高血圧症の薬一覧!種類と効果や副作用と農作業の注意点

高血圧症の薬にはどのような種類があり、それぞれどんな効果や副作用があるのでしょうか?農作業中に気をつけるべき事故のリスクや、ジェネリック医薬品の値段の違いについても詳しく解説します。自分に合った薬を知っていますか?

高血圧症の薬一覧

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高血圧症の薬一覧
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主要な降圧剤の種類

カルシウム拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、利尿薬など、作用機序の異なる薬があります。

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副作用と農作業

めまいやふらつきは、機械操作や高所作業中の事故につながるため注意が必要です。

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ジェネリックと価格

長期服用が必要なため、ジェネリック医薬品を利用することで医療費を大幅に抑えられます。

高血圧症の薬の種類と効果

 

高血圧症の治療に使用される薬(降圧剤)は、血圧を下げるメカニズムによっていくつかの主要なグループに分類されます。医師は患者さんの体質、合併症の有無、年齢などを考慮して、これらの薬を単独、または組み合わせて処方します。それぞれの薬が体内でどのように働き、血圧を下げるのかを理解することは、治療を継続する上で非常に重要です。

 

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  • カルシウム拮抗薬(Ca拮抗薬)

    現在、日本で最も多く処方されている降圧剤の一つです。血管の細胞にカルシウムが流入するのを抑えることで、血管を広げて血圧を下げます。血圧を下げる力が比較的強く、安定しているため、多くの患者さんの第一選択薬として選ばれます。狭心症の治療にも使われることがあります。

     

    参考)【一覧表】高血圧の治療薬(降圧剤)の種類・効果・副作用を解説…

    • 主な薬剤名:アムロジピン(ノルバスク)、ニフェジピン(アダラート)、シルニジピン(アテレック)など
  • アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)

    血圧を上げる原因となる体内物質「アンジオテンシンII」が、血管の受容体に結合するのを防ぐことで、血管を拡張させます。日本での普及率が非常に高く、心臓や腎臓を保護する作用も期待できるため、糖尿病や腎臓病を持つ患者さんにもよく使用されます。副作用が比較的少ないのも特徴です。

     

    参考)降圧薬(高血圧に対するお薬)|心臓血管病を理解しよう|心臓血…

    • 主な薬剤名:テルミサルタン(ミカルディス)、バルサルタン(ディオバン)、カンデサルタン(ブロプレス)、オルメサルタン(オルメテック)など
  • ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)

    アンジオテンシンIIが作られるのを防ぐことで血圧を下げます。ARBと同様に心臓や腎臓の保護作用がありますが、特徴的な副作用として「空咳(からせき)」が出ることがあります。誤嚥性肺炎のリスクがある高齢者には、この咳の副作用を逆手にとって処方されることもあります。

     

    参考)高血圧の薬について【一覧・種類・副作用】

    • 主な薬剤名:エナラプリル(レニベース)、イミダプリル(タナトリル)など
  • 利尿薬

    腎臓に働きかけて、体内の余分な水分と塩分(ナトリウム)を尿として排出させることで、血液の量を減らし血圧を下げます。特に塩分摂取量が多い患者さんや、むくみがある患者さんに効果的です。他の降圧剤と併用されることが多く、配合剤として含まれていることもあります。

     

    参考)循環器医から見た高血圧薬の選び方|平塚市の一般内科・循環器内…

    • 主な薬剤名:トリクロルメチアジド(フルイトラン)、フロセミド(ラシックス)、スピロノラクトン(アルダクトン)など
  • β(ベータ)遮断薬

    交感神経の働きを抑え、心臓の拍動をゆっくりにしたり、心臓が血液を送り出す力を弱めたりすることで血圧を下げます。脈が速い人や、労作性狭心症、心筋梗塞後の患者さんなどに適しています。

     

    参考)高血圧の薬(降圧薬)の種類と副作用を内科医が解説!注意点から…

    • 主な薬剤名:ビソプロロール(メインテート)、カルベジロール(アーチスト)など

    これらの薬は、それぞれ作用点が異なるため、1種類の薬で血圧が目標値まで下がらない場合は、異なる種類の薬を2〜3種類組み合わせて飲むことが一般的です。最近では、最初から2種類の成分が1錠に含まれている「配合剤」も増えており、飲む錠数を減らす工夫がされています。

     

    参考)【高血圧】降圧薬配合剤の一覧表【2022年版】

    参考リンク:高血圧(降圧薬)の治療薬は6種類!効果や使い分け|Anamne
    参考リンクの解説:高血圧治療薬の6つの分類と、それぞれの効果や医師がどのように使い分けているかが詳しく解説されています。

     

    高血圧症の薬の副作用と注意点

    薬には主作用(効果)があれば、必ず副作用のリスクも存在します。高血圧症の薬は長期間、場合によっては一生涯飲み続ける必要があるため、どのような副作用が起こりうるかを知っておくことは、早期発見や対策のために不可欠です。ただし、副作用を怖がりすぎて自己判断で服用を中止することは最も危険ですので、異常を感じたら必ず医師に相談してください。

