酪農家 年収 自営を考えるとき、まず押さえておきたいのが「平均値」と「どの数字を見ればいいか」です。
農林水産省の「農業経営統計調査」によると、酪農経営における1経営体あたりの農業所得の全国平均はおよそ735万8,000円と示されています。
同じく営農類型別経営統計では、個人経営の酪農で農業所得が約820万円、粗利益が約6,140万円、経費が約5,320万円というデータもあり、売上規模に比べて利益率は10%台前半に落ち着くケースが多いことが分かります。
一方で、酪農従事者を含む「畜産作業員」というくくりの賃金統計では、平均年収は約374.4万円とされており、これは雇用されている側の数字です。
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雇用と自営を混同すると「酪農は年収が低い」という印象になりがちですが、自営酪農家は粗収益規模が大きく、年によって振れ幅はあるものの、数字上は一般的な会社員より高い水準に到達している事例も少なくありません。
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ただし、2023年の酪農経営の平均所得は183万2,000円と報告されており、飼料価格高騰などで一時的に大きく落ち込んだ年もあるなど、変動リスクは非常に大きい職種です。
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酪農家 年収 自営を語るうえで、地域差、とくに北海道と本州の違いは避けて通れません。
酪農経営者の経常利益を地域別に見ると、日本全国平均が約700万円に対し、北海道は1,400万円、本州では300万円という試算が紹介されており、同じ「酪農家」でも所得に3〜4倍の差が出ることがあるとされています。
これは単純に乳価が高いからではなく、飼料原料のトウモロコシ(デントコーン)の自給率が高く、広い土地を活かして飼養頭数を増やしやすいなど、コスト構造と規模の両方で北海道が有利な条件を持っているためです。
高所得酪農経営の分析では、所得率30〜35%のグループと10〜15%のグループで、売上だけでなく、飼料費や減価償却費のバランス、麦や飼料用作物の導入状況などに明確な違いがあることが示されています。
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収入金額が8,100万円の農家と4,500万円の農家では、世帯農業所得に2倍以上の差がついており、同じ地域・同じ酪農でも「規模」「コスト管理」「作付け構成」によって年収の結果が大きく変わることがわかります。
参考)データの中に潜む高所得酪農経営の秘訣を見つけた
北海道の大規模酪農では、1経営体の収入金額が4億5,000万円超で、世帯農業所得が2,880万円に達する事例もあり、所得率自体は6.5%と高くないにもかかわらず、絶対額の大きさで高年収を実現しているのが特徴的です。
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酪農家 年収 自営で検索すると「1,000万円可能」「2,000万円も夢ではない」といった表現が見つかりますが、それを実現するには、いくつか共通した経営戦略が存在します。
まず、大規模経営では収入金額が4億円を超える事例もあり、その中で世帯農業所得が2,000万〜3,000万円台に達していることが報告されています。
ここで重要なのは、単純に乳牛の頭数を増やすだけでなく、飼料費・減価償却費・雇用人件費の比率をコントロールし、所得率を一定以上に保つことです。
高所得の酪農経営では、以下のようなポイントがしばしば挙げられます。
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特に興味深いのは、「酪農家は〇〇円の現金を絶対持っておくべき」「借金は〇〇円までしても大丈夫」といった金融リテラシーに踏み込んだ解説が登場している点で、これは通常の就職情報ではあまり語られない自営ならではの視点です。
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年収1,000万円クラスを安定して維持するためには、乳価だけに頼るのではなく、投資負担と返済計画を長期的に設計し、「良い年の利益を使い切らない」キャッシュフロー管理が欠かせません。
参考)https://www.maff.go.jp/j/kobetu_ninaite/attach/pdf/index-51.pdf
酪農家 年収 自営は一見高収入に見えても、労働時間で割ると印象が変わることが多いです。
農業全体のデータでは、酪農の平均労働時間は年間5,363時間、時給換算で約937円とされており、他の農業形態と比べても長時間労働であることが分かります。
別の統計では、酪農の1時間あたり所得が全国平均で2,509円、北海道で3,050円、100頭以上層では4,647円といった試算もあり、規模が大きくなるほど時給ベースでも効率が上がっていく傾向が見て取れます。
しかし、平均所得183万2,000円という年もあるように、飼料高騰や乳価の影響で一気に収入が圧縮されるリスクを抱えており、労働時間がほとんど変わらないなかで実質時給が大きく下がる可能性も否定できません。
また、牧場主の休日確保は依然として難題で、搾乳や給餌は365日続くため、ヘルパー制度や雇用スタッフを活用しない限り、週休2日どころか「半日休めるかどうか」という現場も珍しくありません。
参考)酪農家になるには – 酪農家になりたい
このため、自営で高い年収を目指す場合でも、「時給換算」「休日の確保」「家族の負担」といった観点を織り込んで事業計画を立てないと、数字だけの魅力に振り回されることになります。
検索上位の記事ではあまり触れられないものの、酪農家 年収 自営だからこそ取り入れやすい「副次的な収入源」やリスク分散のアイデアも存在します。
例えば、乳製品の一次加工(チーズ、ヨーグルト、ジェラート)を自社ブランドとして販売する6次産業化は、売上単価を上げる手段として知られていますが、原料乳をすべて加工に回す必要はなく、一定比率だけを加工品に振り向けることで、価格交渉力を高める役割も持ちます。
観光牧場や酪農体験ツアーの導入は、天候に左右されやすい農業所得に対して、入場料や体験料という別の収入柱を持つことにつながり、教育目的のプログラムや修学旅行との連携で平日収入を確保している例もあります。
意外なところでは、酪農経営の詳細な収支データやノウハウをオンラインで発信し、コンサルティング的な役割を担っている酪農家も出てきています。
高所得酪農経営の収支内訳を見せながら、「この規模なら飼料費はここまで抑えられる」「減価償却費のピークは何年目に来る」といった具体的な数字を共有することで、新規就農希望者や規模拡大を目指す農家からの相談料を得ているケースです。
こうした情報発信型の副業は、現場感覚を持つ自営酪農家だからこその強みであり、同時に自分の経営を客観的に見直すきっかけにもなります。
酪農家の平均年収や農業所得の基礎データを確認するには、農林水産省の「農業経営統計調査(営農類型別経営統計)」が有用です。
参考)https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/noukei/einou/pdf/einou_23.pdf
農林水産省 農業経営統計調査(営農類型別経営統計)公式ページ