DJI Agras T10を導入する際、多くの農業従事者がまず直面するのが「機体価格だけでは飛ばせない」という現実です。カタログに掲載されている「機体本体価格」は約110万〜120万円(税別)程度ですが、これだけで作業を始めることはできません。実際の現場で運用するためには、バッテリー、充電器、そして用途に応じた散布装置が必要不可欠であり、これらを組み合わせた「セット価格」で予算を組む必要があります。
最も一般的なスターターセットの構成で試算してみましょう。まず、T10の機体本体に加えて、効率的な作業には最低でもバッテリーが3本から4本必要です。これは、T10のバッテリー(9500mAh)が1回の飛行で約10分〜15分程度稼働し、充電器での急速充電(約7〜10分)を回しながら連続散布を行うための「サイクル運用」に必須の本数だからです。
このように、現実に即した運用セットを組むと、総額は約190万円前後となります。多くの販売代理店では、これに講習費用(約10万〜30万円)やセットアップ費用を含めたパッケージとして200万円超で提案されるケースが一般的です。特に注意が必要なのが充電環境です。T10の充電器は最大3600Wの高出力を要するため、家庭用の100V電源では能力を発揮できません。圃場で充電するには、高出力の発電機(200V対応などが望ましい)も別途用意する必要があり、この設備投資も隠れたコストとして計算に入れるべきです。
参考)メーカー別導入コストまとめ
また、液剤散布だけでなく、肥料や除草剤の粒剤散布も行う場合は、粒剤散布装置(T10 Spreading System 3.0など)の購入が必要です。T10の粒剤タンクは最大10kg(容量約10L)の積載が可能で、わずか3分で液剤タンクと換装できる利便性がありますが、この装置単体でも約11万円の追加費用が発生します。
参考)https://sekido-rc.com/?pid=163508712
約200万円という導入コストは、小規模農家にとって決して軽い負担ではありません。しかし、農業用ドローンは国の「スマート農業」推進の要であり、多様な補助金制度の対象となっています。これらをうまく活用することで、実質的な負担額を半額、あるいはそれ以下に抑えることが可能です。
参考)農業用ドローンのメリット|用途や資格、補助金、おすすめ機種|…
代表的な補助金制度には以下のものがあります。
革新的なサービス開発や生産プロセス改善を行う中小企業・小規模事業者を支援する制度です。農業用ドローンの導入は「生産性向上」に直結するため採択されやすく、補助率は通常1/2〜2/3、補助上限額は数百万円規模となります。例えば200万円のセットを購入する場合、採択されれば約100万円〜130万円が補助され、自己負担は約70万〜100万円で済む計算になります。
販路開拓や生産性向上の取り組みを支援するもので、補助上限は通常50万円(条件により最大200万円)です。ドローンの購入費だけでなく、広報費などと組み合わせて申請できるのが特徴です。小規模な導入や、部分的な機材更新に適しています。
過去には農林漁業者を対象とした経営継続補助金があり、ドローン導入が「接触機会を減らす省力化機械」として認められ、高い補助率(最大3/4など)で支援された実績があります。現在は地域ごとの「産地生産基盤パワーアップ事業」などで、スマート農業機器の導入支援が行われている場合があります。
補助金申請のポイントは「公募時期」と「事業計画書」です。多くの補助金は通年募集ではなく、特定の期間に締め切りが設けられています。また、単に「欲しいから買う」では採択されず、「ドローン導入によって労働時間を〇〇時間削減し、その分で高付加価値作物の栽培面積を〇〇%拡大する」といった具体的な数値目標を伴う計画が必要です。認定販売代理店の中には、こうした補助金申請のサポートを行っているところも多いため、見積もり段階で「使える補助金はないか」と相談するのが鉄則です。ただし、補助金は原則「後払い」であるため、一時的に全額を立て替える資金力が必要になる点には注意してください。
参考)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000496.000016343.html
新品価格の高さから、ヤフオク!やメルカリ、中古農機具店などでT10の中古品を探す方も増えています。中古市場でのT10機体本体の相場は、状態によりますが約23万円〜40万円程度と、新品の半額以下で取引されていることもあります。一見すると非常に魅力的な選択肢に見えますが、農業用ドローンの中古購入には「バッテリー」という巨大な落とし穴が存在します。
参考)Yahoo!オークション -「dji t10」の落札相場・落…
T10などの産業用ドローンにおいて、消耗品の中で最も高額なのがバッテリーです。T10用のインテリジェントフライトバッテリーは、メーカー保証として「1000サイクル(充放電回数)」が謳われています。これは従来のPhantomシリーズなどが約200回程度だったのと比較して飛躍的な耐久性ですが、あくまで「適切な管理下での理論値・保証値」です。
