麦の収穫は「いつ刈るか」で、その後の乾燥コストと品質が大きく変わります。普通型コンバインは性能が上がり、収穫損失だけ見れば子実水分40%近い高水分でも収穫自体は可能とされますが、現場で本当に困るのは“刈れるか”より“出荷品質が保てるか”です。
目安として、収穫開始時の子実水分は35%以下を上限に考えるのが安全側です。水分が35%を超えると製粉性など品質面での低下が起こりやすい、という整理がされています。特に高水分を無理に刈ると、作業能率低下(処理量が落ちる)と乾燥燃料の増加が同時に来ます。
一方で「晴れ待ち」が正解とも限りません。刈り遅れは降雨にあう確率を上げ、退色粒・発芽粒・くされ粒などの品質劣化リスクが増えるため、乾燥機容量・収穫量・天候をセットで見て、収穫開始水分を決めておく必要があります。
実務では、圃場の見た目(穂首の色、粒の硬さ)に加えて、簡易穀粒水分計で数値を押さえます。水分は日内変動もあるので、朝夕の測定値を同列に扱わず、「今日のピークがどこか」を掴むのがコツです。
意外に見落とされるのが、圃場内のバラつきです。土壌条件や病害・雑草、倒伏の有無で乾きがズレるので、1筆を一括で同じ設定で刈るほどロスは増えます。倒伏した領域は区分して収穫する、という考え方は品質面でも合理的です。倒伏はDON濃度上昇を助長し、穂発芽や低アミロのリスクも増やすため、収穫順や刈り分け計画に入れておく価値があります。
倒伏・雑草が多い圃場は「詰まり」も起こりやすく、停止回数が増えて収穫が伸びません。だからこそ、適期の見極めは“水分だけ”ではなく、“その圃場をどれだけスムーズに流せるか”も含めた経営判断になります。
収穫適期や高水分時の考え方(子実水分35%目安、遅れの品質リスク、倒伏の悪影響)がまとまっている資料。
高水分収穫の上限や倒伏・病害雑草の注意点(北海道立総合研究機構の資料)
https://hokkaido-nosan.or.jp/_sys/wp-content/uploads/h31_wheat_04.pdf
麦刈りコンバインの調整は、万能の正解があるのではなく「どの損失が増えているか」で当てに行くのが最短です。資料でも、収穫損失と損傷粒の発生状況をチェックしながら各部を調整する必要がある、と整理されています。
まず刈り取り部で重要なのが刈り高さです。目安として“おおむね40cm”が提示されており、稈重と子実重の比が1:1になる高さが望ましい、という考え方が示されています。
刈り高さが高すぎると、穂切れ粒(頭部損失)が増えやすくなります。逆に低すぎると稈の量が増えて処理負荷が上がり、未脱損失やささり粒が増えやすくなるため、単に「低く刈ればロスが減る」とはなりません。ここが麦の調整で一番ハマりやすいポイントです。
次に作業速度です。処理量が過多になると、ささり損失や飛散損失が増えやすくなります。特に条件が変わりやすい圃場(倒伏帯、雑草帯、湿り帯)で速度を一定にしようとすると、結果として“機械の中の負荷が一定にならない”ので、ロスが増えます。
現場感で言えば、速度一定よりも「負荷一定(詰まりそうな音・モニタ値を一定)」のほうが結果は安定します。近年機種はロスモニタもあり、表示の増減をもとに作業速度や刈り高さを調整して損失低減が可能、とされています。
チェックのコツは「停止して確認する時間をケチらない」ことです。刈取跡とグレンタンクの中身をセットで見ます。
また、収穫予定圃場は事前確認が重要です。溝状浸食(ガリ)などは事故やトラブルの原因になり、トラブルが起きると能率だけでなく品質にも影響が及ぶ、と明確に述べられています。つまり調整以前に「止まらない圃場」にしておくことが、最終的なロス低減策です。
刈り高さ40cmの目安や調整項目(刈り高さ・リール・作業速度・ロスモニタ活用)がまとまっている資料。
https://hokkaido-nosan.or.jp/_sys/wp-content/uploads/h31_wheat_04.pdf
麦刈りコンバインは「脱穀はできるのに、なぜかロスが止まらない」状態になりがちですが、その多くは選別分離(シーブ・風量)の合わせ込み不足です。資料でも、チャフシーブ・グレンシーブ開度とファン風量は、飛散粒とタンクの夾雑物量に応じて調整するとされています。
ここで重要なのが、飛散損失(風で機外へ飛ぶ穀粒)は“多風量=良い”ではない点です。風量が多すぎる、チャフシーブの開度が狭すぎる、シーブを通過するわら屑量が多い場合に飛散粒が増える、と整理されています。
