整地機(レベラー系)の基本原理は、圃場表面の土を「削って運ぶ」ブレード(排土板)を、一定の高さで保ちながら走ることで、高い所の土を低い所へ配って高低差を詰めていく点にあります。
つまり、仕上がりは整地機そのものの性能だけでなく、「ブレード高さを一定に保てる走行ができているか」でほぼ決まります。
現場で結果を分けるのは、走行ラインと重ね幅です。1回で勝負しようとして走行間隔を広げると、土の移動量が足りず「うねるような高低差」が残りやすいです。
参考)水稲乾田直播栽培の規模拡大に向けたGNSS を利用した均平作…
逆に、重ねを確保して土の移動量を稼ぐと均平は良くなりますが、今度は作業時間が伸びるので、圃場条件(粘土質・乾湿・残渣量)に合わせた落としどころが必要です。
意外と盲点なのが「均平=見た目の平らさ」ではない点です。乾田直播などでは均平化が特に重要で、排水・苗立ち・除草剤効果などに影響するため、作業としての均平は“後工程の安定化”に直結します。
このため、圃場のどこを基準に削るか(高い所を基準に削るのか/平均に寄せるのか)を決めずに走り出すと、均平のつもりが「土を無駄に往復させただけ」になりやすいです。
整地機をトラクターで扱うとき、作業品質と同じくらい重要なのが安全です。農業機械による死亡事故の割合が高い状況が続いており、安全機能の強化が求められていることが明記されています。
特にPTOは、トラクターに装着した作業機を駆動する回転軸で、ここが絡む事故は被害が大きくなりやすい領域です。
近年の制度では、乗用型トラクターに「離席するとPTOへの動力が遮断される」PTOインターロックなどの装備を盛り込んだ検査基準強化が進められています。
現場運用としては、機械の安全装備の有無にかかわらず、整地機周りで降車する可能性がある作業(詰まり除去、リンク調整、目視確認)を想定し、「降りる=PTO停止・エンジン停止(または確実な遮断)」を作業手順に組み込むのが実務的です。
三点リンク側の注意としては、整地機は姿勢で仕事をするため、トップリンクと左右リンク(リフトロッド)の“初期設定”が不十分だと、走行中にブレードが片効きして、均平が出ません。
また、整地の途中でリンクを頻繁に触る人ほど、焦って降車・再乗車を繰り返しがちなので、最初の試し走りで「どの程度の操作で、どれくらい土が動くか」を掴んでから本走行に入るのが安全面でも効きます。
参考:農業機械安全性検査の見直し(PTOインターロック等の強化点、PTOの定義)
https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/iam/168552.html
整地機の作業幅は「広いほど得」と見られがちですが、均平の観点では、作業幅の広さは“トラクターが安定して同じ高さを保てるか”とセットです。
作業幅が広いほど、わずかな車体のロール(左右の傾き)や沈み込みが、ブレード端の高さ差として増幅し、結果として片側だけ削る・片側だけ土を運ぶ状態になりやすくなります。
段取りの基本は、いきなり全面を仕上げず「高い所の見極め→土を運ぶ方向を決める→均平の仕上げ走行」という順番で土の移動を設計することです。
研究の整理でも、均平は排水の良化、苗立ちの均一化、除草剤の効きの安定、鳥害の低減などのメリットが挙げられており、段取りの良し悪しが後工程のリスクに直結します。
作業幅を決める実務のコツは、カタログの適応馬力だけでなく、圃場の“弱いところ”で破綻しない組み合わせに寄せることです。たとえば、湿りやすい区画や暗渠付近で沈む圃場では、作業幅を欲張るより、走行速度を落としてブレードを安定させた方が均平が出ることがあります。
結果として、広い作業幅で高速に走って「手直し2回」より、無理のない作業幅で「仕上げ1回」の方がトータルで速いケースが出ます。
均平は「きれいにする作業」ではなく、直播や水管理の成立条件を作る作業としての価値が大きいです。乾田直播では、代かきをしない体系でレーザー均平機により圃場の均平化を行うことが示されており、均平が作業体系の要所になっています。
また、圃場の高低差を抑える目安として10cm以内とする記述があり、規模が大きいほど精密な均平が必要になる点も押さえるべきポイントです。
ここで意外なのは、「均平=稲作のため」だけでは終わらない点です。均平が出ると排水や水深のムラが減るため、同じ圃場でも機械作業の安定性(スタックしにくい、走行ラインが乱れにくい)に波及します。
つまり、整地機の運用を改善することは、播種・移植・防除以前に、作業そのものの“事故リスク”や“やり直し工数”を減らす投資になり得ます。
さらに、GNSSやRTKなど高精度測位を使った均平技術では、レーザーレベラーと同等の均平度が確認された例や、準備時間を含めた短縮などの報告があり、均平が「熟練の勘」から「再現できる手順」へ移りつつあります。affrc.maff+1
大規模化や人手不足が進むほど、整地機の話が“機械選び”ではなく“仕組み作り”に近づくのが、この分野の面白いところです。
参考)https://www.affrc.maff.go.jp/docs/project/genba/pdf/140416.pdf
参考:乾田直播でのレーザー均平機と均平目安(高低差10cm以内等)
https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/files/dry-seeding_rice_v3.1.pdf
整地機の均平が急に崩れたとき、原因は「土」より「機械のガタ」であることが少なくありません。ブレードやリンクの摩耗、ピンの痩せ、ガタによる姿勢の遅れは、一定高さを維持できない=均平が出ない、に直結します。
このため、シーズン前点検はエンジン・油圧だけでなく、整地機側の“遊び”を数値感覚で潰すのが実務的です(ピンの摩耗、穴の楕円化、油圧ホースのにじみ等)。
安全面では、制度としてもトラクター等の安全性向上が強調され、離席時のPTO遮断などの装備が検査基準で強化されています。
ただし、どれだけ装備が進んでも、最後に事故を防ぐのは手順なので、以下は最低限ルール化したいところです。
・整地機の詰まり除去は、PTO停止→エンジン停止(または確実な動力遮断)→キー管理→完全停止確認の順で行う。
・圃場内での調整は「作業機を接地してから」が基本(油圧が抜けたときの落下リスクを避ける)。
・単独作業ほど、合図・連絡が取れないため、点検や調整を“圃場の外”で済ませる設計に寄せる(工具・予備ピン・清掃具の常備)。
均平の品質を上げることと、安全手順を厚くすることは、実は同じ方向を向いています。落ち着いて同じ高さを保って走る人ほど、降車の回数も減り、ヒヤリハットが減るからです。
参考:農業機械の安全な使い方(PTO停止せず離席時の事故、多発の注意)
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/tukuba/attach/pdf/06anzen_online.html-10.pdf

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