参考)T10 - FAQ - DJI
中古品の場合、以下のリスクがつきまといます。
参考)農業用ドローン
したがって、中古で購入する場合は、「バッテリーのサイクル数が明確に証明されているもの(ログ情報の開示など)」や、「機体は中古でもバッテリーは新品を購入する」といった自衛策が必須です。単に「セット価格が安いから」という理由だけで飛びつくと、購入後に数十万円単位の追加出費を強いられる「安物買いの銭失い」になる可能性が極めて高いのが、この分野の中古市場の特徴です。
導入時のイニシャルコストばかりに目が向きがちですが、農業用ドローンを維持・運用するためのランニングコストも決して無視できません。自動車に車検や保険があるように、農業用ドローンにも法的な義務やメーカー推奨のメンテナンス費用が発生します。
DJIの農業用ドローンを利用し続ける上で、事実上必須となるのが年1回の定期点検です。これはメーカーの保証を継続したり、国土交通省への飛行許可申請をスムーズに行うために重要です。販売代理店や整備事業所によって異なりますが、T10クラスの点検費用は基本料金だけで約10万円〜15万円程度が相場です。もし点検でモーターの劣化やプロペラの破損、アームの亀裂などが見つかれば、部品代と工賃が別途加算されます。これを怠ると、万が一の事故の際に「整備不良」を問われるリスクがあります。
数百kgの物体を空中に飛ばし、農薬を散布する業務において、保険未加入は自殺行為です。対人・対物賠償保険への加入は必須と言えます。保険料は補償内容によりますが、年間約1.5万円〜5万円程度です。また、機体自体が高額であるため、墜落時の修理代を補償する「機体保険(動産保険)」に加入する場合は、機体価格の数%〜10%程度(年間10万円〜)の保険料がさらにかかります。
プロペラは消耗品です。小さな傷でも振動の原因となり飛行安定性を損なうため、定期的な交換が必要です。また、散布ノズルも農薬による腐食や詰まりが発生するため、シーズンごとのメンテナンスや交換が必要です。これらで年間数万円を見ておく必要があります。
参考)https://www.atrusuav.jp/%E6%A9%9F%E4%BD%93%E8%B2%A9%E5%A3%B2/
これらを合計すると、機体を所有しているだけで年間約15万円〜30万円程度の維持費が固定費として発生します。この維持費をペイできるだけの散布面積(例えば年間延べ50ha以上など)があるかどうかが、自社導入か、散布代行業者への委託かを判断する重要な分かれ目となります。「買ったはいいが、維持費が重荷で手放した」というケースも少なくないため、収支計画にはこのランニングコストを必ず組み込んでください。
最後に、カタログスペックや価格表からは見えてこない、実際のユーザー動向に基づいた視点を提供します。市場調査によると、DJIの農業ドローンシリーズにおいて、T10を購入したユーザーの一部が、後に上位機種である「T30(30Lタンク搭載)」へ買い替える、あるいは買い増しするケースが見られます。ここから、T10という機体の「適性」と「限界」が浮き彫りになります。
T10の最大のメリットは「コンパクトさ」と「1人で運用できる手軽さ」です。軽トラックの荷台にそのまま載り、バッテリーも片手で持てるサイズです。しかし、タンク容量8L〜10Lというのは、1回のフライトで散布できる面積が約1ha(1町歩)程度に限られることを意味します。もし、管理する圃場が平坦で広大(例えば一度に5ha以上散布するような水田)な場合、T10では「着陸→薬液補充→バッテリー交換→離陸」というサイクルを何度も繰り返すことになります。
「安価だから」という理由だけで大規模農家がT10を選ぶと、この交換の手間が作業効率のボトルネックとなり、「結局T30にしておけばよかった」という後悔につながります。逆に、中山間地域の棚田や、果樹園のように複雑な地形、あるいは飛び地が多い小規模な圃場では、T30のような巨大な機体(展開時約3m近い幅)は取り回しが悪く、T10の小回りの良さが圧倒的な武器になります。
また、T10とT30ではバッテリーの互換性がありません。T10からT30へステップアップする場合、高額なバッテリー資産をすべて買い直すことになるため、この「乗り換えコスト」は甚大です。
したがって、導入時の機種選定では、現在の価格差(T10セット約190万 vs T30セット約290万)だけで判断せず、「自分の圃場の形状と規模において、10Lタンクでのピストン輸送が苦にならないか?」を真剣にシミュレーションすることが、長期的なコストパフォーマンスを最大化する鍵となります。T10は「入門機」ではなく、「小規模・分散圃場に特化したプロ機」として捉えるのが正解です。

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