黒富士農場の「有機ばうむ」は、有機JASの認証を受けた日本初のバウムクーヘンとして紹介されており、有機加工食品の中でも畜産物を使う製品としては極めて稀少な存在です。
一般の有機加工食品JASでは、重量の数%以内なら有機以外の原料も認められますが、「有機ばうむ」は卵以外の砂糖・小麦粉・バター・チョコレートなどもすべて有機原料で統一していると報告されています。
さらに、生地全体の約4割強を自社の有機平飼い卵が占める配合とされており、卵農家だからこそ実現できる“卵を主役にしたスイーツ”というコンセプトが際立っています。
製造工程では、卵黄と卵白を別々に立てる「両立て方式」を用い、メレンゲの膨らみとしっとり感のバランスを職人の勘で調整していると紹介されています。
食品添加物に頼らず、温度や生地の状態を見極める職人仕事で安定した品質を出している点は、機械化一辺倒ではない“小規模だからこそできる価値づくり”の好例と言えます。
意外なポイントとして、香りのない高品質な有機ココナッツオイルを採用し、ヤシ殻活性炭と天然鉱物による物理的な精製で化学溶剤を避けていることが挙げられます。
有機JAS認証は、登録認証機関が生産・加工の行程管理を審査し、合格した事業者だけがマークを表示できる仕組みで、ラベル表示規定も厳格です。
農場としては、生産行程管理の記録や内部点検、年次の外部審査への対応が恒常的な業務となるため、単なる「マーク取り」ではなく経営レベルでの覚悟と仕組みづくりが求められます。
黒富士農場がこのハードルを越えて、日本初の有機バウムクーヘンを世に出したことは、有機畜産+加工の先行事例として他の養鶏農家にとっても参考になります。
黒富士農場は山梨県の山麓部に位置し、放牧と平飼いを組み合わせた養鶏で有機卵や放牧卵を生産していると紹介されています。
天然の湧き水を飲み水に使い、鶏舎周辺の草地に鶏を出すスタイルで、環境と動物福祉を重視した「自然循環型農場」をめざしてきた経緯が記事やインタビューにまとめられています。
こうしたリアルオーガニック卵をバウムクーヘン生地に4割前後も投入していることは、卵の品質がそのまま菓子の味と評価に返ってくる設計と言えます。
卵のコクや色味を活かすために、砂糖には有機てんさい糖、小麦には有機薄力粉を選び、生地が濁らないように余計な添加物を避けている点も、卵生産者としてのこだわりです。
養鶏農家目線で見ると、「卵自体を高付加価値にする」と同時に、「卵を使った加工品の評価が卵のブランドを底上げする」二重の効果を狙った設計になっています。
有機畜産物のJAS基準では、飼料・水・鶏舎・屋外運動場など、鶏の一生を通じてトレーサビリティが求められるため、加工品の原料卵にも一貫した管理が必要です。
黒富士農場では、飼料供給元の畑にスタッフが有機JAS審査員とともに出向き、栽培状況を確認している事例も紹介されており、上流まで踏み込んだ品質管理が実践されています。
この「畑から菓子工房まで一気通貫で見る視点」は、単に良い卵を作るだけでなく、加工・販売まで含めた持続可能なモデルを組み上げたい農業者にとって重要なヒントになります。
黒富士農場のバウムクーヘンは、自社直売店に加え、楽天市場やYahoo!ショッピング、百貨店オンライン、ふるさと納税サイトなど多様なチャネルで販売されています。
ギフト向けには、オーガニックバウムと卵、あるいはミニバウムとのセット商品、さらに他のスイーツを詰め合わせた「森のギフト」や「オーガニックギフト」といったラインも用意されています。
農業者の視点から見ると、卵そのものはクール便で割れリスクもあり単価も限られますが、バウムクーヘンのような常温・冷凍スイーツに加工することで、物流やギフト需要に乗せやすくなります。
賞味期限が冷凍で120日程度確保されている商品もあり、在庫管理や生産調整の自由度が上がる点は、卵の生産変動を抱える養鶏農家にとって重要です。
同時に、百貨店や専門店のオンラインショップに卸すことで、自社だけでは届かない都市部の顧客層へ「オーガニック卵農場のスイーツ」を届けるチャネルも確保しています。
価格帯としては、ホールのオーガニックバウムが2,000円台、スティックタイプが数百円とされており、ギフトにも日常のプチ贅沢にも使いやすい設計です。
