花粉症今何が飛散?ブタクサやイネと寒暖差アレルギーの咳

農作業中に止まらない鼻水や咳、それは本当に花粉症?12月~1月に飛散するブタクサやハンノキ、そして農家ならではの職業病ともいえる寒暖差アレルギーの正体を徹底解説。来春のスギ花粉に向けた土作りと同時にできる対策とは?

花粉症の今は何が原因なのか

農家を悩ませる「今の」ムズムズ正体
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冬の隠れ花粉

ハンノキや狂い咲きのスギが12月〜1月の農地周辺で飛散中

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寒暖差の罠

ハウスと外の温度差が引き起こす「血管運動性鼻炎」かも

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農家の特効策

ツルツル素材の雨合羽と作業後のエアブロワーで物理除去

花粉症の今は何が飛散しているか:ブタクサやイネとハンノキの残党

 

農業に従事していると、一般のデスクワーカーよりも圧倒的に植物と接する時間が長いため、「花粉症シーズン」という概念が世間と少しズレていることに気づくはずです。世間が「花粉症は春」だと思っていても、現場に出ている私たちにとっては、12月や1月といった冬場でも鼻水やくしゃみが止まらないことは日常茶飯事です。では、今、この時期(冬〜早春)に一体何が飛んでいるのでしょうか

 

まず疑うべきは、秋から冬にかけてしぶとく残るブタクサヨモギなどのキク科雑草の花粉です。これらは本来10月頃にピークを越えますが、近年の温暖化の影響や、日当たりの良いあぜ道、ハウスの周辺などでは、12月に入っても枯れずに花粉を飛ばしている個体が見受けられます。特に我々農家は、これらの雑草の至近距離で作業をするため、環境省が発表する一般的な飛散データよりも遥かに高濃度の花粉を吸い込んでいる可能性があります。

 

次に、意外と見落とされがちなのがハンノキ(カバノキ科)です。これは1月から4月にかけて飛散する花粉ですが、早い地域や敏感な体質の人は12月から反応し始めます。ハンノキは湿地を好むため、水田のあぜや用水路沿いに自生していることが多く、まさに稲作農家や水田転換畑で作業する人にとっての天敵です。ハンノキ花粉症の人は、リンゴやモモなどのバラ科の果物を食べた時に口の中が痒くなる「口腔アレルギー症候群」を併発しやすい特徴があります。「冬なのに果物を食べると口が痒い」という自覚があるなら、今の症状はハンノキが原因である可能性が高いでしょう。

 

さらに、最大の脅威であるスギ花粉も無視できません。「スギは春だろう」と油断しがちですが、実は11月〜12月にかけて、スギの雄花が季節を間違えて開花してしまう「狂い咲き」という現象が起きています。飛散量は春の本番に比べれば微々たるものですが、農作業で山沿いの畑や林道近くで長時間過ごす場合、この微量のスギ花粉が「スイッチ」となり、重い症状を引き起こすことがあります。

 

今の季節に飛んでいる花粉の飛散予報や分布図を確認できる、日本気象協会の公式情報サイトです。

花粉症と間違いやすい寒暖差アレルギーの咳と鼻水

「目のかゆみはそれほどでもないのに、透明な鼻水がツーっと垂れてくる」「一度くしゃみが出始めると止まらない」「乾いた咳が続く」。もし今、このような症状に悩まされているなら、それは花粉症ではなく「寒暖差アレルギー(血管運動性鼻炎)」かもしれません。これはアレルゲン(花粉)が原因ではなく、自律神経の乱れによって鼻の粘膜が過敏になる症状です。

 

私たち農業従事者は、この寒暖差アレルギーのリスクが極めて高い環境で働いています。考えてみてください。

 

  • ビニールハウス(20℃以上)外気(氷点下近く)の出入りを繰り返す。
  • 汗をかいた状態で冷たい北風に吹かれる。
  • 早朝の収穫作業で、極寒の時間帯から急激に気温が上がる昼間まで働き続ける。

