処理8時間以内に連続5mm以上の雨で再処理が必要です
ジベレリン処理がぶどうを種無しにする仕組みは、花粉管の伸長を阻害するという極めて特殊なメカニズムによって実現されています。通常の受精過程では、花粉が柱頭に付着すると花粉管を伸ばし、その先端から精細胞を胚珠へ送り届けます。受精後に胚珠の下部から自然にジベレリンが分泌されるのですが、人為的に外部からジベレリンを処理すると、この花粉管の伸長が著しく阻害されるのです。
花粉管伸長阻害のメカニズムには複数の要因が関わっています。研究によれば、ジベレリン処理後に子房内で花粉管生長阻害物質が合成され、花粉管先端の形状に異常が認められることが報告されています。
つまり阻害物質が原因です。
さらに、ジベレリン処理をした花の花粉を未処理の花の柱頭につけても正常に受精せず無種子果実ができることから、花粉形成時にジベレリン処理すると花粉の受精能力そのものが失われることが明らかになっています。ただし興味深いことに、花粉の形態には異常が見られないため、見た目は正常でも機能が損なわれている状態といえるでしょう。
この花粉管伸長阻害により、精細胞が胚珠へ大量に送られることが阻止され、種子形成がうまく進まなくなります。結果として受精という本来の生殖プロセスが妨げられ、種のないぶどうが誕生するわけです。農業従事者にとっては、この阻害メカニズムを理解しておくことで、処理濃度や処理時期の重要性をより深く認識できるはずです。
デラウェアやシャインマスカットなどの品種では、満開予定日の約14日前から満開時までがジベレリン処理の1回目の適期とされています。この時期は花粉の減数分裂期に相当し、胚のう(胚珠内の構造)の発達を遅延させることで無核化効果が高まるとされています。
早い時期ほど効果が高いですね。
なお、より確実な無核化を目指す場合、ジベレリン単独ではなくストレプトマイシン液剤を併用する方法があります。ストレプトマイシンは胚のう発達の遅延を引き起こし、受精前の胚のう発達を阻害することで無核化率を向上させる効果があります。シャインマスカットなどの種が残りやすい品種では、満開予定日14日前にストレプトマイシンを散布し、その後満開時にジベレリン処理を行うことで、ほぼ100%の無核化率が達成できると報告されています。
日本植物生理学会の「種無しブドウのジベレリン処理について」では、花粉形成時のジベレリン作用と受精能力の関係について詳しい解説があります。
ジベレリンには花粉管伸長を阻害する働きだけでなく、子房を果実に変化させ、さらにその果実を肥大成長させる重要な働きがあります。通常の受精過程では、受粉・受精して胚が形成される際にまずサイトカイニンが生産され、次いでオーキシンとジベレリンが生産されて細胞分裂と細胞肥大を促進します。ジベレリン処理では、この自然な受精プロセスを経ずに、外部から与えたジベレリンがめしべ全域に広がり、子房全体に作用することで果実形成を促すのです。
これが単為結果と呼ばれる現象です。
子房の肥大を促す信号として植物ホルモンが中心的な役割を果たしており、特にジベレリンは子房内の細胞分裂を促進します。研究データによれば、ジベレリン処理によって開花5~10日後の胚珠の生長と子房壁の細胞分裂が促進されることが確認されています。
細胞分裂期に処理すると効果的ですね。
果実の分裂細胞が容積増大に移行する反曲点より早いほど肥大効果が明らかに大きくなるため、2回目のジベレリン処理のタイミングが極めて重要になります。
ぶどう栽培における標準的な2回処理法では、1回目は無核化を主目的とし、2回目は果粒肥大を主目的として行います。1回目処理は満開時から満開3日後に25ppm濃度で行い、2回目処理は満開10~15日後に同じく25ppm濃度で実施するのが基本です。処理期間に幅がある場合、2回目処理は遅い方が果粒の肥大が進むとされていますが、遅れすぎると糖度が低下するというデメリットも報告されています。
バランスが大切です。
フルメット液剤(ホルクロルフェニュロン)を併用すると、細胞分裂を促進して細胞数を増加させ、果実肥大をさらに促進する効果があります。巨峰やピオーネなどの品種では、1回目処理時にジベレリン25ppmとフルメット5ppmを混用し、2回目はジベレリン25ppm単用とする方法が一般的です。ただしシャインマスカットでは、2回目処理にフルメットを加用すると果粒肥大は進むものの、果皮が硬くなり皮が残って食感が悪くなるため使用しません。
品種特性の理解が必須です。
果実肥大後の最終段階では、エチレンという植物ホルモンが作用して果実が横に肥大し、果実に蓄えられているデンプンが糖に変換されて、甘くみずみずしい商品性の高いぶどうが完成します。
