中山間地域直接支払第6期で受け取る交付金と新要件

令和7年度スタートの中山間地域直接支払第6期対策。交付金単価・ネットワーク化加算・スマート農業加算など新制度の全体像を解説。申請前に確認すべき要件とは?

中山間地域直接支払第6期の制度内容と交付金を最大化する方法

10割単価で受け取ったはずの交付金が、令和11年度に2割分まるごと返還になる農業者が続出する見込みです。


中山間地域直接支払 第6期 3つのポイント
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対象農用地の要件が変わった

第6期から「農振農用地区域内かつ地域計画区域内」の農用地のみが対象。今まで受け取れていた農地でも対象外になる可能性があります。

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10割単価にはネットワーク化活動計画が必須

第5期の「集落戦略」要件は廃止。第6期では「ネットワーク化活動計画」の作成が10割単価の条件。未達成の場合は交付金(2割分)を返還することになります。

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ネットワーク化加算・スマート農業加算が新設

ネットワーク化加算は最大10,000円/10a、スマート農業加算は5,000円/10aが上乗せできる新しい加算措置。ドローンやリモコン草刈機の活用が収入増につながります。


中山間地域直接支払制度とは:第6期対策の基本的な仕組み

中山間地域等直接支払制度は、平成12年(2000年)度からスタートした国の農業支援制度です。傾斜地など農業生産条件が不利な中山間地域において、集落単位で農用地を維持・管理するための取り決め(協定)を締結し、それに基づいて農業生産活動を続けた場合に、面積に応じた交付金が支払われます。


制度は5年ごとに見直されており、令和7年度(2025年度)からは第6期対策(令和7年度~令和11年度)が始まりました。これまで5期・25年にわたって積み上げられてきた制度が、農業者の高齢化や担い手不足という現実を踏まえ、大きく見直されています。


中山間地域とは、国土の約7割を占める山地・丘陵地に位置する農業地域で、全国の耕地面積の約4割・農業産出額の約4割を担う重要な地域です。東京ドーム約170万個分ともいわれるこれほど広大な農地を守り続けているのが、この制度に参加する農業者たちです。


国が費用の半分を負担し、地方自治体を通じて農業者に交付される仕組みになっています。つまり国民全体から広く見れば、洪水防止・土砂崩れ防止・水源涵養・生態系保全といった多面的機能を維持するための「社会的コスト」を、農業者の農業生産活動によって担ってもらうという考え方です。


参考:農林水産省 中山間地域等直接支払制度の公式ページ(制度の基本説明・様式集・実施状況など一次情報を確認できます)
農林水産省|中山間地域等直接支払制度


中山間地域直接支払第6期の対象地域と対象農用地の条件

第6期対策で最も重要な変更点のひとつが、対象農用地の要件強化です。これが原因で「今まで交付を受けていたのに、第6期から対象外になった」というケースが発生しています。


第6期から対象農用地は、次の2つの条件を両方満たす必要があります。


- 農振農用地区域内(農業振興地域整備計画に基づく農用地区域内)であること
- 地域計画区域内(農業経営基盤強化促進法に基づく地域計画区域内)であること


「地域計画の要件化は第6期対策から」と農林水産省のパンフレットに明記されている通り、この地域計画区域の要件は第6期で初めて設けられたものです。これが意外と落とし穴で、農振農用地区域内であっても地域計画がまだ策定されていない区域の農用地は、原則として対象外となります。ただし令和7年度(初年度)については「地域計画の策定が確実と認められる区域」も対象となる経過措置が設けられています。


傾斜要件については以下の通りです。


| 地目 | 区分 | 傾斜基準 |
|------|------|---------|
| 田 | 急傾斜 | 1/20以上 |
| 田 | 緩傾斜 | 1/100以上1/20未満 |
| 畑・草地 | 急傾斜 | 15°以上 |
| 畑・草地 | 緩傾斜 | 8°以上15°未満 |


