、神経系の障害のおそれ」も示されており、短時間でも油断しない運用が前提になります。
したがって、土壌くん蒸の作業は「防除の一工程」ではなく、化学物質管理の業務として段取り(人員配置・時間帯・立入管理・近隣配慮)まで含めて設計するのが安全側です。
SDS/ラベル情報に沿った基本動作として、最低限ここは徹底してください。
参考リンク(危険有害性情報、保護具、応急措置の要点がまとまっています)
厚生労働省 職場のあんぜんサイト(メチル=イソチオシアネートGHSモデルラベル)
土壌消毒(くん蒸)の現場で結果を分けるのは、「投入量」よりも、被覆とガス抜きの丁寧さです。
例えば、自治体の技術資料では、地温を目安にしたくん蒸期間(被覆期間)を設定し、くん蒸中は「くん蒸中・開放立入り禁止」の標識を立てるなど、手順管理を求めています。
被覆後は換気・フィルム除去・耕起によるガス抜きを行うことが明記されており、作付前の工程として固定化されています。
地温とくん蒸期間の考え方(現場の判断材料)
ここで見落としがちなポイントは、「寒いから効かない」のではなく、低温だと揮散・拡散が遅くなるため、必要な被覆期間が長くなるという整理です。
逆に高温期はガス化が速く、被覆が甘いと気中へ逃げてしまい、除草効果が不十分になりやすいという注意も示されています。
そのため、被覆資材は厚め、ガスバリア性が高いほど効果が安定しやすい、という「資材選び」まで含めて設計するのが収量安定に効いてきます。
作業の実務チェック(入れ子にしない簡易チェック表)
参考リンク(地温別のくん蒸期間、立入禁止表示、ガス抜きの考え方が載っています)
山口県 技術資料(土壌消毒剤:地温とくん蒸期間、標識、ガス抜き)
被覆を要する土壌くん蒸剤では、揮散ガスによる周辺への危被害を防ぐため、朝夕など比較的気温の低い時間帯に処理する、といった注意喚起が自治体から出されています。
また、住宅・畜舎・鶏舎の周辺では、風下になる場合は処理を控える、高温期を避ける、被覆資材を厚め(例:0.03mm以上)にする、など具体的な回避行動が列挙されています。
ガス抜き作業についても、風向きが変わって危被害を及ぼす恐れがある場合は中断する、とされており、「ガス抜き=安全」ではなく条件次第でリスク工程になり得る点が実務上重要です。
現場で事故が起きやすいのは、次のタイミングです。
対策は「根性」ではなく設計で決まります。
検索上位の解説は「有効成分」「使用方法」「危険性」に寄りがちですが、実際に収量やクレーム、作業事故に直結するのは“段取りの穴”です。
そこで独自視点として、MITC系土壌くん蒸で「起きやすい失敗パターン」を、原因→現象→点検の順で整理します(意味のない文字数稼ぎではなく、現場で役立つ項目に絞ります)。
失敗パターン1:被覆の端部が甘い
失敗パターン2:高温期に“すぐ揮散”して土中滞留が短い
失敗パターン3:低温期に日数を短縮して作付を急ぐ
失敗パターン4:ガス抜きのときに風向きが変わる
失敗パターン5:保護具を“短時間だから”で省略する
参考リンク(周辺被害防止の具体策:時間帯、風下回避、被覆厚、ガス抜き中断などがまとまっています)
宮崎県 被覆を要する土壌くん蒸剤の適正な取扱い(揮散ガス対策)