トリフルラリンはジニトロアニリン系の土壌処理型除草剤で、雑草の発芽時に幼芽・幼根から吸収され、分裂組織の細胞分裂を抑えて生育を止める性質が整理されています。[]
もう少し噛み砕くと、細胞分裂の途中(有糸分裂中期)で紡錘体の働きを阻害し、隔膜形成が止まって多核細胞が生じる、という説明が公的資料に明記されています。[]
このタイプは「すでに大きくなった雑草を枯らす」より、「これから出る雑草の立ち上がりを潰す」ほうが得意なので、播種・定植前後の土壌表層で“効く層”を作る意識が重要です。[]
現場でのポイントは、処理後に薬剤が土壌表面に偏っていると、効きムラだけでなく揮散や光分解でロスが出やすくなる点です。[]
一方で、土壌に強く吸着しやすい性質が示され、圃場での溶脱はほとんど起こらない(多くが0~15cm層、とくに0~7.5cm層にとどまる)という試験整理もあります。[]
つまり、下に流れて消えるというより、「表面で逃げる」「表層に残って条件次第で残留が伸びる」という見方のほうが実態に近く、作業設計(散布→混和→鎮圧など)で差が出ます。[][]
トリフルラリンは揮散しやすい側面があり、湿った土壌表面に処理された場合、短時間~数日で大きな割合が揮散した例が紹介されています。[]
同じ資料では、混和(耕うんして土と混ぜる)条件だと揮散による消失が小さかった例も示され、散布後の扱いが効き目を左右することが読み取れます。[]
言い換えると「散布して終わり」ではなく、どの深さにどれだけ均一に入れたかで、雑草に当たる“薬剤帯”も、空気へ逃げる分も変わります。[]
ただし、混和が常に正解とは限りません。
日本の研究報告では、後作を考慮すると、高冷地で低温期に向かう施用では土壌混和処理を避けるべき、という趣旨の指摘があります。[]
低温や乾燥条件では分解が進みにくくなりうるため、混和で“土中に保持”されるほど残留が伸び、次作への影響が出やすい—という発想は、輪作体系の現場では無視できません。[][]
実務で迷ったときの判断材料(考え方の型)を、箇条書きで置いておきます。
・揮散ロスを抑えたい:散布後の放置時間を短くする/表層に残しっぱなしにしない方向を検討する。[]
・後作リスクを抑えたい:低温期に入る前の施用、混和の深さ、作付け間隔を慎重に設計する。[]
・効きムラを減らしたい:土塊が多いと薬剤帯が切れやすいので、砕土と均一化を優先する(薬剤そのものの特性上、表層の均一性が効きに直結しやすい)。[]
トリフルラリンは“光で壊れやすい”性質がはっきりしており、緩衝液中の光分解試験では推定半減期が3.7時間(東京・春の太陽光換算で0.79日)と整理されています。[]
自然水でも光で急速に分解し、推定半減期5.3時間(東京・春の太陽光換算で1.1日)という整理があり、露出状態だと短命になりやすいと考えられます。[]
この「表面だと短命」という性質が、逆に言うと“土中に入ると話が変わる”伏線になります。[]
土壌中では、温度・水分・好気/嫌気条件などで分解速度が大きく変わることが資料で示されています。[]
たとえば好気的条件(開放系)の容器試験では、土壌種類によって半減期が116日、189日、201日とばらついた整理があります。[]
さらに、嫌気的条件にすると半減期が短くなる例(砂壌土59日、壌土25日、埴壌土35日)が示され、湛水条件では分解が速いという整理とも整合します。[]
ここが「意外にブレる」ポイントで、同じトリフルラリンでも“置かれた環境”で残り方が別物になります。[]
しかも土壌水分の影響として、圃場保持容水量200%では24日までに84%消失したのに対し、50~100%では非常に遅く、0%ではほとんど分解されなかった、という整理もあります。[]
つまり、乾きやすい畑で表層が乾燥→分解が進みにくい→(混和していればなお)残留が伸びる、という“逆転現象”が現場では起こり得ます。[]
「残留=悪」ではありませんが、後作や周辺作物との関係では管理項目になります。
公的評価資料では、国内の畑地条件の容器内試験で半減期23~41日、水田条件では10~11日という整理があり、栽培形態や水管理の差が効いてくることが読み取れます。[]
トリフルラリンは食品健康影響評価でADI(一日摂取許容量)が0.024 mg/kg体重/日と設定された整理があり、根拠はイヌの慢性毒性試験の無毒性量2.4 mg/kg体重/日を安全係数100で割ったもの、と記載されています。[]
各種毒性試験では腎臓や肝臓への影響、貧血などが観察された一方、繁殖能への影響、催奇形性、問題となる遺伝毒性は認められなかった、という整理も同資料にあります。[web
ただし作業者目線では、モルモットでの皮膚感作性が陽性だったと明記されており、「触れない」前提の装備が必要です。[]
実務の対策は“いつものPPE”に見えて、感作性(アレルギー化)の観点を入れると優先順位が変わります。[web
・ニトリル等の耐薬品手袋、長袖、ゴーグル(飛沫対策)を基本セットにする。[]
・同じ人が繰り返し原液に触れる運用(希釈・充填担当の固定化)は感作リスクを積み上げやすいので、手順・器具で接触機会を減らす。[]
・皮膚についた場合の洗浄手順(石けん+流水、汚染衣類の隔離)を、作業前に共有しておく。[]
また、土壌中での挙動として吸着が強いことが示され「移動しにくい」傾向はある一方で、魚介類への最大推定残留値が試算されているなど、水系への視点も資料に含まれます。[]
用水路・ため池が近い圃場では、散布機の洗浄排水や土砂流亡の管理を“作業工程”として組み込むほうが、後からの手戻りが減ります。[]
検索上位の解説は「土壌混和が大事」「発芽前に使う」になりがちですが、実際に事故が起きやすいのは、低温期・乾燥・後作が重なる局面です。[][]
前述の通り、土壌水分が少ないと分解がほとんど進まない整理があり、さらに高冷地の低温期に向かう施用では混和を避けるべき、という示唆もあります。[][]
ここを合わせると、「低温で分解が鈍い」「乾いて分解が止まる」「混和で土中に保持される」→結果として“残留が伸び、後作で症状が出る”という三すくみが成立します。[web
この三すくみを崩す設計案(あくまで考え方)は次の通りです。
・低温期に入る直前の処理を避け、分解が動く期間(温度・水分がある時期)に寄せる。[][]
・乾燥しやすい圃場では、処理後の土壌水分の見込み(雨待ち、灌水の可否)を含めて作業日を決める。[]
・輪作で感受性の高い作物が控えている場合は、混和深さや処理量の設計を“後作起点”で見直す(混和すれば効く、の片道思考をやめる)。[]
意外と見落とされるのが、「同じ圃場でも場所で条件が違う」点です。
枕地・畦際は踏圧や土質差で水分・有機物・砕土性が変わり、薬剤の“残り方”が局所的に変わる余地があります(吸着が強い性質があるため、局所差がそのまま効きムラや残留ムラに繋がりやすい発想です)。[]
後作障害の聞き取りで「畑の一部だけ変」というケースが出たら、作業ムラだけでなく、この局所条件差も疑うと原因に当たりやすくなります。[]
土壌中での消長と後作リスクを読む(公的評価資料・作用機作・光分解・半減期などがまとまっている)
環境省(参考資料)トリフルラリンの評価資料PDF
高冷地・低温期に向かう施用での留意(後作を考慮した混和回避の示唆がある)
農研機構(Agriknowledge)土壌中のトリフルラリンの残留消長に関する報告PDF

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