これ以外にも「小区画・不整形な田」「高齢化率・耕作放棄率の高い集落にある農用地」「積算気温が低く草地比率の高い草地」なども対象に含まれます。


傾斜要件だけが対象条件ではありません。


地域の状況によって幅広く対象になる場合があるので、まず市町村窓口に確認することが基本です。


また、団地要件として1ヘクタール以上の一団の農用地である必要があります(複数の団地の合計面積が1ヘクタール以上の場合も可)。


中山間地域直接支払第6期の交付単価:田・畑・草地の一覧

第6期対策の基礎単価(上限単価)は以下の通りです。交付単価は上限単価であり、実際には予算の範囲内で交付されます。申請額の全国合計が予算額を上回った場合、交付金が減額されることがある点は注意が必要です。


| 地目 | 区分 | 交付単価(円/10a) |
|------|------|-----------------|
| 田 | 急傾斜(1/20以上) | 21,000 |
| 田 | 緩傾斜(1/100以上) | 8,000 |
| 畑 | 急傾斜(15°以上) | 11,500 |
| 畑 | 緩傾斜(8°以上) | 3,500 |
| 草地 | 急傾斜(15°以上) | 10,500 |
| 草地 | 緩傾斜(8°以上) | 3,000 |
| 草地(寒冷地) | 草地比率の高い草地 | 1,500 |
| 採草放牧地 | 急傾斜(15°以上) | 1,000 |
| 採草放牧地 | 緩傾斜(8°以上) | 300 |


たとえば、急傾斜の棚田(田・1/20以上)を10aお持ちの農業者が集落協定に参加して基礎活動のみ行う場合、交付金は21,000円の8割=16,800円/10aとなります。


つまり、基礎単価の8割か10割かは、活動の内容によって変わります。集落協定の場合、①農業生産活動等を継続するための活動(必須活動+選択的必須活動)を行うと「8割単価」、これに加えて②体制整備のための前向きな活動(第6期からはネットワーク化活動計画の作成)を行うと「10割単価」が適用されます。


8割と10割の差は決して小さくありません。急傾斜田の場合、10aあたりで4,200円の差が生まれます。面積が大きいほど影響は大きく、たとえば50aの急傾斜田なら年間21,000円の差になります。


10割単価を目指す価値は十分あります。


中山間地域直接支払第6期の最大変更点:ネットワーク化活動計画とは

第6期対策で最も大きく変わった点が、10割単価(体制整備単価)の要件です。第5期対策まで求められていた「集落戦略」の作成は廃止され、代わりに「ネットワーク化活動計画」の作成が新たな要件となりました。


ネットワーク化活動計画とは、複数の集落協定が連携・統合し、共同取組活動を継続できる体制づくりに向けた計画です。簡単に言えば「近隣の集落協定と手を組んで、事務・農作業・機械を共有する仕組みを作る計画書」です。


具体的には、次の3つのうち少なくとも1つに取り組む内容を計画します。


- ①ネットワーク化:複数集落協定が連携し、合計10ha以上のネットワークを形成する
- ②統合:複数の集落協定が統合して10ha以上の協定を形成する
- ③多様な組織等の参画:農業者団体以外の組織(自治会・企業・学校・NPOなど)や非農業者(構成員の10%以上)が活動に参画する


ネットワーク化で解決できる課題は、「リーダー・事務担当者の人材不足」「農業の担い手不足」「農業機械の不足」「知見・技術の不足」など多岐にわたります。人が少ない集落ほど、このネットワーク化のメリットは大きいです。


重要なのは「計画書の作成を協定書に位置づけた時点で10割単価の適用が始まる」という点です。計画が完成していなくても、計画を作ると約束するだけで10割単価が適用されます。ただし令和11年度(2029年度)の対策期間終了までに実際に計画を完成・提出できなかった場合は、10割と8割の差額、つまり交付金の2割分を返還する義務が発生します。これが冒頭で紹介した「返還リスク」の正体です。


