条施肥機で側条施肥と施肥量調節

条施肥機の基本から、側条施肥の位置・施肥量調節・肥料選び・詰まり対策までを現場目線で整理します。省力と減肥を両立させる要点を、次の田植え前に一緒に確認しませんか?

条施肥機と側条施肥と施肥量調節

条施肥機の要点(最短で再現する)
側条施肥の位置が「効き」を決める

苗の横3〜5cm・深さ3〜5cmの帯状施肥が基本。位置がズレるとムラや肥料ロスが増える。

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施肥量調節は「事前の調量」が本番

本田に入る前に繰り出し量を合わせる。止発進のクセもムラ要因なので走行を一定にする。

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詰まり・固結は「残肥ゼロ」で防ぐ

作業後にホッパーの肥料を抜き、清掃して吸湿・固結・腐食を防止。雨天は特に要注意。

条施肥機の側条施肥の仕組みと施肥位置

条施肥機(田植機搭載の側条施肥装置を含む)は、田植えと同時に基肥を「条(すじ)」状に土中へ入れていく考え方の機械です。側条施肥の基本位置は、苗(株元)の横おおむね3〜5cm、深さ3〜5cmに局所施用する形で、根が伸びるゾーンに近い場所へ効率よく置けます。こうした位置に入ると肥料の利用効率が上がり、慣行より基肥を減らせる(目安として約20%程度の減肥が可能)という整理がされています。
この「横3〜5cm・深さ3〜5cm」は、条施肥機を使う意味が一番出る部分です。浅すぎると田面水へ養分が出やすく、雑草や藻類の増加、流亡リスクに結びつきます。深すぎると初期生育の立ち上がりが鈍り、せっかくの同時施肥のメリット(活着後の初期生育確保)を削ります。


意外と見落とされがちなのが「肥料は落ちれば終わりではない」という点です。側条施肥は、施肥位置に肥料を置いて、その上に土が適切にかかる(覆土)ことで初めて狙いの効き方になります。代かきの仕上がりが荒い、均平が甘い、植え代が浅いと、同じ設定でも施肥深度や覆土が不安定になりやすいので、条施肥機の話は必ず本田準備とセットで考える必要があります。


参考:側条施肥の位置(横3〜5cm・深さ3〜5cm)や減肥・省力の考え方
全農:側条施肥法の特徴と留意点(施肥位置・減肥・機械調節)

条施肥機の施肥量調節と調量(事前チェック)

条施肥機の施肥量調節で最初に押さえるべきは、「設定値」より「実際の繰り出し量」を優先することです。現場では、肥料の粒径・比重・吸湿状態が少し違うだけで繰り出し量がズレ、10a当たりの施肥量が意図せず変動します。だからこそ、本田に入る前に調量(繰り出し量の確認と合わせ込み)を丁寧に行い、機械の癖と肥料の状態をセットで合わせます。
施肥量調節が不安定になりやすい典型は、(1) 走行速度が一定でない、(2) 発進・停止・旋回のたびに肥料落下が偏る、(3) ほ場条件で車輪が滑って株間が詰まり、結果として覆土や施肥深度が乱れる、の3つです。実証資料でも、発進停止で肥料が一か所に集中すると生育むら・病害の誘因になり得るため、走行は円滑にという注意が明記されています。


調量のコツは「数値合わせ」だけではなく、必ず圃場の端で短距離を試し植えして、施肥深度・覆土・株間が狙い通りか目視で確認することです。机上の施肥量(kg/10a)を合わせても、施肥位置が外れていれば効果は出にくいので、条施肥機は“量×位置”で管理すると失敗が減ります。


参考:基肥の減肥目安(慣行より2割減)や、株間・施肥深さ・覆土の確認ポイント
群馬県:田植え同時処理(側条施肥)のポイント(減肥、施肥深度、走行注意)

条施肥機に適した肥料と不適な肥料(粒・粉・吸湿)

