液肥散布機は大きく分けると、液肥を地表に広げる「表面散布」と、土の中に入れる「土中施用(インジェクタ等)」で、狙い(臭気低減・窒素の有効利用・近隣配慮)と機械要件が変わります。
特に家畜ふん尿スラリーやメタン発酵消化液のような液肥は、表面に出た状態が長いほどアンモニア揮散で窒素が逃げやすく、臭気問題にもつながるため、土中に注入して揮散を抑える設計が重視されます。
農研機構の研究成果では、既存のスラリータンカーに取り付ける大型機、既存の全層心土破砕機をベースにする小型機という「既存機械を活用して低コスト化する」考え方が示されています。
ここで重要なのは、「高価な新機種を買うか」より先に、「自分の圃場と作物で、土中施用が本当に効く場面か」を見極めることです。例えば、畑作で施肥量が多い体系、住宅が近い圃場、風が抜ける立地で臭気クレームが出やすい地域などは、土中施用のメリットが出やすいです。
また、土中施用は万能ではなく、土壌水分が高い条件や砕土性が悪い条件では、作業抵抗が増えて必要馬力が上がったり、作業速度が落ちたりして「想定の吐出量に合わない」問題が出ます。そこで、液肥散布機を選ぶときは、散布量の上限・作業速度・必要馬力・詰まりやすさのバランスを先に表にしておくと判断が速くなります。
現場での優先順位を決めるために、まずは次の問いを自分の営農条件に当てはめてください。
液肥散布機の散布量設計は、基本的に「目標の施用量(例:t/10a)を決め、機械の吐出量と走行速度、作業幅で合わせる」作業になります。
ここで混乱が起きやすいのが、「液肥の濃さ(成分濃度)」と「散布量(液量)」が別物な点です。例えば同じ5t/10aでも、窒素濃度が違えば効き方は変わるため、可能なら成分分析値を見て判断します。
参考として、土中施用の研究例では、消化液を深さ10~20cm付近へ施用できた事例や、施用量4~8t/10a(設計レンジ)といった具体レンジが示されています。
さらに小型機の設計では、施用量4~10t/10aの範囲で土中施用が可能とされ、土中で液肥が表面露出しにくい構造を狙っています。
この「t/10a」表記は、現場の散布計画を組むうえで非常に便利なので、まずは自分の作業体系の“標準値”を1つ決めるのがおすすめです(例:春は4t/10a、秋は6t/10aなど)。
散布量を合わせるときの実務手順(止まりにくい順番)を示します。
参考)https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/h_sehi_kizyun/pdf/ssisin2.pdf
「施肥基準はあるが、液肥の効き方が読みにくい」場合、施肥基準側は“窒素1回量”や“EC測定で加減”などの注意点が付くことがあり、過剰施肥を避ける設計になっています。
このため、液肥散布機を導入した初年度は、最初から上限狙いで攻めるより「作業が安定して回る散布量」を先に確立し、そこから成分効率(代替率)を高める方が事故が少ないです。
液肥散布機で現場が止まる原因の上位は、実は大故障よりも「目詰まり由来の圧低下→散布ムラ→再散布」です。
ストレーナは異物を止める部位で、ゴミが堆積すると流量不足や圧力低下を招き、ポンプ負荷が上がるだけでなく、ノズル詰まりや散布斑の原因になります。
さらに、ストレーナのゴミ付着が多いほどノズル詰まりも増える傾向があり、ストレーナに欠損がある場合もノズル詰まりが増えるため、ノズルばかり疑うのではなく「入口側(ストレーナ)から整える」発想が効きます。
目詰まり対策は、道具より先に“運用の固定化”が効きます。次のルールを作ってチームで揃えると、同じ機械でも安定性が上がります。
意外に効く小技として、液肥の性状によっては「散布開始の最初の数十秒だけ、低圧・低流量でならしてから所定圧に上げる」運用で、配管内の沈殿塊がいきなりノズルへ突っ込む確率を下げられます(機械仕様の許容範囲で実施)。
また、散布ムラの原因は目詰まりだけでなく、ノズルの摩耗でも起きます。液肥は研磨材(砂分)を含むことがあり、摩耗で噴霧角や流量がズレるため、「詰まっていないのにムラが出る」症状では摩耗・左右の個体差も疑います。
臭気と窒素ロスは、近隣対応と肥料効率の両方に直結するため、液肥散布機の評価軸として最重要です。
農研機構の説明では、液肥を土中に注入してアンモニア揮散を抑えることで、液肥中の窒素を有効利用でき、施用時の臭気も軽減できるとされています。
つまり土中施用は「環境配慮のためのコスト」ではなく、窒素を逃がさず使い切ることで、結果として化学肥料の投入量を下げる方向に働き得る技術です。
ただし、臭気対策は土中施用だけで完結しません。散布タイミング・気象・圃場条件の掛け算で効くため、次のように“現場の制御変数”を増やすと安定します。
“あまり知られていない視点”として、臭気対策は「散布方式」よりも「散布後に地表に残る液肥の割合」で体感差が出ます。たとえば土中施用でも、作業速度が速すぎて溝が閉じ切らない、ローラー鎮圧が甘い、残渣が多くて密閉できない、などの条件が重なると臭気が残りやすいです。土中施用機の構成要素(空洞形成刃・注入部・転圧ローラー等)は、この“露出を減らす”目的で設計されます。
検索上位では機械の種類やメリット比較が中心になりやすい一方、実務では「段取りコスト」が利益を決めます。ここは液肥散布機の導入前に必ず詰めたい独自論点です。
具体的には、1日の散布面積が伸びない原因は、散布中の速度ではなく、次の“停止時間”に偏りがちです。
- 補給(タンク補給・搬送車との合流・ホース接続)
- 洗浄(詰まり回避の簡易洗浄と、作業後洗浄)
- 旋回(枕地、圃場形状、畦畔の強度)
- クレーム回避の時間調整(近隣の生活時間帯への配慮)
このとき、土中施用を選ぶと「臭気が下がる→時間帯制約が緩む」可能性があり、作業枠が広がるのが隠れた経済効果になります。
逆に、土中施用は作業抵抗が増えやすく、必要馬力や燃料、摩耗部品の交換頻度が上がる場合があるため、「散布できる日が少ない地域」「急いで面積をこなす受託」では、機械トラブル時の代替手段(表面散布へ切替、ノズル予備、協力先)も含めて設計する必要があります。
段取りを仕組み化するための、実務向けチェックリストを置きます(入れ子なし)。
参考:土中施用でアンモニア揮散を抑え、臭気を軽減しつつ、既存機械活用で低コスト化する研究成果の概要
農研機構:低コストなスラリーインジェクター開発(液肥の土中注入で揮散抑制・臭気軽減)

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