乗る草刈機(乗用モア)を導入する際、最初に検討すべきは「圃場の地形」と「草の質」に合わせた種類の選定です。広大な敷地を歩いて草刈りするのは重労働ですが、乗る草刈機を選ぶことで作業時間を数分の一に短縮できます。しかし、選定を間違えると「坂を登らない」「ぬかるみで動けなくなる」といったトラブルに直面します。
まず、走行システムには大きく分けて「ホイールタイプ(タイヤ)」と「クローラータイプ(キャタピラ)」の2種類があります。
次に重要なのが「刈刃の駆動方式」です。
作業効率を最大化するためには、カタログスペックの「最大作業能率(a/h)」だけでなく、「登坂能力(対応角度)」と「最低地上高」を確認することが重要です。特に果樹園などでは、木の根や凹凸を乗り越えるために十分な最低地上高が必要です。また、HST(無段変速機)搭載モデルであれば、クラッチ操作なしでペダル一つで速度調整と前後進ができるため、長時間の作業でも疲労が少なくて済みます。
農林水産省:農作業安全対策のページ(草刈機の事故防止について)
日本の農業現場で支持されている乗る草刈機の人気メーカーは、それぞれ得意とする分野や独自の機能を持っています。主要メーカーの特徴と価格帯を比較することで、予算に合った最適な一台が見えてきます。ここでは代表的なメーカーであるオーレック、筑水キャニコム、クボタについて深掘りします。
| メーカー | 代表的な愛称・シリーズ | 特徴 | 想定価格帯(新品) |
|---|---|---|---|
| オーレック (OREC) | ラビットモアー | 国内シェアトップクラス。耐久性が高く、部品供給も安定。プロ農家の定番。 | 60万〜130万円 |
| 筑水キャニコム | 草刈機まさオ | ユニークなネーミングと低重心設計。「F1まさオ」など斜面に強いモデルが充実。 | 70万〜150万円 |
| クボタ (Kubota) | 以下のシリーズなど | 総合農機メーカーとしての信頼性とサポート網。操作性が良く初心者にも扱いやすい。 | 80万〜200万円 |
| アテックス (ATEX) | 刈馬王(カリオ) | ハンマーナイフ式に強み。背の高い草や硬い草の粉砕能力が高い。 | 90万〜160万円 |
価格の考え方については、単にイニシャルコスト(購入価格)だけで判断しないことが重要です。安い海外製モデルも存在しますが、部品供給が数年で止まってしまうリスクがあります。国内主要メーカーの製品は、10年以上前のモデルでも部品が出るケースが多く、リセールバリュー(中古で売る時の価格)も高値で安定しています。例えば、100万円で購入しても5年後に30万円で売れるなら、実質コストは安くなります。「資産価値」としてメーカーを選ぶ視点も大切です。
新品の価格が高騰しているため、中古の乗る草刈機を検討する方も多いでしょう。しかし、草刈機は過酷な環境で使用されるため、トラクターなどと比較しても消耗が激しい機械です。中古選びで失敗しないためのチェックポイントと、購入後の必須メンテナンスについて解説します。
中古選びのチェックポイント
草の汁は酸性を含んでおり、刈刃を覆う鉄製のカバー(デッキ)を腐食させます。中古車を見る際は、デッキの裏側や溶接部分に穴が開いていないか、薄くなっていないかを必ず確認してください。再塗装されていても、ドライバーの柄などで軽く叩くと音で薄さがわかります。デッキの交換は十数万円かかる高額修理になります。
冷間時(エンジンが冷えている状態)での始動性を確認します。一発でかからない場合、キャブレターの詰まりや圧縮漏れの可能性があります。また、アイドリング中に金属的な打音がしないか、排気ガスが白くないか(オイル上がり・下がり)もチェックしてください。
乗用草刈機の心臓部であるHSTは、修理費用が最も高い部品の一つです。試乗して、坂道を登る際に力が抜けるような感覚がないか、変速レバーを中立にした時にピタリと止まるかを確認します。反応が鈍い場合、HST内部が摩耗している可能性があります。
エンジンを止めた状態で、刈刃の軸を手で揺すってみてください。ガタつきがある場合、ベアリングの交換が必要です。これを放置すると、使用中に軸ごと脱落する危険な事故につながります。
購入後の必須メンテナンス
