フィルムはぎ取り機(マルチはぎ機)は、マルチフィルムの端を拾って引き上げ、一定の形で回収しやすくする機械です。代表的な考え方は「はぎ取り→その場に置く→乾かす→回収」という2工程型と、「はぎ取りながら巻き取って回収」する一貫型に分かれます。
2工程型が効く場面は、マルチに土や作物残さが多く付着して“重い・汚い・処理費が上がる”状況です。例えばデリカのマルチはぎ機は、はぎ取った後にほ場へ一旦置いて天日乾燥させ、余計な残さが落ちて軽く扱いやすくなり、処理代を抑えやすいという設計思想を明示しています。さらに、回収形態として「巻取りアタッチ」「つづら折りアタッチ」、付着物を落とす「スクレッパ」などのオプションが用意されています。
巻取り方式は、回収物が“円筒状で運びやすい”反面、草やツル、残さが絡むと一気に詰まりやすく、途中停止が増えることがあります。つづら折り方式は、巻芯に絡め続けないので詰まりにくい運用が可能ですが、回収後の結束・保管の工夫が必要になります(結束が甘いと風でばらけ、土が再付着して台無しになります)。
現場で意外に差が出るのが「乾かし方」です。天日乾燥を挟む方式は、乾くほど土が落ちやすくなり、同じ重量でも“実質フィルム比率”が高くなります。つまり、トン当たり処理費を払う地域ほど、乾燥・除土を丁寧にやる価値が上がります。逆に、雨が続く地域や晩秋の低日射では乾燥待ちが工程全体を遅らせるため、回収タイミング(収穫後すぐか、少し待つか)を作業計画に組み込むことが重要です。
フィルムはぎ取り機の性能を引き出す鍵は、「フィルムを引く前に、端が抜ける状態を作る」ことです。端が硬い土に埋まっている圃場では、回収前に土をほぐす作業が必須になりやすく、ナイフで覆土を破砕してからはぎ取る設計の機種もあります。デリカのDR-101Nは、標準装備ナイフで硬い覆土を破砕し、はぎ取り作業を進めやすくする点を特徴として説明しています。
作業の基本フロー(2工程型の一例)は次の通りです。
トラブルで多いのは「引きちぎれ」「草根の絡み」「フィルムが土と一体化して剥がれない」です。引きちぎれは、端が抜けていないまま強く引くと起きやすく、結果として“短い切れ端”が増え、拾い集め地獄になります。草根の絡みは、巻取りでは特に詰まりの原因になりやすいので、草勢が強い圃場では“草を切る仕組みがあるか”“スクレッパ等で除去できるか”を重視すると安定します。
「手でやった方が早い」と感じる原因の多くは、機械が悪いというより段取り不足です。例えば、トラクタ作業に入る前に圃場外周だけ先に端処理をしておく、収穫残さの大きい作物は先に粗く集めておく、といった“前処理”の有無で、停止回数が目に見えて変わります。
導入判断は「機械代」だけでなく、作業体系に組み込んだときの“詰まりにくさ”と“処理費が下がる設計か”で考えるのが現実的です。例えばデリカDR-101Nは、全面マルチ/普通マルチ(平うね・高うね)を簡単にはぎ取れること、はぎ取り~天日乾燥~回収の2工程で処理しやすくすることを特徴とし、主要諸元として適応トラクタやサイズを提示しています。こうした「適応トラクタ(kW/PS)」「3点リンク対応」「作業幅」「回収方式」は、購入前に必ず確認すべき基本項目です。
作業体系面での“見落としポイント”は、回収後の一時保管と運搬です。巻取りがきれいにできても、雨ざらしで泥が再付着すれば意味がありませんし、風で飛散すれば近隣クレームにもつながります。圃場→集積場所→処理業者までの動線を考え、結束資材、保管場所(屋根の有無)、運搬車両の積み方まで含めて設計すると失敗しにくいです。
また、機械化による最大の効果は「作業者の疲労と時間の平準化」です。マルチ回収は収穫後の忙しい時期に重なりやすく、手作業だと“最後に回すほど苦しくなる”典型作業です。機械化で体力依存を下げると、次作準備(耕起・施肥・定植)へ工程をつなげやすくなり、作付回転が上がる地域ほど効果が出やすいです。
フィルムはぎ取り機の話は、最後に必ず「廃プラ処理」で現実に引き戻されます。農業で使ったフィルムやマルチ等は、原則として産業廃棄物(廃プラスチック類)として適正処理が求められ、委託・運搬・処分の手続きが必要になる場面があります。日本農業用廃プラリサイクルセンターのQ&Aには、農業用廃プラに関する法改正の流れとして、1997年にマニフェスト適用、2000年に野焼き禁止等が整理されており、現場が「昔の感覚」で処理すると危険であることが分かります。
特に誤解が多いのが「販売業者が無料で引き取ってくれるなら安心」という認識です。同Q&Aでは、フィルム販売業者が産業廃棄物である使用済みプラスチックを引き取ることはできず、引き取るには産業廃棄物の運搬または処理の許可が必要だと明記されています。つまり、“無料回収”という言葉だけで飛びつくと、許可の有無や処理フローを確認しないまま不適正処理に巻き込まれるリスクがあります。
マニフェスト運用も、面倒でも避けて通れない論点です。同Q&Aでは、マニフェストの記入は排出者(農業者)が基本だが、農協等が収集場所を提供し事務委任を受けている場合は担当者が記入できる、といった実務上の整理も提示されています。さらに、返送がない場合の問い合わせ・報告や、保存期間(5年)など“後から困るポイント”もQ&A内で触れられており、回収作業そのものと同じくらい重要な管理業務になります。
参考:農業用廃プラのマニフェスト・契約・表示義務など、現場の「適正処理」実務Q&A(法改正の経緯も含む)
http://www.noubi-rc.jp/qa/
検索上位では「楽に剥がせる」「作業が速い」といった省力化の話が中心になりがちですが、現場で本当に効く独自視点は、回収作業を“廃プラの品質管理”として設計することです。理由は単純で、処分・再生の現場は「土・水分・異物」が多いほど嫌がり、結果として費用や受入条件が厳しくなりやすいからです(逆に言うと、同じ面積でも“きれいに出す”ほど交渉余地が出ます)。
品質管理としてのポイントは、次の3つに集約できます。
意外な落とし穴は「一時置き場」です。乾燥させた後でも、地面に直置きして風で転がすと土が再付着しやすく、雨が当たると水分で重くなります。できれば、乾燥後はブルーシートやコンテナで“土と再接触しない”状態にして保管し、運搬当日まで品質を維持すると効果が出ます。
そして、ここまでの設計をやり切ると、フィルムはぎ取り機は単なる省力機械ではなく、「廃棄コストをコントロールする装置」になります。法令・契約・マニフェスト運用まで含めて一つの工程として整えるほど、作業の再現性が上がり、担当者が変わっても崩れにくい仕組みになります。