収穫直後の青果物は、収穫後も生命活動を続けて酸素消費・水分蒸散・エネルギー消費が起き、温度管理が品質の分かれ道になります。
雰囲気温度が上がるほど呼吸速度が上がり、一般に10℃上昇で呼吸速度が2~4倍になるため、品温を早く下げる「予冷」が低温管理の要だと整理できます。
一方でクールマックスのような保冷ボックスは、基本的に「品温を下げる機械」ではなく「下げた品温を上げない容器」として使うのが成功パターンです。
現場でやりがちな失敗は「温かいままクールマックスに入れれば冷えるはず」という運用で、これは保冷の役割と逆になります。
参考)クールマックス クーラーBOX
保冷が効く順番は、概ね「収穫→日陰化→(可能なら予冷)→保冷ボックス→保冷庫・冷蔵輸送」で、クールマックスはこの“つなぎ”で真価を発揮します。
特に畑から集出荷場まで距離があるほど、予冷前に品温が上がる時間が伸びやすいので、保冷ボックスを“短距離コールドチェーン”として位置付けると運用が安定します。
予冷の代表的な方式として、低温空気で冷却する空気冷却、圧力を下げて蒸発潜熱で冷却する真空冷却、冷水で冷却する冷水冷却が整理されています。
産地予冷では、強制通風方式・差圧通風方式・真空冷却方式などが使われ、差圧通風は品物側から冷気を吸引して箱の中まで空気を通しやすくし、冷却時間短縮と均一化を狙います。
ただし差圧通風は、容器の通風孔がうまく接続されない積み方だと空気が回らず十分に冷えない点が問題として指摘されています。
この「積み方の品質影響」は、現場だと意外に軽視されがちです。
例えば、同じ作業人数・同じ冷却設備でも、箱の向き・パレット積み・通風孔の合わせ方を“ルール化”した産地ほど、冷却ムラによるクレーム(しおれ・変色・追熟の進み)を減らしやすいです。
クールマックス運用でも同様で、フタ開閉回数を減らし、積載を詰めすぎず、日陰で短時間に搬送するだけで、品温の“戻り”を抑えやすくなります。
真空冷却は、水の沸点が圧力低下で下がる性質を利用し、品物の水分が蒸発する際の気化熱で急冷する方式で、冷却速度が非常に速く冷却ムラが少ないとされています。
一方で、表面積の割合に表面積が少ない果菜・根菜は冷えにくいなど適性があり、万能ではありません。
冷水冷却は伝熱が速く冷却速度が速い反面、野菜が水濡れ状態になる点が課題になり得る、と方式の特徴として整理されています。
ここでクールマックスが効くのは、「真空冷却や冷水冷却で下げた品温」を、その後の集荷・仕分け・待機の時間帯で上げない役目です。
逆に、予冷ができない小規模・分散圃場では、クールマックスに“保冷材(氷・蓄冷材)”を組み合わせて日陰搬送し、到着後すぐに予冷設備へ渡すだけで、実質的に予冷の効果を引き出しやすくなります。
なお、予冷設備は電力消費や建設費が課題で、小型で安価な設備、集荷トラック側の保冷機能、省エネ化が望まれるとされており、当面は「保冷の運用設計」で穴を埋める価値が大きいです。
産地の一次保管は強制通風式の冷蔵倉庫が主流で、乾燥防止や成熟抑制のために布製冷風ダクト、エチレン除去設備、砕氷供給設備などを備える例が示されています。
品質保持としては、品種に最適な温度に保つこと、エチレン濃度の抑制、乾燥防止(高湿度・氷蔵・フィルム包装など)が求められる一方で、流通全体の一貫管理や情報伝達は十分でない点が問題として挙げられています。
つまり、立派な保冷庫があっても「畑→集荷→待機→予冷→保管」の途中で品温が上がれば、コールドチェーンは実質的に途切れます。
この“途切れやすい区間”の温度上昇を抑える道具として、クールマックスのような保冷ボックスは導入しやすいのが利点です。
運用のコツは、(1) 収穫物を先に日陰へ逃がす、(2) 可能なら圃場で荒熱を取る、(3) フタ開閉を減らす、(4) 予冷・保冷庫へ渡すまでの滞留時間を短縮する、の4点を“作業工程”として固定することです。
また、保冷材を入れる場合は「作物を濡らさない」「結露水が箱内に溜まらない」ように隔離する設計が必要で、濡れが品質リスクになる品目では特に注意します。
収穫後の温湿度管理では、低温だけでなく、劣化要因を減らす処理も組み合わされます。
たとえば「乾燥予措」は、収穫直後の果実を貯蔵庫に搬入する前に表皮を乾燥収縮させて表皮組織を固くしておく処理法として紹介されています。
この発想をクールマックス運用に置き換えると、「ただ冷やす」ではなく「品目に応じて“乾燥させる/乾燥させない”を選ぶ」が品質差になります。
意外と起きがちなのは、密閉性の高い保冷ボックス内で、温度差による結露が発生し、表面が濡れてカビ・傷み・見た目の劣化につながるケースです。
乾燥予措が効くタイプの作物では、搬送前に表面状態を整え、箱内の湿りすぎを避けるだけで、冷却そのものよりクレーム低減に寄与することがあります。
参考)青果物のコールドチェーンにおける温湿度管理(サイエンスコラム…
反対に、しおれやすい葉菜では乾燥が致命傷なので、日陰化とスピード搬送、予冷の速さを最優先し、クールマックスは「短時間で開け閉めしない」運用に徹します。
予冷方式の基本(空気冷却・真空冷却・冷水冷却)と特徴の整理に有用。
農林水産省「卸売市場における品質管理の高度化に向けたマニュアル(PDF)」
青果物の呼吸速度(10℃上昇で2~4倍)や差圧冷却の問題点(積み方で冷えない)など、現場運用の根拠に有用。
日本冷凍空調学会「Ⅱ.コールドチェーンの現状(PDF)」