その独特な形態・生態・防除法を徹底解説。
あなたの農園は大丈夫ですか?
スイカズラが農園の近くに繁茂しているなら、ニジュウシトリバガは成虫のまま冬を越して春に産卵し、知らぬ間に発生数が増えています。
ニジュウシトリバガは、チョウ目ニジュウシトリバガ科に属する小型の蛾です。 開張はわずか13mm前後と、500円玉の直径(約26mm)のちょうど半分ほどのサイズです。 黄褐色の体色に、各翅脈が毛で覆われた羽毛状の翅が特徴で、骨だけになった扇子のような独特のシルエットをしています。insects+1
名前の由来は翅の構造にあります。前翅・後翅の4枚それぞれに6本の羽軸状の枝が分かれており、4×6=24本の羽毛状枝が生まれます。 英名は「Many-plumed Moths(たくさんの羽毛の付いた蛾)」といい、和名とほぼ同じ意味です。 つまり「ニジュウシトリバガ」とは「二十四本の鳥の羽が付いている蛾」という、形態をそのまま表現した名前です。mushinavi+1
正式な和名は近年「マダラニジュウシトリバ」に改称されていますが、農業現場や資料では「ニジュウシトリバガ」という名称が引き続き広く使われています。 日中は葉の裏側でじっとしていることが多く、見慣れない農家が気づかず見落とすケースもあります。insects+1
知っておくべき事実があります。
成虫が越冬します。
これは重要です。
一般的な害虫は卵や蛹で冬を越すことが多いですが、ニジュウシトリバガは成虫のまま厳冬期を乗り越え、翌春に産卵を開始します。農閑期に「害虫はもういない」と判断して環境整備を怠ると、春の発生を見逃す原因になります。
発生時期は主に6〜8月と10月〜翌4月の2つの山があり、年間2〜3回発生します。 秋に成虫になった個体はそのまま越冬し、翌年の発生源になります。夜行性ですが、外灯に飛来することは少ないため、光トラップでの捕捉効率は低めです。
幼虫の発生時期は5〜7月が中心で、終齢幼虫の体長は7〜8mmほどです。 はがきの短辺(約10cm)の約10分の1程度と極めて小さい。小さいうえに、スイカズラの蕾の中に潜り込んで食害するため、発見が遅れがちです。
蛹化は地表で枯れ葉などを綴って行われます。
参考)https://www.imokatsu.com/imo-madaranijuushitoriba.htm
分布は北海道・本州・四国・九州と広域にわたり、平地から山地まで汎く生息しています。 農村部の里山周辺や農園の境界部に自生するスイカズラがあれば、どこでも発生しうる普通種です。
参考:発生時期・越冬態・食性の詳細データ(BIGLOBE 昆虫データベース)
ニジュウシトリバ - Alucita - BIGLOBE
つまり、スイカズラ管理が防除の起点です。
ニジュウシトリバガの幼虫が食べるのはスイカズラ科のスイカズラのみ、単食性に近い食性を持っています。 幼虫はスイカズラの蕾に潜り込み、内側から食い荒らします。 スイカズラは日本全国の農村地帯の畦畔・農道脇・雑木林の縁などに自生する蔓性植物で、管理を怠ると農園の周囲に急速に広がります。repository.ffpri+2
農園内にスイカズラが自生している場合、それが幼虫の産卵・増殖の場となり、毎年安定して個体数が維持されます。同じ農地で毎年発生が繰り返されるパターンが生まれやすいということですね。スイカズラを意識的に除草・管理することが、発生密度を下げる最も根本的な対策になります。
農業用ハーブや薬草として意図的にスイカズラを栽培している農家の場合は注意が必要です。スイカズラの花・蕾はニジュウシトリバガ幼虫の直接的な被害を受けます。とくに花の収穫を目的とする場合、蕾の段階での食害は収量と品質の両方に影響します。収穫量が想定より減っていると感じたら、蕾を1つ1つ確認してみる価値があります。
参考:スイカズラ科への寄生・食害に関する記録(千葉県立中央博物館)
アヤニジュウシトリバ(ニジュウシトリバガ科)の解説 - 千葉県立中央博物館
日本に生息するニジュウシトリバガ科は、現在1属のみが確認されています。 同属の近縁種として「ヤマトニジュウシトリバ(Alucita japonica)」と「アヤニジュウシトリバ(Alucita flavofascia)」の2種がいます。 見た目が非常に似ているため、混同されることがよくあります。
参考)https://mushinavi.com/navi-insect/data-ga_nijuusitoriba.htm
識別のポイントは体色とサイズです。
アヤニジュウシトリバはクチナシを食草とし、スイカズラには産卵しません。 そのためクチナシを栽培・植栽している農家や庭師においては、アヤニジュウシトリバへの対応が必要になる場合があります。種の特定を誤ると、発生源の管理がまったく的外れになります。
これが条件です。
参考)https://repository.ffpri.go.jp/record/2003991/files/BF23-1-4.pdf
正確な種の判別には、翅の斑紋パターンを細部まで観察する必要があります。 肉眼での判断が難しい場合は、農業改良普及センターや農研機構に相談するか、写真を撮って専門家に確認を依頼することを検討してください。
参考:ニジュウシトリバガ科各種の形態・分布・食草の詳細(虫ナビ)
マダラニジュウシトリバ(旧称:ニジュウシトリバ) - 虫ナビ
防除の基本は「スイカズラの除草」と「発生時期前の環境整備」の2点です。 成虫越冬という特性を踏まえると、農閑期の秋冬にスイカズラを根本から除草しておくことが、翌春の発生密度を大きく下げる効果をもたらします。春になってから慌てて対応するより、コストも手間も大幅に削減できます。
参考)ニジュウシトリバ – 身近な自然に癒されて
薬剤防除については、幼虫は蕾の中に潜り込んでいるため、外側からの散布では効果が出にくいことがあります。効果を高めるには、幼虫の若齢期(体長が小さく蕾の表面に露出しやすい時期)を狙い、浸透移行性の殺虫剤を使用することが有効です。殺虫剤の選定にあたっては、農薬登録内容と使用基準を必ず確認してください。
| 対策の種類 | 具体的な方法 | 実施時期 | 効果の目安 |
|---|---|---|---|
| 🌿 環境管理 | 農園周辺のスイカズラを根ごと除草 | 秋〜冬(越冬前) | 翌年の発生密度を大幅に低減 |
| 🔍 早期発見 | スイカズラの蕾を定期的に目視確認 | 5〜7月(幼虫発生期) | 被害拡大を未然に防止 |
| 💊 薬剤防除 | 浸透移行性殺虫剤を若齢幼虫期に散布 | 6月上旬〜中旬 | 幼虫密度を大幅に低下 |
| 🏕️ 発生源管理 | 農道・畦畔のスイカズラを年1〜2回刈り取り | 通年(春・秋) | 継続管理で個体数を安定的に抑制 |
農薬の詳細な登録情報や安全使用基準は農林水産省の農薬情報システムで確認できます。薬剤を選ぶ前に、必ず対象作物と登録の有無を調べることが原則です。
参考:農林水産省 農薬情報・病害虫防除に関する情報
農林水産省 病害虫の防除に関する情報