ゲンノショウコの花は「可愛らしい野草」と思われがちですが、実は煎じる時間が10分か30分かで、下痢止めにも便秘薬にもなります。
ゲンノショウコの花は直径1〜1.5cmほどで、5枚の花弁を持ちウメの花に似た形をしています。 注目すべきは花色の地域差で、静岡県の富士川付近を境にして、東日本では白花が多く、西日本では淡紅色・紅紫色の花が多く分布しています。net1010+1
これを植物愛好家たちは「ゲンノショウコの源平合戦」と呼ぶことがあります。 源氏が白旗、平家が赤旗をシンボルにしていたこと、そして1180年に富士川を挟んで両軍が争った史実と重ねた粋な表現です。
花期は7月〜10月と長く、夏から秋にかけて畦道や山野で見かける機会があります。
意外ですね。
こんなに長い期間花を咲かせているので、農作業の合間にも気づきやすい植物です。
自分の農場や圃場の周辺に咲いている花が白なのかピンクなのかを確認しておくだけで、「今いる場所が東日本寄りか西日本寄りか」をざっくり判定できるという余談もあります。山野の畦道に咲く花の色を意識してみると、植物の分布について新鮮な気づきが生まれるでしょう。
ゲンノショウコは、ドクダミ・センブリとともに「日本の三大民間薬」のひとつに数えられています。 この三つの中でも、ゲンノショウコは整腸・下痢止めへの効果が特に有名で、古くから農村でも活用されてきた植物です。
参考)ゲンノショウコ
薬効の主成分は葉に含まれる「ゲラニイン」というタンニンで、葉全体の約20%を占めます。 タンニンとは、タンパク質や金属イオンと結合する化合物で、腸粘膜を引き締めることで下痢を改善します。
成分が豊富というのが基本です。
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「現の証拠」という名前の由来がここにあります。煎じて飲むと「現に(すぐに)」効果が出るという、薬効の確かさを示した名称です。 農作業中の急な腹痛や下痢に対応できる野草として、昔から農家に重宝されてきました。
利用部位は地上部(茎・葉・花)で、開花期から花後にかけての7〜10月が採取の適期です。
収穫した後は乾燥させて保存します。
農林水産省の東北森林管理局もこの植物を公式に記録しており、権威ある機関が認める薬用植物です。
林野庁東北森林管理局:ゲンノショウコの植物情報(薬用植物として公式記録)
ゲンノショウコを煎じて使うとき、「長く煮出すほど効く」と思っている方は少なくありません。ところが、煎じる時間によって効果がまったく逆になります。
これが最大の落とし穴です。
具体的には次のとおりです。
同じ植物を同じように煮出すだけで、効果が180度変わるわけです。 つまり「目的に応じた時間管理」が条件です。
下痢で苦しんでいるときに、うっかり30分じっくり煎じてしまうと、症状が悪化する可能性があります。 逆に便秘のつもりで10分しか煎じなければ、期待した通りの効果は得られません。
痛いですね。
煎じる際の容器も注意点があります。鉄製のやかんや鍋を使うと、タンニンが酸化して薬効が損なわれます。 アルミ・ステンレス製か土びんを使うのが基本です。市販の第3類医薬品「ゲンノショウコ」製品では、土びんまたはアルミ・ステンレス製の容器で水200mlに対して1包を入れ、約130mlになるまで10〜15分煎じる方法が推奨されています。e-welcia+1
農作業中は体力を使います。胃腸トラブルは農繁期に起きやすいため、正しい煎じ方を事前にメモしておくだけで、いざというときに役立ちます。
日本薬局方にも収載されている正式な生薬ですので、信頼性は折り紙付きです。
公益社団法人 日本薬学会:ゲンノショウコの生薬としての解説(成分・用途・形態)
花が咲いた後のゲンノショウコには、もう一つの見どころがあります。
それが「種の自動散布メカニズム」です。
花が散ると、中心部からくちばし状の果実が伸びてロケットのような形になります。 熟して乾燥すると、このロケット形の裂片がゼンマイのように巻き上がり、その勢いで種子を弾き飛ばします。 種子は最大で1m以上飛ぶといわれています。chiba-muse+1
農地での注意点をまとめると次のとおりです。
薬草として活用するなら「意図的に増やす」管理が効果的ですが、そうでない場合は圃場の隅に大きなコロニーができる前に対応しておくことが必要です。
ただし除草剤に頼る前に、まず「薬草として収穫利用する」という選択肢が農業従事者にとってコスト削減につながる場合もあります。採取して乾燥させた葉は市場でも流通しており、少量でも活用価値があります。
埼玉県深谷市の公式サイトでも、この種飛ばしの仕組みを図解で解説しています。
深谷市公式サイト:ゲンノショウコの種飛ばしの仕組みを図解で解説
ゲンノショウコは野生に自生しているだけでなく、薬草としての栽培も可能です。 種子繁殖が基本で、春に種をまき、日当たりの良い適湿地で管理します。
栽培・採取のポイントを整理します。
農地の周辺に自生しているゲンノショウコを「単なる雑草」として除草してしまうのは、もったいない話です。 乾燥させてお茶として飲むだけでなく、外用(腫れ物・しもやけへの煎液湿布)としても活用できます。mnc.toho-u+1
『現代農業』2020〜2021年の連載「植物はあれもこれも薬草です」でも、ゲンノショウコは身近な薬草として詳しく取り上げられています。 農業の現場での実践的な活用が紹介されており、薬草栽培に興味がある方には参考になる内容です。
参考)【植物はあれもこれも薬草です】第8回「ゲンノショウコ」 タン…
薄く煎じてもある程度の効果は得られるとされており、普段からお茶代わりに飲むことで胃腸のコンディション維持に役立てることができます。
これは使えそうです。
農薬を使う機会が多い農作業の現場では、農薬散布後の手洗いや体調管理が重要です。そのような日常ケアの一環として、ゲンノショウコ茶を取り入れている農家も存在します。薬草としての価値を知ると、圃場周辺の植物への視点が変わります。
熊本大学薬学部の薬用植物データベースにも詳細な情報が掲載されています。
熊本大学薬学部薬用植物データベース:ゲンノショウコの薬効・成分・用途の学術情報