参考:農林水産省 第6期対策パンフレット(ネットワーク化活動計画の記載例・ステップが詳しく解説されています)
農林水産省|中山間地域を守るみなさまを支援します(第6期対策パンフレット)


中山間地域直接支払第6期の新設加算:ネットワーク化加算の単価と要件

第6期から新たに設けられた加算措置のひとつが「ネットワーク化加算」です。これは、集落協定間でのネットワーク化・統合、または多様な組織等の参画を実現し、主導的な役割を担う人材の確保や農業生産継続のための活動を行う場合に上乗せされる加算です。


単価は面積に応じてスライドする仕組みになっています。


- 0〜5ha部分:10,000円/10a
- 5〜10ha部分:4,000円/10a
- 10〜40ha部分:1,000円/10a


対象となるのは次のいずれかの集落協定です。


- 20ha以上のネットワーク化(協議会等を設置する場合に限る)または20ha以上の統合を行った協定
- 新たに1組織以上の農業者団体以外の組織が参画し、かつ合計2組織以上の非農業者団体が活動に参画する協定(同一の地域計画区域内に他の集落協定がない場合に限る)


加算措置を受けるには、達成目標を定量的に設定し、令和11年度末までに目標を達成することが条件です。目標未達の場合は遡求返還(さかのぼって返還)が求められます。


ネットワーク化加算は使えそうですね。20haという面積は一見大きく見えますが、近隣の集落協定と合わせれば十分届く規模感です。たとえばA協定5ha+B協定8ha+C協定8ha=21haでも適用されます。まず近隣集落との話し合いから始めることが現実的な第一歩です。


中山間地域直接支払第6期の新設加算:スマート農業加算を活用する方法

第6期から新設された「スマート農業加算」は、スマート農業による作業の省力化・効率化の取り組みを行う集落協定に対し、5,000円/10a(地目を問わず)が上乗せされます。


スマート農業加算の対象活動の代表例は以下の通りです。


- 🚁 ドローンによる播種防除農薬散布
- 🤖 リモコン式自走草刈機による除草
- 💧 水管理システム(スマート水管理)の導入
- 🪤 自動鳥獣捕獲機の導入


加算を受けるには、定量的な目標を最低1つ設定することが必要です。たとえば「ドローンを導入し農薬散布時間を3割削減する」「リモコン草刈機で除草作業時間を1日あたり2時間削減する」のように、数値で目標を示します。


これは使えそうです。ドローンや水管理システムの導入コストは高額になりがちですが、スマート農業加算の交付金を積み立てて機材購入費用に充てることができます。たとえば10aあたり5,000円の加算が10ha分(100a)受け取れれば、年間5万円を積み立てる計算になります。


注意点として、スマート農業加算を受けるためには「ネットワーク化活動計画」の作成が必須条件です(超急傾斜農地保全管理加算は例外)。まずネットワーク化活動計画の整備を進めることが、スマート農業加算への近道です。


また、ネットワーク化加算とスマート農業加算は重複申請が可能です。ただし、各加算措置ごとに異なる取り組み・目標を設定する必要があります。第5期と比べて「2つ目以降の加算単価を1,000円減額する」という規定が廃止されたので、複数の加算を受け取りやすくなりました。


中山間地域直接支払第6期の継続加算:棚田地域振興活動加算と超急傾斜農地保全管理加算

第6期でも引き続き設けられている加算措置として、棚田地域振興活動加算と超急傾斜農地保全管理加算があります。


棚田地域振興活動加算は、「棚田地域振興法」に基づき認定された棚田地域振興活動計画に従って活動する場合に加算されます。単価は急傾斜地で10,000円/10a、超急傾斜地(田:1/10以上、畑:20°以上)で14,000円/10aです。