このように、7度以上の急激な温度差を短時間に何度も経験すると、自律神経が調整不能に陥ります。その結果、鼻の粘膜の血管が広がりっぱなしになり、鼻詰まりや鼻水を誘発するのです。特に冬場の農作業では、土埃や乾燥した空気がさらに鼻の粘膜を刺激し、症状を悪化させます。

 

花粉症と寒暖差アレルギーの見分け方を整理しておきましょう。

特徴 花粉症(アレルギー性鼻炎) 寒暖差アレルギー(血管運動性鼻炎)
目の症状 かゆみ、充血が強い ほとんどない
鼻水の状態 透明でサラサラ、粘り気があることも 水のように透明でサラサラ
発症のきっかけ 外出時、花粉の飛散量が多い日 暖かい場所から寒い場所へ移動した時
基本的になし(微熱感はあることも) なし
検査結果 アレルギー検査で陽性が出る アレルギー検査は陰性

もし「目が痒くない」のであれば、高価なアレルギー薬を飲むよりも、首元や足首を温めて自律神経を整えたり、マスクで鼻の湿度を保ったりする方が効果的かもしれません。今の自分の症状がどちらなのか、冷静に見極めることが、無駄な薬代を抑え、作業効率を落とさないための第一歩です。

 

寒暖差アレルギーのセルフチェックリストや、花粉症との詳細な違いを医師が解説している記事です。

花粉症の今できる農作業中の対策とマスク選び

農家にとって「花粉を避ける」というのは「仕事をするな」と言うに等しい無理難題です。しかし、装備を工夫することで、暴露量を劇的に減らすことは可能です。今の時期、私が現場で実践し、推奨している最強の対策は「ツルツル素材の重ね着」「エアブロワーの活用」です。

 

まず服装ですが、ウールやフリース、起毛したコットンの作業着は、花粉を吸着する磁石のようなものです。今の時期は寒さ対策でフリースを着込みたくなりますが、一番外側には必ずナイロンやポリエステル製のレインウェア(カッパ)やウィンドブレーカーを羽織ってください。表面がツルツルしていれば、花粉が付着しても手で払うだけで大部分が落ちます。最近の農業用レインウェアは透湿性に優れており、冬場なら蒸れも気になりません。これを一枚羽織るだけで、家に持ち込む花粉の量を数分の一に減らせます。

 

次にマスク選びです。農作業中は息が上がるため、一般的な不織布マスクではすぐに湿って呼吸が苦しくなり、結局顎にずらしてしまうことになりがちです。これでは意味がありません。農作業用として強くおすすめしたいのが、「排気弁付き」の防塵マスク(N95やDS2規格に準じたもの)です。

 

  • 排気弁の効果: 吐いた息が弁から外に逃げるため、マスク内が結露しにくく、メガネやゴーグルも曇りません。
  • 密着性: 農作業で激しく動いても隙間ができにくい構造になっています。

見た目は少々仰々しいですが、背負い動噴で農薬散布をする際に使うあのマスクを、花粉対策としても流用するのです。呼吸の楽さと防護性能は段違いです。

 

そして、作業が終わって家に入る前の「儀式」が重要です。多くの農家の納屋や作業場には、機械の掃除用にエアコンプレッサー(エアダスター)があるはずです。これを活用しない手はありません。玄関を開ける前に、頭から足先まで、自分自身に圧縮空気を吹きかけてください。

 

  1. 帽子(髪の毛)
  2. 肩・腕
  3. 足元(ズボンの裾)

    の順で、風下に向かって吹き飛ばします。手で払うだけでは繊維の奥に入り込んだ花粉は取れませんが、エアブローなら強力に除去できます。これは、家族を花粉症から守るためにも必須のマナーと言えるでしょう。

     

農作業における空調服や機能性ウェアの効果、特に花粉を寄せ付けない素材の選び方について解説されています。

花粉症で今すぐ病院に行くべき症状と薬の選び方

「たかが鼻水」「毎年なんとかなっているから」と我慢して作業を続けていませんか?しかし、今の時期(12月〜1月)に病院へ行くことには、春の本番を乗り切るための戦略的な意味があります。それが「初期療法」です。

 

