調製加工と衛生管理と食品表示の基礎知識

調製加工は「どこまでが出荷調整で、どこからが加工なのか」で許可・届出や衛生管理、表示ルールが変わります。現場で迷いやすい境界線と、売上につながる設計の考え方まで整理します。あなたの作業は本当に「調製加工」の範囲内ですか?

調製加工と衛生管理

調製加工の全体像(現場向け)
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境界線を先に決める

「調製(出荷調整)」と「加工(製造)」の境界で、必要な手続き・設備・責任範囲が変わる。

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衛生管理は販売力

HACCPの考え方は、事故防止だけでなく取引先・直売所の信頼獲得にも直結する。

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食品表示で損しない

加工食品の表示は必須項目が多い。ミスは回収・取引停止の原因になり得る。

調製加工の定義と範囲(出荷調整・簡易な加工)


調製加工の記事を書くとき、最初に押さえるべきは「言葉の使い分け」です。現場では“ちょっと手を入れる”作業を全部まとめて「加工」と呼びがちですが、制度上は扱いが分かれます。特に、農業者が行う行為のうち、食品衛生法上の「営業」に当たるかどうかは、許可・届出の要否だけでなく、衛生管理の責任範囲の考え方にも影響します。


厚生労働省の整理では、農業における「採取業(営業に含まれない)」の範囲として、収穫後の洗浄、カットなしのパック詰め、乾燥機での乾燥、穀類の乾燥・調整・保管、そして「形状変化を伴わない出荷調整(皮剥き、根切り、へた取り、洗浄、袋詰め、冷蔵処理、冷凍処理、キュアリング、乾燥等)」が具体例として示されています。これらは「採取業の範囲」=原則として営業許可・営業届出の対象外として扱われる整理です。


一方で、同じ資料内で「茹で野菜、カット野菜、千切り」など“消費の利便性のために行う調理や切断”は採取業の範囲に含まれない(×)と明確にされており、ここが分岐点になります。


現場で迷いやすい例を、境界線が分かる形で整理します(※最終判断は所管保健所へ確認が安全です)。


・野菜の泥落とし、選別、根切り、へた取り、袋詰め:基本は出荷調整(調製)側
・2分割以上のカット、千切り、加熱、味付け:加工(製造)側に入りやすい
・「冷凍」はそれ自体がアウトではなく、目的と行為がポイント(例:単にへたのみ切除して冷凍=出荷調整側、カットして冷凍=加工側になりやすい、という整理が示されています)
ここで大事なのは、「作業の難しさ」ではなく「消費者の利便性のための調理・切断かどうか」「形状変化の程度」が分水嶺になっている点です。つまり、同じ“包丁を使う”作業でも、出荷調整としての端切りと、食べやすさを狙ったカットでは扱いが変わり得ます。


参考(調製・採取業の範囲の具体例一覧がある)。
厚労省資料:農業及び水産業における食品の採取業の範囲(Q&A・具体例)

調製加工の衛生管理(HACCPの考え方)

調製加工を「出荷調整だから気楽」と捉えると危険です。理由は単純で、消費者に届くまでの品質劣化・汚染リスクは、出荷調整の工程に集中しやすいからです。洗浄水、作業台、手指、コンテナ、温度管理――これらが弱いと、クレームや返品、最悪の場合は健康被害につながります。


制度としては、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理について、手引書を参考に実施する枠組みが示されており、特に共同利用加工施設のように複数の利用者・複数品目が混在する現場の特殊性に着目した留意事項がまとめられています。共同利用施設では「施設設置者」と「利用者」で衛生管理を分担することが多い一方、食品衛生法上は営業許可取得・届出を行う者が衛生管理の責任を負う、という整理が明確に示されています。つまり、作業を“間借り”していても、責任が自動的に軽くなるわけではありません。


実務に落とすなら、最低限は次の3点だけでも「見える化」すると現場が強くなります。


・作業の流れ(入荷→選別→洗浄→水切り→包装→保管→出荷)を紙1枚にする
・どこで汚れが入りやすいか(洗浄槽、排水、手袋、包材置き場など)を赤で囲む
・温度・時間・消毒濃度など、数字で管理できる点を決めて記録する
意外と見落とされがちなのが、「水の管理」です。洗浄のつもりが、汚れた水で再汚染するケースは起きやすいので、洗浄工程を“何槽に分けるか”“水をいつ交換するか”をルール化すると事故率が下がります。さらに、洗浄後の“乾かし方”も重要で、濡れたまま袋詰めすると結露が出やすく、品質劣化(軟化・異臭・カビ)を招きやすくなります。作業を増やさず改善するなら、「洗浄後の置き時間(自然水切り)」「送風」「庫内温度」のいずれか一点を固定し、ブレを小さくするのが効果的です。


参考(共同利用加工施設の衛生管理・責任分担の考え方)。
共同利用加工施設の衛生管理における留意事項(MAFF資料)
参考(HACCP手引書の位置づけ・参照の考え方)。
改正食品衛生法の概要、HACCP手引書等について(MAFF)

調製加工の食品表示(加工食品の表示)

調製加工が進むと、販売形態が「生鮮」から「加工食品」に寄りやすくなり、食品表示の難易度が一気に上がります。直売所・EC・ふるさと納税など販路を広げるほど、表示ミスの影響(回収、信用失墜、取引停止)が大きくなるため、早い段階で“表示に耐える商品設計”にしておくのが安全です。