実際の合わせ方は、次の順が失敗しにくいです。
損失は種類別に原因が違うので、言い換えると「ロスの診断 → つまみを当てる」の順です。資料の表では、例えば以下のように整理されています。
ここでの「意外な盲点」は、同じロスでも“作物側の原因”と“操作側の原因”が混在することです。倒伏や湿りなど条件起因のロスもありますが、人為的な操作・調整不良でロスが発生する場合もある、と技術レビューでも指摘されています。つまり「圃場のせい」にする前に、ロスの種類と調整つまみを切り分けるだけで改善する余地が残っています。
ロスの種類別の原因整理(未脱・ささり・飛散など)と、シーブ/風量の調整方針が載っている資料。
https://hokkaido-nosan.or.jp/_sys/wp-content/uploads/h31_wheat_04.pdf
収穫ロスの可視化(ロスモニターで調整を最適化する考え方:メーカー技術レビュー)
https://www.yanmar.com/jp/about/technology/technical_review/2015/1027_3.html
麦刈りコンバインで「取り返しがつかない失敗」は、機械故障と異品種混入(コンタミ)です。資料でも、収穫作業前の確認や準備が非常に重要で、トラブルが発生すると収穫能率だけでなく品質にも影響すると明記されています。
点検は取扱説明書に沿うのが前提ですが、麦で要所になるのは次の系統です。
【始業前に見るポイント】
圃場側の準備も、実は“点検の一部”です。土壌流亡や溝状浸食(ガリ)などは事故・トラブルの原因になるので、事前に修復するか目印を付け、関係者で情報共有する必要がある、とされています。ここをサボると、刈取中の突発停止が増えて結果的にロスも増えます。
そして、複数品種を刈る場合は異品種混入(コンタミ)に十分留意し、機械内部の清掃を徹底する、と明確に書かれています。清掃は「時間がもったいない」と見えますが、コンタミは後から取り返せません。
実務では、品種切替時に“見える場所だけ掃除”になりがちなので、以下をルール化すると事故が減ります。
収穫前の準備・点検の重要性、圃場事前確認、異品種混入と清掃の注意点が載っている資料。
https://hokkaido-nosan.or.jp/_sys/wp-content/uploads/h31_wheat_04.pdf
検索上位でも触れられやすい「刈り方」以上に、麦は“刈った後”で差がつきます。収穫期は気温・湿度が高く、脱穀後の子実を放置すると異臭や変質が起こりやすい、とされており、特に高水分の場合は急激に発熱し始める点が強調されています。
ここでの盲点は、乾燥機の能力以上に刈ってしまい、トラックに積み置きしている間に品質が落ちるパターンです。穀層が厚いほど温度上昇が激しくなり、短時間で異臭や変質を引き起こすので十分注意が必要、という図示付きの説明があります。
乾燥の基本は「穀温を上げすぎない」です。一般的に穀温が40℃以上になると品質低下が発生しやすく、熱風温度は穀温が40℃を超えないよう設定する、とされています。さらに高水分の乾燥では、品質低下防止のため熱風温度45℃以下、乾燥速度は2%/時程度が望ましい、という目安も示されています。
また、高水分子実は夾雑物が多く流動性が悪いため、乾燥機内のトラブルも増えやすいです。対策として、満量張り込みを避ける、粗選機で夾雑物を除去する、など“乾燥前工程”の工夫が推奨されています。
現場の運用として使いやすいのが二段乾燥です。一次乾燥の目標水分(例:17%)で一時貯留し、数日以内に仕上げ乾燥を行う体系が広く行われている、とされます。ただし一時貯留は「乾燥途中」であり、貯留前に穀温を20℃以下に下げる、通風装置のある貯留ビンを原則とする、など注意点が細かく定義されています。
さらに意外な落とし穴として、フレコンの積み重ねがあります。荷重で通気性が低下し熱が蓄積して、異臭やカビが発生した事例が示されており、原則積み重ねをしない、やむを得ない場合は圧縮を防止し上部開放と空間確保を行う、という具体策が書かれています。
「刈取り設定」だけでなく「乾燥・一時堆積・二段乾燥・フレコン管理」まで、実務の地雷がまとまっている資料。
https://hokkaido-nosan.or.jp/_sys/wp-content/uploads/h31_wheat_04.pdf