「越冬した雌だけがリンゴ園に飛来するため、春の防除を1回でも逃すと被害が5〜6倍に膨らみます。」
ギンモンハモグリガ(学名:Lyonetia prunifoliella)は、主にリンゴを加害するハモグリガ科の小蛾です。成虫の体長は約4〜5mmで、白地に黒色の斑紋が特徴的です。北海道・本州中部以北に広く分布しており、東北・北海道のリンゴ産地では特に注意が必要な害虫として位置づけられています。
越冬形態が少し変わっています。雄は交尾後に死亡し、雌だけが生き残って越冬します。越冬場所は建物の壁面・樹の空洞部・生垣などで、リンゴ園の内部ではなく周辺環境に潜んでいる点が見落とされやすいポイントです。
つまり「園内を消毒したから安心」とはならないということですね。
春になり展葉期を迎えると、越冬した雌成虫がリンゴ園に飛来して若葉の裏面に産卵します。1枚の若葉に1粒ずつ産みつけ、孵化した幼虫がすぐに葉肉へ潜り込んで食害を開始します。このサイクルが年間5〜6回繰り返されるため、初発を抑えられるかどうかが防除の成否を大きく左右します。
ハモグリガ類の被害は「葉に絵が描かれたような線状の模様」が現れることから、俗に「エカキムシ」とも呼ばれます。ギンモンハモグリガの場合、幼虫が葉内を線状に食い進んだあと、成長するにつれて食害部が斑状(ブロッチ状)に広がっていくのが特徴です。
被害部位は必ず若葉です。季節が進んで新梢の先端が伸びると、被害も先端へ先端へと移動していきます。成熟した成葉はほぼ加害されないため、「葉の古い部分は傷んでいないのに先端だけ枯れている」という状態が典型的なサインです。
これは使える観察ポイントですね。
被害が軽微な成木では実害はほとんど出ません。しかし苗木・若木・高接ぎ更新樹では話が違います。新梢の伸長そのものが妨げられ、樹形の乱れや生育遅延に直結します。特に定植後3〜5年の若木で多発した場合は、その年の枝の充実が不十分になり、翌年の花芽形成にも悪影響を及ぼす可能性があります。
| 症状の段階 | 葉の状態 | 影響の深刻度 |
|---|---|---|
| 初期(線状食害) | 細い白い線が葉脈に沿って伸びる | 低(外観のみ) |
| 中期(斑状拡大) | 食害部が斑状に広がり黄変 | 中(光合成能力低下) |
| 重症(先端枯れ) | 新梢先端の葉が萎縮・枯死 | 高(苗木・若木は生育障害) |
岩手県の試験データによると、第2世代(6月中〜下旬)が年間の中でも被害密度が高まりやすい時期として報告されています。散布月日6月13日・6月27日を基準とした防除効果試験では、この時期の薬剤散布が特に高い抑制効果を示しました。第2世代対策を確実に行うかどうかで、その後の世代密度が大きく変わります。
発生世代ごとの目安は以下の通りです。
第3世代以降は成葉にも産卵するケースが増え始めます。密度が高い年は8月以降も新梢への食害が確認されるため、「夏を過ぎたから安心」とはいえません。防除暦に記載された散布回数と時期を守ることが原則です。
JAながのの「令和6年度りんご病害虫防除暦」では、ギンモンハモグリガへの対応薬剤として「ラビライト水和剤(200g、使用前日数30日)」が記載されています。また「1+M3」体系(殺虫剤+展着剤)での散布が標準的な対応とされています。
農薬を選ぶ際に注意すべき点をまとめます。
農薬の使用前には必ず最新の農薬登録情報を確認することが条件です。農林水産省の「農薬登録情報提供システム(FAMIC)」で最新の登録状況を調べてから使用してください。
農業害虫や病害の防除・農薬情報|ギンモンハモグリガの発生生態・防除方法の詳細(boujo.net)
多くの農家が薬剤散布に注力する一方で、越冬場所の管理は盲点になっています。ギンモンハモグリガの雌成虫は、リンゴ園内ではなく建物の壁面・樹の空洞部・生垣などに分散して越冬します。つまり、いくら園内の防除を徹底しても、周辺の越冬場所が残ったままでは毎年同じ密度で飛来し続けます。
実際に問題になりやすいのは次のような環境です。
これらを完全になくすことは現実的ではありませんが、越冬前(10月以降)に作業小屋や防風林周辺の管理を意識するだけで、翌春の飛来密度を下げる効果が期待できます。越冬雌が集まりやすい壁面や隙間への殺虫剤処理も、一部の産地では実施されています。
越冬場所の管理が基本です。薬剤コストを長期的に抑えたい場合、環境管理の視点を防除計画に組み込むことが合理的な判断です。
岩手県農業指導資料|ギンモンハモグリガの発生時期と防除法(第2世代防除効果データを含む)
秋田県農業試験場資料|リンゴ病害虫の見分け方・ギンモンハモグリガの形態と被害写真