「畑と畑の間を移動するだけだから」と、ナンバープレートのない乗る草刈機で公道を走ることは法律で禁止されています。乗る草刈機は、法律上は「小型特殊自動車」に分類されることが多く、公道を走行するためには厳格なルールを守る必要があります。違反すると「無免許運転」や「整備不良」として重い罰則が科せられます。
公道走行に必要な3つの条件
多くの乗用草刈機はこの規格に収まりますが、最高速度が出すぎる改造車などは認められません。また、公道走行対応モデルとして、「ヘッドライト」「ウインカー(方向指示器)」「バックミラー」「ホーン(警音器)」などの保安部品が装備されている必要があります。保安部品がないモデルで公道を走ることはできません。
お住まいの市区町村役場で手続きを行い、緑色のナンバープレート(課税標識)の交付を受ける必要があります。これは公道を走らない場合でも、所有しているだけで軽自動車税(種別割)の課税対象となるため、本来はすべての所有者が登録すべきものです。年間数千円程度の税金がかかります。
小型特殊自動車を運転するには、「普通自動車免許」または「小型特殊免許」が必要です。原付免許では運転できません。また、大型特殊免許があれば運転可能です。
自賠責保険への加入
公道を走行する場合、法律上の強制保険である「自賠責保険」への加入義務はありません(農耕作業用自動車の場合)。しかし、万が一の人身事故に備えて、任意保険やJAの共済などに加入することを強くおすすめします。草刈機の刃が回転したまま公道を走ることは絶対に避けてください。移動中は必ず刈刃の回転を止め、デッキを持ち上げた状態で走行するのがルールです。
最近では、メーカー側も「公道走行対応モデル」のラインナップを強化しています。畑が点在している農家にとっては、トラックに積載して移動する手間が省けるため、購入時に公道走行スペックを満たしているかを確認することは非常に重要です。
最後に、スペック表には現れにくいですが、長期的に使用する上で極めて重要な「振動対策」と「疲労軽減」について解説します。これは検索上位の記事ではあまり深く触れられていない視点ですが、農家の健康寿命を左右する重大な要素です。
乗る草刈機は、凹凸のある地面を走行しながら、高速で刃を回転させるため、全身に激しい振動を受けます。この振動を長時間、長期間受け続けると、手足のしびれや血行障害を引き起こす「振動障害(白ろう病など)」のリスクが高まります。また、安価なモデルの硬いシートは、腰椎への負担が大きく、慢性的な腰痛の原因となります。
見落としがちな「シート」と「ハンドル」の性能
高級モデルや最新機種には、座席の下にサスペンションやダンパーが装備されており、突き上げ衝撃を吸収してくれます。もし現在使用している草刈機の座り心地が悪い場合は、市販の「ゲルクッション」や「高反発座布団」を敷くだけでも疲労度は劇的に変わります。
ハンドルや足元のステップがゴムマウントでフローティング(浮いた状態)されているモデルは、手足への微振動を遮断してくれます。購入時の試乗では、平地だけでなく、あえて少し荒れた場所を走らせてもらい、手元や腰に来る振動の質を確認してください。
エンジンが座席の下にあるタイプは、夏場の作業でお尻や太ももがエンジンの熱で蒸れて不快になりがちです。遮熱板がしっかり設置されているか、エンジンの熱風が作業者に当たらない設計になっているかも、快適な作業のための隠れたチェックポイントです。
また、疲労軽減は「事故防止」にも直結します。疲労が蓄積すると集中力が切れ、傾斜地でのハンドリングミスや、ブレーキの踏み遅れにつながります。「若いから大丈夫」「安い機種で十分」と考えず、「身体を守るためのコスト」として、振動対策がしっかりした上位モデルを選ぶことは、結果的に長く農業を続けるための賢い投資と言えるでしょう。
まとめ
乗る草刈機は、単なる草刈りの道具ではなく、農地管理の時間を生み出すパートナーです。地形に合った駆動方式、信頼できるメーカー、資産価値、そしてご自身の健康を守る振動対策。これらを総合的に判断し、価格だけでなく「10年使う」視点で選ぶことが、後悔しない買い物の秘訣です。まずは最寄りの農機具店で、実際にシートに座ってみることから始めてみてはいかがでしょうか。

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