達成目標として次の3つのカテゴリからそれぞれ1つ以上、計3つ以上の目標設定が必要です。


- ア 棚田等の保全
- イ 棚田等の保全を通じた多面にわたる機能の維持・発揮
- ウ 棚田を核とした棚田地域の振興


なお、令和7年2月時点で全国733地域が「指定棚田地域」として認定されており、対象地域は年々拡大しています。自分の地域が指定棚田地域に該当するかどうかは、農林水産省のウェブサイトか市町村窓口で確認できます。


超急傾斜農地保全管理加算は、超急傾斜農地(田:1/10以上の傾斜)の保全管理を行う場合に6,000円/10aが加算されます。石積みの補修・鳥獣害防止施設の設置・維持管理などが対象活動です。


この加算には、棚田地域振興活動加算・集落機能強化加算・生産性向上加算との重複申請はできないルールがあります。また、超急傾斜農地保全管理加算のみ「ネットワーク化活動計画」が加算の必須条件にはなっていない点が他の加算措置と異なります。


中山間地域直接支払第6期における集落協定の申請手続きと事務の流れ

第6期対策の協定認定・申請の流れを理解しておくことは、スムーズに交付金を受け取る上で欠かせません。初年度(令和7年度)は、集落協定の認定時期が例年より遅い10月30日ごろとなるため、交付金の支払いも例年に比べて後ろ倒しになります。


標準的なスケジュールは次の通りです。


- 📅 8月末:集落協定書の提出(市町村への認定申請)
- 📅 9〜10月:交付申請書の提出、現地確認
- 📅 10〜12月:交付金の1回目支払い
- 📅 年度末:実績報告・精算


第6期初年度は令和6年度の取組面積をベースに交付金の一部(令和6年度の年度交付額の約4割相当)が協定認定前に先払いされる措置がとられています。活動を止めずに続けるための重要な経過措置です。


事務手続きに関して重要なのが、証拠書類の整備と管理です。金銭出納簿・領収書・活動記録・加算措置の取組実績がわかる書類・共用資産管理台帳などを日付順に整理しておく必要があります。会計経査や税務調査に備え、日常的な記録管理が求められます。


また、集落協定の内容に変更が生じた場合(参加者の変更、協定農用地の変更など)は、速やかに変更手続きを行う必要があります。変更手続きを怠ると交付金の返還原因になりかねないため、「変更が必要かどうか迷ったら市町村に相談する」姿勢が基本です。


参考:農林水産省 中山間地域等直接支払交付金実施要領(手続きの具体的なルールを確認できます)
農林水産省|中山間地域等直接支払交付金実施要領の運用


中山間地域直接支払第6期の交付金返還リスクと回避策

交付金返還は農業者にとって最大の痛手です。第6期対策では、どのような場合に返還が発生するかをきちんと把握しておく必要があります。


返還が発生する主なケースは次の通りです。


- 🚨 ネットワーク化活動計画の未達成:10割単価で交付を受けていたにもかかわらず、令和11年度末までに計画を完成・提出できなかった場合、2割分を返還
- 🚨 加算措置の目標未達成:棚田地域振興活動加算・ネットワーク化加算・スマート農業加算などで定めた定量的目標を令和11年度末までに達成できなかった場合、加算分を遡求返還
- 🚨 活動内容の不履行:協定に定めた活動が適切に実施されなかった場合、交付金の全部または一部の返還
- 🚨 荒廃農地の発生:対象農用地が耕作放棄地になった場合、返還の対象となる場合あり


特に注意が必要なのが、加算措置の目標未達成による遡求返還です。これは対策期間5年間に受け取ってきた加算分を一括で返す可能性があることを意味します。たとえばスマート農業加算を5年間受け取って年間50万円だったとすれば、最大250万円の返還リスクがあります。加算措置の目標は必ず現実的な数値で設定することが大切です。


返還を避けるための実践的な対策として、まず「ネットワーク化活動計画の作成を早めに着手する」ことが挙げられます。令和11年度という締め切りまでに十分な時間がある今のうちに、近隣集落協定と話し合いの場を設けることが最優先です。