条施肥機は、肥料がホッパーから繰り出され、ホース等を通って作溝部から落ちる構造が多いため、「流れる肥料」かどうかが安定散布の前提になります。公的資料では、側条施肥に適した肥料として、粒が球形で直径2〜5mm程度に揃っていること、粉の混入が少なくつぶれにくいこと、吸湿性が低くべとつきにくいこと、かたまりにくいことが挙げられています。逆に、粒が不揃いで小粒や砂が多いもの、ペレット等で粒が大きく球形でないもの、曇天時に色が変わる(表面が濡れているサイン)などは不適とされています。
ここは「肥料メーカーの推奨」だけでなく、作業日の気象と保管状態で評価が変わるのが落とし穴です。袋を開けた瞬間にサラサラでも、田植え途中の雨、朝露、風の弱い曇天でホッパー内が湿り、粉化→固結→詰まりの順でトラブルが出ることがあります。条施肥機の運用は、肥料銘柄の選定だけでなく、当日の湿度・雨・補給タイミングまで含めて最適化するのが安全です。


意外な現場効果として、側条施肥は田面水中への養分溶出が少なく、藻類の発生が抑えられることで水温が上がりやすい、という指摘があります。つまり「肥料ロスが減る」だけでなく、ほ場環境(田面水の状態)にも波及し得るので、条施肥機の効果を感じにくい年は、水管理や代かきの仕上げも同時に点検する価値があります。


条施肥機のメンテナンスと肥料詰まり・固結の予防

条施肥機トラブルで多いのが「詰まり」と、その前段階の「固結(かたまり)」です。資料でも、施肥機の中に残った肥料を放置すると固結につながるため、施肥後は取り除く必要があるとされ、特に機種によっては繰り出されずに残存しやすい場合があるため注意が必要とされています。さらに、施肥後の清掃を丁寧に行い、吸湿・固結による詰まりを防ぎ、金属部の腐食防止に努めることも明記されています。
予防の実務はシンプルで、次の3点を徹底すると発生率が下がります。


  • 作業終了時はホッパーを空にして、残肥を置かない。
  • 湿った肥料を入れない(袋口の結露、地面に置いた袋、雨天補給に注意)。
  • 旋回時や泥の巻き込みが多い条件では、詰まりの兆候(吐出が弱い、音が変わる、ムラが出る)を早めに疑う。

「掃除してもまた詰まる」を繰り返す現場では、原因が肥料側(粉化・吸湿)なのか、機械側(ロール部の摩耗、ホースの折れ・曲がり、作溝部への泥噛み)なのかを切り分けると改善が速いです。肥料銘柄を変えても改善しないなら機械側、機械を整備しても改善しないなら肥料側・気象側という発想で、原因の層を分けて見ます。


条施肥機の独自視点:水深1cmと覆土で「ムラ」を消す

検索上位の解説は「設定」「減肥」「詰まり」に寄りがちですが、条施肥機の成果を左右する“地味な決め手”は田植え時の水深と土の状態です。実証資料では、田植え時の水深は1cm程度の浅水が推奨され、落水状態や土壌が硬すぎると埋め込みが悪くなり、逆に深水や土壌が柔らかすぎると肥料が設定位置に落下しないため注意とされています。
ここから言えるのは、条施肥機の施肥ムラは「機械の精度」だけでなく、「水と土が作る落下条件」に強く支配されるということです。浅水でも土が硬すぎれば作溝が浅くなり、肥料が浮いて覆土されにくくなります。反対に、代かき直後でトロトロに柔らかい状態や深水だと、肥料が狙いの深さに“刺さらず”に流れたり沈みすぎたりし、結果として株元からの距離がばらつきます。


現場で効く手順は、条施肥機のダイヤルや設定を触る前に「水深」「均平」「スリップ」を先に整えることです。水深を1cm程度に揃え、走行開始直後に株間・施肥深さ・覆土を確認し、車輪のスリップが出るなら無理に速度で押さず、条件を整えた上で一定速度で進む方が、結果的にムラが減って施肥量も“設定通り”に近づきます。


この視点を取り入れると、条施肥機の改善が「調量のやり直し」だけに偏らず、ほ場条件の再現性まで含めた対策になります。条施肥機は高価な装置ですが、性能を引き出すのは、最後は水深と覆土という安価な管理であることが多いのが、実は一番コスパの高い改善点です。