亜鉛欠乏症原因とストレス環境下の作物管理

作物の亜鉛欠乏症は土壌環境やストレス要因によって引き起こされ、収量低下の原因となります。リン酸過剰や高pH土壌など複数の要因が関与していますが、どのような対策が効果的なのでしょうか?

亜鉛欠乏症原因とストレス

亜鉛欠乏症が発生する主な要因
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土壌環境の影響

高pH土壌やリン酸過剰施用により亜鉛の吸収が阻害され、作物に欠乏症状が現れます

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環境ストレスの関与

乾燥や過湿などの環境ストレスが亜鉛の吸収を妨げ、症状を悪化させます

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対策と改善方法

硫酸亜鉛の葉面散布や土壌pH調整により、欠乏症状を効果的に改善できます

亜鉛欠乏症の主な原因要因

 

亜鉛欠乏症は複数の土壌環境要因が重なって発生します。最も重要な原因の一つが、リン酸肥料の過剰施用による亜鉛吸収の抑制です。リン酸を過剰に施用すると、土壌中で亜鉛との拮抗作用が生じ、作物による亜鉛の吸収が著しく低下します。また、カルシウム資材の施用に伴う土壌pHの上昇も、土壌中の亜鉛を不可給化する重要な要因となります。

 

参考)亜鉛欠乏

北海道農業研究センターの亜鉛欠乏に関する詳細情報
土壌の種類も亜鉛欠乏の発生に大きく関わっています。特に黒ぼく土壌では亜鉛が吸着されやすく、作物が利用できる形態の亜鉛が減少します。水田転換畑や浚渫土を客入した水田など、特定の土壌条件下では亜鉛欠乏が発生しやすい傾向があります。

 

参考)AgriKnowledgeシステム

環境ストレスと亜鉛欠乏の関係

環境ストレスは亜鉛の吸収と代謝に重大な影響を与えます。人間においては、ストレスが亜鉛の過剰消費を引き起こすことが知られており、同様のメカニズムが植物でも作用していると考えられます。乾燥ストレスは土壌中の水溶性亜鉛を減少させ、根からの吸収を困難にします。一方、過湿条件下でも根の呼吸が阻害され、亜鉛の吸収能力が低下します。

 

参考)亜鉛不足でイライラしやすい?!ストレスと亜鉛の関係を解説

温度ストレスも亜鉛の利用効率に影響します。高温期には作物の代謝活性が上昇し、亜鉛の需要が増大する一方で、吸収量が追い付かない状況が生じやすくなります。このような複合的なストレス要因が重なることで、亜鉛欠乏症状が顕在化しやすくなります。

 

参考)亜鉛欠乏に強い作物を作る

作物に現れる亜鉛欠乏症状の特徴

亜鉛欠乏症の症状は作物の種類によって異なりますが、共通する特徴があります。最も典型的な症状は、葉脈間の黄化(クロロシス)です。下位葉の葉縁部から淡い黄化が始まり、症状が進行すると葉脈の緑を残して葉縁部から壊死斑へと変化します。

 

参考)亜鉛欠乏症 (植物) - Wikipedia

タキイ種苗の亜鉛欠乏症状の詳細な解説
生育への影響も深刻です。亜鉛は植物成長ホルモンのオーキシンとジベレリンの代謝に関与しているため、欠乏すると茎の伸長が抑制され、節間が詰まった草姿となります。葉が小さくなる矮小化現象も特徴的で、特に上位葉では顕著に現れます。トマトやメロンでは、下位葉が黄化・枯死し、葉が立ち気味になる症状が観察されます。

 

参考)https://www.takii.co.jp/tsk/bugs/asp/seiri/aen_ketsubou/

亜鉛欠乏症の効果的な対策方法

亜鉛欠乏症への対策として、最も速効性があるのが硫酸亜鉛の葉面散布です。葉面散布では施用後2~3日で効果が現れ、作物の亜鉛含有量を速やかに改善できます。一般的には0.2~0.5%の硫酸亜鉛液を散布しますが、作物や症状の程度によって濃度を調整します。海藻抽出液を添加した亜鉛資材は、亜鉛の吸収をさらに促進する効果があります。

 

参考)亜鉛供給葉面散布資材 ラッカインZn|微量要素肥料|植物活力…

対策方法 効果発現時期 適用場面
硫酸亜鉛葉面散布(0.2~0.5%) 2~3日 緊急対応・症状発生時
土壌への硫酸亜鉛施用 数週間 予防的施用・基肥
土壌pH調整(イオウ華・酸性肥料) 1~2ヶ月 高pH土壌の改良
リン酸施用量の削減 次作以降 リン酸過剰土壌

土壌改良による根本的な対策も重要です。土壌pHが高い場合には、石灰質肥料の施用を停止し、イオウ華や酸性肥料(硫安、硫酸加里など)の施用によってpHを矯正します。リン酸肥料を多量に施用している圃場では、施用量を適正レベルまで削減することが必要です。

 

参考)亜鉛欠乏

亜鉛欠乏耐性向上の取り組み

農業現場での持続的な対策として、亜鉛欠乏耐性品種の開発が進められています。明治大学の研究グループは、植物が細胞内の亜鉛イオンを効率的に回収・再配分することで、亜鉛欠乏環境でも生育できる仕組みを解明しました。この発見は、将来的に亜鉛欠乏耐性品種や亜鉛高含有作物の育成につながる可能性があります。

 

参考)明治大学 農学部 生命科学科 吉本光希准教授らの研究グループ…

現在、イネやコムギでは亜鉛輸送体遺伝子の機能解析が進んでおり、これらの知見を活用した品種改良が行われています。しかし、亜鉛の吸収や植物体内の輸送は厳密にコントロールされているため、輸送体遺伝子の過剰発現だけでは収量を維持したまま種子中の亜鉛濃度を劇的に増加させることは困難です。

 

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/dojo/92/2/92_920210/_pdf/-char/ja

栽培管理の工夫も重要です。亜鉛強化苗を一株あたり多く植えることで、初期生育の亜鉛不足を補うことができます。また、適切な排水管理や客土などの根本的な土壌改良と組み合わせることで、より効果的な対策が可能になります。

農業従事者は、圃場の土壌条件や作物の生育状況を注意深く観察し、亜鉛欠乏の兆候を早期に発見することが重要です。症状が軽微なうちに葉面散布などの対策を講じることで、収量への影響を最小限に抑えることができます。土壌診断を定期的に実施し、リン酸濃度やpHなどの指標を適正範囲に管理することも、予防的な観点から効果的です。

 

 


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