加算措置の目標設定では「高すぎず低すぎず、5年後に確実に達成できるライン」を狙うことが重要です。目標をあまりに高く設定すると達成できず返還になり、低すぎると加算を最大限活用できません。過去の実績値や近隣集落の事例を参考にしながら、市町村担当者と相談して目標を決めるのが確実です。


中山間地域直接支払第6期の交付金と確定申告:課税の扱いを正しく理解する

中山間地域等直接支払交付金は課税の対象になります。


これは意外と見落とされやすい点です。


交付金の課税上の取り扱いは、受け取り方によって異なります。


- 💰 農業者への個人配分(役員報酬・出役日当など):受け取った者が農業を営む者であれば「農業所得」、農業を営まない者であれば「雑所得または給与所得」
- 🏦 集落協定での積み立て・共同取組活動への充当:集落協定(任意組合)全体として経理し、参加農業者が按分して農業所得として計上


農業所得として計上する場合、交付金収支報告書(中山間地域等直接支払交付金収支報告書)に記載された支出額のうち、事業遂行上必要な支出については農業所得の必要経費として計上できます。


確定申告では、中山間地域等直接支払交付金は「農業所得の雑収入」として計上するのが基本です。農業所得がない場合でも、交付金の個人配分を受け取っている場合は住民税の申告が必要になるケースがあります。


交付金を青色申告で管理することで、税負担を抑えながら農業経営の実態をより正確に把握できます。青色申告特別控除(最大65万円)の適用を受けるためには、正規の簿記による記帳(複式簿記)が必要で、集落協定の収支とは別に、個人の農業収支もしっかり記帳する体制を整えることが重要です。


中山間地域直接支払第6期と多面的機能支払交付金との違いと併用のポイント

農業従事者が混同しやすいのが「中山間地域等直接支払交付金」と「多面的機能支払交付金」の関係です。この2つは別制度ですが、同一農地で重複して受け取ることができる場合があります。


2つの制度の主な違いは次の通りです。


| 項目 | 中山間地域直接支払 | 多面的機能支払 |
|------|-----------------|------------|
| 目的 | 農業生産条件不利地域の農業継続支援 | 農地・水路・農道等の資源保全活動支援 |
| 単位 | 集落協定・個別協定 | 活動組織 |
| 対象 | 傾斜地等の農用地 | 幅広い農用地・水路・農道 |
| 対策期間 | 令和7〜11年度(第6期) | 令和2〜6年度(第2期)→第3期へ移行中 |


2つの制度は対策期間がずれているため、事務手続きが複雑になる点に注意が必要です。両制度を活用している集落では、年度ごとの申請・報告スケジュールを混乱しないよう管理することが求められます。


重複申請が可能なケースでは、両方の交付金を組み合わせることで農地保全の財源をより厚くできます。たとえば水路の泥上げ・草刈りは両制度の対象活動に含まれますが、経費の二重計上(同じ作業に両方の交付金を充てる)は認められません。活動実績と経費計上の区分を明確に記録しておくことが重要です。


中山間地域直接支払第6期における農地の荒廃防止と担い手確保の独自視点

制度の説明から一歩踏み込んで、農業従事者が実際に直面している「人がいない・継ぐ人がいない」問題と第6期対策の関係を整理します。


農林水産省の第5期対策の最終評価によると、中山間地域の農業者の平均年齢は67歳を超えており、10年以内に引退を考えている農業者が協定参加者の3〜4割を占める集落も少なくありません。これは交付金の受け取り以前に、集落協定そのものが継続できなくなるリスクを意味します。


第6期対策が「ネットワーク化」を強く押し出している背景には、この現実があります。1つの集落協定が単独で存続し続けることが困難になる前に、複数集落が連携して体制を整えておこうというわけです。