    • カルシウム拮抗薬の副作用

      血管を広げる作用が強いため、飲み始めに「顔のほてり」「顔面紅潮」「頭痛」「動悸」を感じることがあります。また、足のすねや甲に「むくみ(浮腫)」が出ることが知られています。その他、長期間の服用で「歯肉肥厚(歯茎が腫れる)」という独特の副作用が出ることがあります。グレープフルーツジュースと一緒に飲むと、薬の作用が強くなりすぎて血圧が下がりすぎることがあるため注意が必要です。

       

      参考)高血圧の第一選択薬カルシウム拮抗薬の効果・副作用と他の薬との…

    • ARB・ACE阻害薬の副作用

      比較的副作用は少ないですが、血圧が下がりすぎて「めまい」や「ふらつき」を起こすことがあります。ACE阻害薬特有の副作用としては、痰の絡まない乾いた咳「空咳」が有名です。また、稀ですが重大な副作用として、唇や瞼、舌が急激に腫れる「血管浮腫」が起こることがあります。妊娠中の服用は胎児に影響を与える可能性があるため禁忌とされています。

    • 利尿薬の副作用

      尿の量が増えるため、トイレが近くなることがあります。また、血液中の成分バランスが崩れ、「低カリウム血症(力が入りにくい)」や「高尿酸血症(痛風の原因)」を引き起こすことがあります。特に夏場や農作業での大量の発汗時は、脱水症状になりやすいため水分補給が重要です。定期的な血液検査で電解質のバランスを確認する必要があります。

    • β遮断薬の副作用

      心拍数を下げる作用があるため、「徐脈(脈が遅くなりすぎる)」や、それに伴うめまい、息切れが起こることがあります。また、気管支を収縮させる作用があるため、気管支喘息の持病がある患者さんは使用できない場合があります。

    全ての薬に共通する副作用として、飲み始めの時期や薬の量を増やした直後に、急激な血圧低下による「起立性低血圧」が起こりやすくなります。急に立ち上がった時に目の前が暗くなるような症状が出た場合は、転倒に十分注意してください。

     

    参考リンク:高血圧の薬(降圧薬)の種類と副作用を内科医が解説!注意点など|ひまわり医院
    参考リンクの解説:降圧薬の種類ごとの具体的な副作用リストや、飲み合わせの注意点について内科医が詳細に解説しています。

     

    高血圧症の薬の値段とジェネリック

    高血圧症の治療は長期にわたるため、薬代の負担は患者さんにとって大きな関心事です。近年では、先発医薬品(新薬)と同じ有効成分を含み、効き目や安全性が同等であると認められた「ジェネリック医薬品(後発医薬品)」が広く普及しており、これらを活用することで経済的な負担を軽減することができます。

     

    参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9733188/

    ジェネリック医薬品は、先発医薬品の特許期間が満了した後に発売されるため、開発費用が少なくて済み、その分価格が安く設定されています。一般的に、先発医薬品の4〜5割程度、場合によってはさらに安い価格で提供されることもあります。

     

    • 価格差の具体例

      例えば、代表的なARBである「テルミサルタン」やカルシウム拮抗薬の「アムロジピン」などは、ジェネリックを選択することで薬価が半額以下になるケースが多くあります。1日あたりの差額は数十円でも、1年、10年と積み重なると数万円〜数十万円の差になります。

       

    • オーソライズド・ジェネリック(AG)

      「ジェネリックに変えるのは品質が心配」という方におすすめなのが、オーソライズド・ジェネリック(AG)です。これは先発医薬品メーカーから特許使用の許諾を得て、原薬、添加物、製造方法まで先発品と全く同じ、あるいは極めて近い条件で作られたジェネリック医薬品です。中身は先発品と同じでありながら、価格はジェネリック並みというメリットがあります。

       

    • 配合剤によるコスト削減

      2種類の薬を飲んでいる場合、それらが1つになった「配合剤」に切り替えることで、薬価が安くなる場合があります。また、1回に飲む錠数が減るため、飲み忘れの防止にもつながります。配合剤にも多くのジェネリック医薬品が登場しています。

    薬局で「ジェネリックに変更しますか?」と聞かれた際は、積極的に検討してみることをお勧めします。ただし、体質や薬との相性によっては、添加物の違いなどで使用感が変わることもあるため、変更後に違和感があれば薬剤師や医師に相談してください。

     

    参考リンク:【高血圧】降圧薬配合剤の一覧表|本八幡内科・循環器内科クリニック
    参考リンクの解説:複数の成分が一つになった配合剤の先発品と後発品(ジェネリック)の対応表が掲載されており、薬の切り替えを検討する際に役立ちます。

     

    高血圧症の薬と農作業中の事故リスク

    農作業に従事されている方にとって、高血圧症の薬を服用する際に最も注意しなければならないのが、副作用による「めまい」「ふらつき」「眠気」が引き起こす農機具の操作ミスや転落事故のリスクです。一般的な事務仕事とは異なり、農業現場では一瞬の判断の遅れやふらつきが重大な事故につながる可能性があります。