スギ花粉の飛散が本格化する2月に入る前、つまり「今」から薬を飲み始めることで、粘膜が過敏になるのを防ぎ、ピーク時の症状を劇的に軽くすることができます。特に農家の場合、ピーク時に症状が悪化すると、春の作付け準備や管理作業のパフォーマンスが落ち、その年の収益に直結しかねません。

 

病院に行くべき判断基準は以下の通りです。

 

  • 市販薬を飲んでも、作業中に集中力が切れるほどの眠気が出る。
  • 鼻詰まりで夜中に目が覚め、睡眠不足で翌日の農機具操作に不安がある。
  • 咳が2週間以上続き、ハウス内の粉塵で発作的に咳き込む。

特に「インペアード・パフォーマンス(気付かない能力ダウン)」には注意が必要です。古いタイプの抗ヒスタミン薬(第一世代)は、強い眠気や判断力の低下を招きます。トラクターや軽トラの運転、刈払機の操作など、危険を伴う作業が多い農家にとって、この副作用は命取りです。

 

病院(耳鼻咽喉科)で処方される最近の薬(第二世代抗ヒスタミン薬、ビラスチンやデスロラタジンなど)は、「眠くなりにくい」「即効性がある」など、作業内容や生活リズムに合わせて選ぶことができます。医師に「農機具を操作するので、絶対に眠くならない薬がいい」「1日1回で済むものがいい」と明確に伝えることが重要です。

 

また、今の時期なら「舌下免疫療法(シダキュアなど)」の相談もできます(※スギ花粉飛散期には開始できないため、12月中旬までがギリギリの開始チャンスか、あるいは飛散終了後の6月以降になりますが、医師に相談してスケジューリングするには良い時期です)。根本治療を目指すなら、農閑期を利用して通院計画を立てるのが賢い農家の選択です。

 

2025年の最新の花粉飛散予報や、薬を飲み始めるベストなタイミング(初期療法)について詳しく解説されています。

花粉症の今こそ土壌改良と雑草管理で飛散を減らす

最後に、検索上位の一般的な医療サイトには決して書かれていない、「生産者である私たちだからこそできる、根本的な花粉対策」についてお話しします。それは、自分たちの管理する農地から発生する花粉(特にブタクサやイネ科)を減らし、アレルギーに強い体を作るための作物を育てる視点です。

 

今の時期、畑の周囲や休耕田に生えている雑草をどう処理していますか?もし、ブタクサやカモガヤが枯れ残っているなら、来シーズンのために「種を落とさせない」徹底的な管理が重要です。雑草は、花が咲いて花粉を飛ばした後、種を落として翌年さらに増殖します。冬の間に枯れ草を焼き払う(野焼きが許可されている地域の場合)か、種が落ちる前に刈り取って持ち出すことで、翌年の自宅周辺の花粉飛散量を物理的に減らすことができます。これは、地域全体の公衆衛生にも貢献する行為です。

 

また、「土作り」も花粉症対策と無関係ではありません。

 

近年、化学肥料の多用によって土壌のミネラルバランスが崩れ、そこで育った作物の微量栄養素が減っていることが、現代人のアレルギー体質悪化の一因という説もあります。

 

  • マグネシウム亜鉛などのミネラル豊富な土壌を作る。
  • 農薬の使用を必要最低限に抑え、土壌微生物を豊かにする。

このようにして育てた、栄養価の高い冬野菜(ネギ、大根、白菜など)を私たちが一番最初に食べるのです。特に、腸内環境を整える食物繊維や、粘膜を強化するビタミンA・C・Eが豊富な野菜を意識して摂取することは、食べる花粉症対策と言えます。

 

さらに、ハウス栽培の農家さんなら、ハウスサイドの防虫ネットの目合いを見直すのも「今」です。0.4mm目合いなどの微細なネットは、害虫だけでなく、外部からの花粉の侵入もある程度防いでくれます。換気性能とのバランスは必要ですが、春の定植準備が進む今こそ、設備のメンテナンスとして「花粉バリア機能」を強化してみてはいかがでしょうか。

 

私たちは花粉の被害者であると同時に、植物を管理するプロフェッショナルでもあります。受け身の対策だけでなく、環境そのものをコントロールする攻めの姿勢で、この辛い季節を乗り越えていきましょう。

 

 


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