行政の解説でも、食品表示は大きく「品質事項」「衛生事項」「保健事項」に分類され、加工食品では名称、原材料名、原料原産地、添加物、期限表示(賞味期限・消費期限)、保存方法、内容量、食品関連事業者(製造者・加工者等)など多くの項目が関係することが整理されています。現場で特につまずきやすいのは、次の3点です。


・「製造者」「加工所」など事業者名の出し方(責任主体の明確化)
・原材料名の順序(重量割合の高い順)と、アレルゲン等の注意
・保存方法と期限表示の整合(実際の保管温度・流通条件とズレないこと)
また、玄米・精米の表示に「調製時期」「精米時期」といった項目がある点は、米を扱う農家・集荷事業者にとって実務的な重要ポイントです。米は“生鮮っぽく見える”一方で、表示ルールが独特なので、米袋ラベルを自作する場合は特に注意が必要です。


表示で損しないコツは、「売れる表現」を足す前に「必須項目を落とさない」ことです。魅力的なキャッチコピーを先に考えると、肝心の名称や原材料の表記が後回しになり、結果として貼り替え・刷り直しが発生して利益が消えます。まずは、どの区分(生鮮なのか、加工食品なのか)を想定して売るのかを決め、その区分で必要な項目をテンプレ化してから、商品名や訴求を作る方が失敗しません。


参考(加工食品の表示例・必須項目の体系的説明)。
食品表示の基礎知識(大阪市:加工食品表示の例と項目)

調製加工の許可・届出の考え方(採取業と営業)

農業従事者が一番困るのが「どのタイミングで保健所案件になるのか」です。ここは、“やりたいこと”から逆算すると整理しやすくなります。つまり、先に「どの状態で誰に売るか(未加工の直売なのか、加工品としての販売なのか)」を決め、その後に設備・手続き・表示を合わせる順序です。


厚労省資料では、農業における採取業は食品衛生法上「営業に含まれない」ため、営業許可・営業届出の対象外であること、そして具体例として「屋外で生産された農産物のパック詰め(カットなし)」「野菜等の調製(形状変化を伴わない出荷調整)」「野菜等の簡易な加工(4分割・8分割等した後ラップ等で包装)」などが採取業の範囲(○)として示されています。逆に「茹で野菜、カット野菜、千切り」などは採取業の範囲外(×)です。ここから言えるのは、同じ“少し加工したつもり”でも、消費者がそのまま食べられる形に寄るほど、営業側に入る可能性が高まるということです。


さらに実務上の落とし穴として、「委託販売」と「自分で販売」があります。例えば、直売所・道の駅等で販売する場合でも、農業者自らが販売するのは採取業として扱われる一方、直売所等が委託を受けて販売する場合は、委託を受けて販売する側が届出対象になり得る、という整理が示されています。つまり、同じ場所で売っていても契約形態で手続きが変わり得るため、販売委託の契約書や運営ルールを必ず確認する必要があります。


現場の意思決定を速くするためのチェック(例)を置きます。


・「包丁で2分割以上に切る」商品にするか? → ここで保健所相談を入れる
・「直売所が預かってレジ販売」か? → 委託の扱いを確認する
・「共同利用施設で作る」か? → 誰が許可・届出主体で、誰が記録を残すか決める
この3点を先に決めるだけで、後から「やっぱり販売できない」「ラベルが作り直し」「設備を追加投資」といった痛い手戻りが大幅に減ります。


参考(採取業の範囲と、直売・委託販売の考え方が具体的に整理されている)。
厚労省資料:食品の採取業に関するQ&A(農業・直売・委託の整理)

調製加工の独自視点:出荷調整を“品質設計”に変える

検索上位は「許可が必要か」「HACCPとは」「表示は何を書くか」に寄りがちですが、現場の利益に直結するのは“調製加工を品質設計として扱う”視点です。つまり、調製加工を単なる手間ではなく、「規格化して再現できる技術」に落とすと、同じ畑・同じ品目でも売値と販路が変わります。


ポイントは3つあります。


・規格を「見た目」だけでなく「工程」で定義する(例:洗浄○分、水切り○分、庫内○℃)
・クレームを“原因別”に分類して、工程へ戻す(例:異物→搬入コンテナ、結露→水切り不足、傷み→予冷不足)
・販路別に“許容できるばらつき”を決める(直売は柔軟、業務用は再現性重視、ECは見栄えと日持ち重視)
意外な改善として効くのが「包材の置き場所」と「作業動線」です。高価な機械より先に、包材が床近くに置かれていないか、洗浄後の製品が原料の近くを通っていないか、濡れた製品が温かい場所で放置されていないかを見直すだけで、汚染・劣化リスクが下がります。共同利用施設では利用者が入れ替わるため、“誰がやっても同じ結果になる”設計が価値になりますが、これはまさに品質設計の考え方です(衛生管理の責任主体や分担が論点になるのも、この再現性が崩れやすいからです)。


最後に、調製加工を品質設計に変えると、表示や販促もラクになります。工程が決まっていると、保存方法・賞味期限の考え方が固まりやすく、表示の根拠も説明しやすいからです。さらに、直売所や取引先に対して「この工程で、この状態にして納品する」と言える農家は、単なる原料供給者から“品質を作る事業者”として評価されやすくなり、価格交渉の土台ができます。




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