     

    参考)https://www.mhlw.go.jp/content/001234812.pdf

    • トラクターやコンバインの運転

      降圧剤(特にカルシウム拮抗薬やα遮断薬など)の副作用として、血圧が下がりすぎることによるめまいや、集中力の低下が起こることがあります。道路交通法でも、薬の影響で正常な運転ができないおそれがある状態での運転は禁止されています。農耕車も同様で、服用開始直後や薬の量を変更した直後は、体の調子が安定するまで大型機械の運転を控えるなどの配慮が必要です。

       

      参考)https://nitinoki.or.jp/kikaika-mail-mag/column/column_09/column0907/index.html

    • 高所作業(剪定、ハウスの補修)

      脚立を使った剪定作業や、ビニールハウスの屋根の張り替えなど、高所での作業中に「起立性低血圧」による立ちくらみが起きると、転落事故に直結します。急に立ち上がったり、急な体勢変更をしたりする動作は避け、足場を確実に確保してから作業を行うようにしてください。

       

    • 夏場のハウス作業と利尿薬

      夏場のビニールハウス内は極めて高温になります。利尿薬が含まれている降圧剤を服用している場合、体から水分が抜けやすい状態になっているため、通常よりも脱水症状熱中症のリスクが格段に高まります。

       

      「ただの夏バテだろう」と思っていたら、実は薬による脱水が進行していたというケースもあります。農作業中は、こまめな水分補給(水だけでなく電解質を含むもの)を意識し、休憩を通常より多く取る必要があります。また、医師に「農業をしていること」「夏場は激しく汗をかくこと」を伝え、夏場の処方内容(利尿薬の減量など)について相談してみるのも一つの方法です。

       

      参考)https://www.isl.or.jp/service/publishing/jDs98dLs7BN9z7/%E5%8A%B4%E5%83%8D%E3%81%AE%E7%A7%91%E5%AD%A6_72-2_web.pdf

    • 農薬散布時の注意

      マスクや防護服を着用しての農薬散布は体力を消耗し、呼吸も荒くなりがちです。降圧剤の一部(β遮断薬など)は、気管支に影響を与えたり、心拍数の上昇を抑えたりするため、体に負荷がかかった時の「しんどさ」を感じにくくさせたり、逆に息切れを強く感じさせたりすることがあります。無理のない作業計画を立てることが重要です。

    ご自身の身を守るためにも、診察時には必ず「どのような農作業を行っているか(機械操作、高所作業、ハウス作業など)」を具体的に医師に伝え、生活スタイルに合った薬を選んでもらうようにしましょう。

     

    参考リンク:農作業安全を学びましょう(PDF)|厚生労働省
    参考リンクの解説:農作業中の安全対策や、体調管理、機械操作時の注意点などが網羅的に記載されています。薬の副作用による事故を防ぐための基本知識として有用です。

     

    高血圧症の薬の飲み忘れ防止対策

    高血圧治療の最大の敵は「飲み忘れ」です。農繁期で忙しかったり、朝早い収穫作業で生活リズムが不規則になったりすると、つい薬を飲み忘れてしまうことがあります。しかし、飲んだり飲まなかったりを繰り返すと、血圧が乱高下し、血管に大きな負担をかけることになります。

     

    参考)https://pharmacist.m3.com/column/byouki_kusuri/5711

    • 一包化(いっぽうか)の活用

      複数の薬を処方されている場合、朝・昼・夕などの服用タイミングごとに1つの袋にまとめてもらう「一包化」が非常に有効です。袋に「日付」や「朝食後」などを印字してもらうこともできるため、飲んだかどうかが一目でわかります。別途料金がかかる場合がありますが、飲み間違いや紛失を防ぐメリットは大きいです。

       

    • 生活動線に薬を置く

      「食後に飲む」と決めている場合は食卓の上に、「朝起きてすぐ飲む」場合は枕元や洗面所になど、必ず目に入る場所に薬を置く習慣をつけましょう。農家の方であれば、作業着に着替える場所に薬カレンダーを設置するのも良いアイデアです。

       

    • お薬手帳アプリの活用

      スマートフォンを持っている場合は、お薬手帳アプリのアラーム機能を使うのもおすすめです。設定した時間になると通知が来るため、作業に没頭していても気づくことができます。

       

    • 飲み忘れた時の対処法

      もし飲み忘れてしまった場合、基本的には「気づいた時にすぐ1回分を飲む」のが原則ですが、次の服用時間が近い場合は飲み忘れた分を飛ばして、次の回から通常通り服用します。
      絶対に2回分を一度に飲んではいけません。血圧が下がりすぎてショック状態になる危険があります。具体的な対処法については、事前に医師や薬剤師に確認しておきましょう。

       

    薬を確実に飲むことと合わせて、食事療法(減塩)も重要です。自家製の漬物や味噌汁など、農家の食卓には塩分の多い美味しいものが並びがちですが、1日の塩分摂取量は6g未満が推奨されています。薬の効果を最大限に引き出すためにも、日々の食事での減塩を心がけましょう。

     

     


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