農業現場の「パッカー(包装用)」は、機械メーカー名や製品名として使われることもあれば、包装工程全体(詰める・整列させる・封かんする)を指して雑に呼ばれることもあります。混乱しやすいので、本記事では“袋やフィルムで作物を包んで出荷形態を作る工程に使う機械・道具”をまとめて「パッカー(包装用)」として扱います。検索でも「農業用パッカー」が資材・部材の販売ページに多数出てきますが、包装機(機械)と留め具系(部材)が同じ語で並ぶことがある点は注意が必要です。
包装機を導入する意義は、速さだけではありません。包装作業が単純化されると、少人数で回せるようになり、人件費や人手不足の圧力に対して“工程で返す”選択肢が増えます。実例として、機械包装で包装時間が短縮できるという試算・事例が公開されています。
参考)機械包装効率化のご提案 - 株式会社ベルグリーンワイズ|野菜…
一方で、導入が失敗しやすいポイントは「作物の姿」と「袋の仕様」です。葉物・長物・根菜・果菜では、必要な袋寸法、口の剛性、フィルム厚、滑りやすさが違い、同じ包装機でも得意不得意が出ます。卓上型の多機能包装機のように、野菜・果物など多品目の包装に対応しやすいコンセプト製品もありますが、万能ではなく、最終的には“袋・内容量・見栄え・出荷規格”に合わせた段取りが必要になります。
参考)包装
現場での最短ルートは、次の順で確認することです。
この順番を逆にすると、機械はあるのに袋が合わず、結局「手作業が残る」状態になりやすいです。
青果の包装では「乾燥を防ぐ」だけだと、逆に袋内が湿って結露し、カビや腐敗リスクを上げることがあります。ここで効いてくるのが、フィルムのガス透過性や水蒸気の抜けやすさという設計思想です。MA(Modified Atmosphere)包装は、フィルムのガス透過量を調整して袋内を低酸素・高二酸化炭素側に寄せ、鮮度保持につなげる考え方として整理されています。
意外に見落とされがちなのは、「同じ作物でも季節で呼吸量が変わる」点です。収穫直後の温度、予冷の有無、店頭での置かれ方で袋内環境が変わるため、“最適な袋”も固定ではありません。鮮度保持フィルムの説明でも、包装内部のガス濃度を適度に保つことや、水蒸気を外へ逃がして腐敗・カビを抑える、といった方向性が示されています。
参考)鮮度保持フィルムの取り組み ┃三井化学
そのため、フィルム選びは「高機能=正解」ではなく、作物別に狙いを決めるのが現実的です。
また、袋の設計は「シール方式」とセットです。ガス透過性が高いフィルムは、密閉しても袋内ガスが入れ替わりやすく、狙った雰囲気になりにくい場合があります。研究レベルでは、シールの仕方が包装内のガス挙動に影響する旨が示されています(※現場では“袋の種類とシール条件の相性”として体感される部分)。
包装のクレームは、作物そのものより「封が甘い」「袋が開いていた」「汁が漏れた」「見た目が汚い」で発生しやすいです。ここを支えるのがシーラーで、単体機として使うだけでなく、給袋包装機やピロー包装機の“シール部”として組み込まれることもあります。
シール品質が安定しない原因は、温度設定だけではありません。袋口に水分や土、微細な葉片が噛む、袋の厚みがロットで微妙に違う、作業者が引っ張ってシール面が歪む、など「現場の小さな揺らぎ」が積み重なります。連続式やエンドレス方式など、噛み込み時に停止する設計や確実に包装できる設計思想が紹介されており、機械選定の観点になります。
参考)シーラーとは?|製造工程・商品種別解説
“意外に効く”のは、シール部の清掃ルールを「作業の合間」ではなく「数量基準」で決めることです。例えば、葉物で水滴が多い日は、一定袋数ごとにシール面を拭く方が、トラブル停止が減りやすいです。これは機械の話というより、工程設計の話ですが、結果的に包装機の能力を引き出します。
また、真空・脱気系のシールでは方式が異なります。ノズル式真空包装機は、袋口にノズルを差し込み、真空ポンプで脱気してからシールする方式として説明されています。
参考)真空・脱気シーラーとは
青果の出荷で“真空が常に正解”ではありませんが、加工・カット・下処理済み品、匂い移りを抑えたい用途、体積を減らしたい用途では候補になります(ただし作物の呼吸や潰れやすさとの相性確認が必須です)。
農産物の包装で「衛生」と聞くと、消毒や洗浄だけを想像しがちですが、実務では“資材の状態確認”が効きます。厚生労働省資料では、農産物直売所の衛生管理で、容器包装の汚れ、冷蔵・冷凍庫管理不良による微生物増殖、品質・包装のチェックなどが論点として挙げられ、重要管理点がない前提でも「一般衛生管理」を基本に計画・記録を回すことが推奨されています。
現場に落とすと、次のような「確認ポイントの固定化」が強いです。
このチェックは“誰かの注意力”に頼ると崩れるので、「どのタイミングで・誰が・何を見るか」を決め、記録が残る形にするのがコツです。
資材に関しては、リサイクル表示の有無などもチェック対象になり得ると示されています。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000604216.pdf
環境対応の観点でも、食品用器具・容器包装で再生プラスチック材料を使う際の安全性確保に関する国の指針が存在し、単に“エコっぽい”だけで選ぶのが危険な領域であることが分かります。
参考)https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/pura.pdf
検索上位の情報は、包装機の紹介や「便利」「省力化」といった説明が中心になりやすい一方、現場で本当に効くのは“どこで詰まるか”の設計です。包装工程は、だいたい次のどこかで詰まります。
ここでのポイントは、「包装機の能力」ではなく「最遅工程」を見つけて手当てすることです。ヤンマーの出荷工程例でも、パック詰→フィルム包装のように工程が分かれており、包装は全体の一部として組み込まれます。
参考)https://www.yanmar.com/jp/agri/products/facilities/other/sort_boxing_shipping/role-example.html
つまり、包装機を強くしても、その前後(計量・仕分け・箱詰・冷蔵)の能力が弱いと、結局、現場は楽になりません。
“詰まり学”としての具体策はシンプルです。
この設計は機械メーカーのカタログに載りにくいですが、現場の生産性に直結します。
衛生管理の考え方(一般衛生管理を計画・記録で回す)も、包装ライン設計と相性が良いです。
「誰が・いつ・何を確認したか」が残ると、クレーム時に原因が追いやすくなり、再発防止のスピードが上がります。
衛生管理(直売所向け)で容器包装チェック等の考え方がまとまっている。
農産物直売所におけるHACCPの考え方を取り入れた衛生管理の手引書(PDF)
青果物包装とMA包装(ガス透過量調整など)の背景・考え方。
食品ロスの削減に貢献する青果物包装(alic)
食品用容器包装で再生プラスチックを使う際の安全性確保の指針(制度・要件の理解に有用)。
食品用器具及び容器包装における再生プラスチック材料の使用に関する指針(PDF)