「有機卵そのものは頻繁には買えないが、特別な日に有機スイーツを選びたい」という層に支えられることで、農場全体のブランドと売上の安定化につながっていると考えられます。
このように、直売・ギフト・通販を組み合わせた多段階の販売戦略は、地域の卵農家や酪農家がスイーツ開発に挑戦する際にも参考になる構造です。
黒富士農場の事例がユニークなのは、「卵の有機JAS認証」だけでなく、「有機畜産物加工品としてのバウムクーヘン」にまで認証領域を広げた点にあります。
一般に、有機畜産を始めるには飼料供給者側から有機認証を整え、畜舎や放牧地の管理を見直し、そのうえで加工施設の認証まで段階的に進める必要があると指摘されています。
黒富士農場は、卵の生産から加工・販売までを一貫して手がけることで、有機畜産のコストとリスクを「ブランド価値」と「高付加価値商品」で回収するモデルを構築しているといえます。
農業従事者にとってのポイントは、「有機だから高く売れる」という単純な構図ではなく、「なぜ有機にこだわるのか」「どの工程にどんなストーリーがあるのか」を具体的に語れることです。
黒富士農場の情報発信では、環境保全や動物福祉への配慮、日本の有機畜産物加工品を広げたいという使命感など、農場の価値観が繰り返し語られています。
そのうえで、日本初の有機JASバウムクーヘンという「わかりやすい象徴商品」を前面に据えることで、専門的な有機JASの話題を生活者にも届く形に翻訳している点が秀逸です。
また、卵のような一次産品は価格が見えやすい一方、「有機ばうむ」のような加工品は、原料比率や製法、ストーリーを織り込んだ“語れる価格設定”がしやすいという利点があります。
黒富士農場は、大量生産ではなく少量手作りの価値を前面に出し、価格より納得感と共感を重視するファン層を育てる方向で事業を組み立てているように見受けられます。
このような「小さくて強いブランド」をつくる発想は、規模拡大が難しい中山間地域の畜産農家にとっても現実的な戦略のひとつです。
黒富士農場のバウムクーヘンシリーズには、有機JAS認証の「有機ばうむ」に加え、スティックタイプのミニ、有機ショコラ、放牧卵を使ったプレーンやホワイトなど多彩なラインナップがあります。
ふるさと納税やギフトセットでは、ホールサイズとミニ、ショコラを組み合わせたセットや、卵との詰め合わせなど、用途や価格帯別に細かく商品設計がされていることがわかります。
| バウムクーヘン種別 | 主な特徴 | 主な原料ポイント |
|---|---|---|
| 有機ばうむ(ホール) | 日本初の有機JAS認証バウムクーヘンで、卵の風味が主役の定番商品。 | リアルオーガニック卵と有機てんさい糖・有機小麦・無香タイプの有機ココナッツオイルなど、全原料が有機認証品。 |
| 有機ばうむミニ(スティック) | 食べきりサイズで、シュガーコーティングなしの素朴な味わいに設計された携帯しやすいタイプ。 | ホールと同様に有機原料で構成され、冷凍流通しやすい小型商品としてギフトセットにも多用されています。 |
| 有機ばうむショコラ | 有機チョコレートを生地とコーティングに使い、ビター感とコクを両立させたプレミアムライン。 | 2種の有機チョコレートをブレンドし、有機ココアパウダーや有機生クリームと組み合わせて奥行きのある味に仕上げています。 |
| 放牧卵バウム(プレーン・ホワイトなど) | 放牧卵を使い、バニラやラム、ホワイトチョコなどでバリエーションをつけた人気シリーズ。 | 有機認証ではないものの、放牧卵の味わいを前面に出し、価格帯を抑えながらギフトや日常用途に対応しています。 |
意外な視点として、有機ばうむのような卵比率の高い生地は、卵のグレードや日々のコンディションが味や焼き上がりに直結するため、「卵の質を測る試験紙」のような役割も果たします。
養鶏農家が自前のスイーツラインを持つことは、単なる販路拡大にとどまらず、卵品質のフィードバックループをつくる生産技術面でのメリットも期待できます。
黒富士農場の公式ページでは、有機ばうむ各商品の原材料や保存方法、価格など詳細情報が掲載されており、ここで触れていない細部も確認できます(著作権に配慮し要点のみ紹介しています)。
黒富士農場 有機ばうむ 商品ページ