ネットワーク化の具体的な効果として、実際の事例では次のような成果が報告されています。


- 🌿 複数協定で草刈隊を結成し、人手不足の協定に人員を派遣することで荒廃農地の発生を防止
- 🚜 各協定が個別に保有していた農業機械を共有化し、購入費用と維持費を削減
- 📝 共同事務局を設置し、複数協定の事務を一括処理することで、事務担当者の負担を大幅軽減


担い手確保の観点では、ネットワーク化活動計画において「農業の担い手育成」を活動に盛り込むことが有効です。農業大学校や移住促進事業と連携した就農体験の受け入れ、農地の集約による大規模担い手への円滑な農地引き渡しなど、地域ぐるみの取り組みが交付金の枠内で実施できます。


また、「多様な組織等の参画」では企業・学校・NPO・自治会などの非農業者組織を協定活動に巻き込むことができます。地元の高校生や大学生を農作業ボランティアとして受け入れた集落では、若者の農業体験と農地保全が同時に実現している事例もあります。


中山間地域直接支払第6期で個別協定を使う農業者への注意点

中山間地域等直接支払制度には「集落協定」のほか「個別協定」という仕組みもあります。認定農業者等が農用地の所有者と利用権設定や農作業受委託を結ぶかたちで締結する協定です。


個別協定の活用が適しているケースとして、「担い手農業者が周辺の高齢農家の農地を引き受けて管理している」「集落協定が機能しにくい集落で認定農業者が単独で対象農用地を管理している」などがあります。


個別協定も第6期から「農振農用地区域内かつ地域計画区域内」という対象農用地要件が適用されます。また、個別協定では集落協定のようなネットワーク化活動計画の作成は求められませんが、協定に定めた活動を5年間継続する義務は変わりません。


個別協定参加者の注意点として、担当者一人に事務が集中しがちな点があります。書類管理・活動記録・会計経理はすべて個人が担うことになるため、市町村が提供する様式やExcelテンプレートを積極的に活用することで事務負担を減らすことが重要です。農林水産省が提供している「自動入力機能付きExcel様式」を活用すると、記載ミスや集計ミスが減ります。


参考:農林水産省 中山間地域等直接支払交付金参考様式集(第6期対策・Excel形式)
農林水産省|中山間地域等直接支払交付金参考様式集(第6期対策)Excel


中山間地域直接支払第6期の申請前に確認すべき5つのチェックポイント

これまでの内容を踏まえ、第6期対策に取り組む農業者が申請前に確認しておくべきポイントを整理します。


① 対象農用地の確認


農用地が「農振農用地区域内」かつ「地域計画区域内」に含まれているかを、市町村農政担当窓口で必ず確認してください。第5期まで対象だった農地が第6期から外れるケースがあります。


② 8割か10割かの判断


10割単価を希望する場合は、集落協定書にネットワーク化活動計画の作成を盛り込む必要があります。「どうせ8割でもいい」と判断するのは早計で、5年間受け取れる差額を計算してから判断することをすすめします。


③ 加算措置の活用検討


棚田地域振興活動加算・ネットワーク化加算・スマート農業加算を活用できるか検討してください。ただし加算を取り入れる場合は、達成できる現実的な目標設定が不可欠です。


④ 近隣集落との連携状況の確認


同一の地域計画区域内に他の集落協定があれば、ネットワーク化の相手方候補になります。すでに顔見知りの集落であれば、早めに「ネットワーク化の話し合い」を始めることが、最終的な返還リスクを防ぐ最善策です。


⑤ 課税・確定申告の対応体制


交付金を受け取る農業者は、個人配分があれば農業所得として確定申告が必要です。集落協定の会計と個人の農業収支を分けて記帳する体制を整えておくことが、税務上のトラブル防止になります。


結論は、「早めに市町村と話し合う」です。制度は複雑に見えますが、最寄りの市町村農政担当窓口がもっとも頼りになるパートナーです。説明会や個別相談の機会を積極的に活用することで、第6期対策を最大限に使いこなせるようになります。