日本植物調節剤研究協会の「果実成長に関わる植物ホルモンの働きと利用」では、細胞分裂と細胞肥大を制御するホルモンの詳細が解説されています。
ジベレリン処理で最も重要なのが、処理タイミングと濃度の正確な管理です。処理適期を外すと、無核化率の低下、着粒不良、果粒肥大不足、糖度低下など、収穫量と品質の両面で深刻な損失が発生します。実際の栽培現場では、天候や樹勢のばらつき、他品種の処理との兼ね合いなど、適期管理を難しくする要因が複数存在するため、基本原則の徹底的な理解が求められます。
シャインマスカットを例にとると、1回目のジベレリン処理適期は花穂の房尻まで8割以上開花した満開からその3日後までとされています。現場では処理適期が短いことや他品種のジベレリン処理と重なり作業が集中することから、開花率が8割以下の花穂に処理してしまうケースが多いのですが、処理が早すぎるとショットベリー(着粒不良)の着生が多くなり、穂軸が湾曲しやすくなります。逆に1回目処理が遅れた場合は着粒が不安定になり、商品価値の低い房が増えてしまいます。
適期厳守が原則です。
濃度管理も同様に重要で、ぶどうの品種ごとに適正濃度が異なります。シャインマスカットやピオーネなどの大粒品種では水1リットルに対してジベレリン錠剤1錠で適正濃度25ppmになりますが、デラウェアなどの小粒品種では異なる濃度設定が必要です。濃度を誤ると種無し化に失敗するだけでなく、果皮が硬くなったり奇形果が増加したりするリスクがあります。特に濃度が濃すぎる場合は奇形花が増加するため、50ppmを目安の上限として調整すべきでしょう。
処理後の環境条件も無視できない要素です。ジベレリン溶液の果粒内への浸透は処理後8~10時間が最も重要な時間帯であり、この間の湿度管理が成否を分けます。処理から72時間後までに相対湿度が80%以上で8時間を経過することが必要とされており、この条件を満たさないと効果が不十分になります。逆に湿度が高すぎると灰色かび病などの病害リスクが高まるため、加温栽培では換気とのバランスを取る必要があります。
降雨による再処理の判断基準も明確に定められています。1回目処理の場合、処理後8時間以内に連続5mm以上の雨が降ると再処理が必要です。2回目処理後も同様に、処理後12時間以内に25mm以上の雨が降った場合は再処理を行うべきとされています。ただし再処理は軸が固くなり脱粒が生じるなどデメリットが多いため、基本的には天候を見極めて晴天が続く日を選んで処理するのが賢明です。処理直後に大雨でほぼ流された場合だけが例外ですね。
露地栽培では雨の日にはジベレリン処理ができないため、満開期の天候予測と作業計画が極めて重要になります。早朝から午前中に処理を行い、降雨が予想される場合はビニール傘をかけるなどの対策も有効です。
島根県農業技術センターの「ジベレリン処理の留意事項」では、処理適期と環境条件について実践的な情報が詳しく記載されています。
シャインマスカットや巨峰などの種が残りやすい品種では、ジベレリン処理単独では完全な無核化が難しく、数粒の種子が混入してしまうケースが少なくありません。この問題を解決する手段として、ストレプトマイシン液剤を併用する方法が広く実用化されています。ストレプトマイシンは本来抗生物質として知られる物質ですが、植物に対しては胚のう発達の遅延を引き起こし、受精前の胚のう発達を阻害することで無核化率を大幅に向上させる効果があるのです。
使用方法としては、満開予定日の14日前から満開時までの期間に、ぶどう園全体に散布処理を行います。早い時期ほど効果が高いとされており、その理由は減数分裂の時期に作用するためです。胚のう発達が阻害されると受精そのものが成立しなくなり、結果として種子が形成されない確率が高まります。満開時期にストレプトマイシンを使うほど効果が下がるため、できるだけ早めの散布が推奨されています。
効果は時期次第ですね。
シャインマスカットでの実験データによれば、100%開花時のジベレリン処理にストレプトマイシンを加用して浸漬処理することで、ジベレリン処理のみの場合と比較して無核化率を大幅に高めることができます。同様の効果は「クイーンニーナ」などの他の品種でも確認されており、満開期の無核化・肥大処理だけでは種子が混入する場合でも、ストレプトマイシン処理を行うと無核化率がさらに高まることが報告されています。
巨峰の無核化処理においても、満開10日前のストレプトマイシン液剤処理を併用すると、満開後の処理回数にかかわらず無核果率が高くなり、果実品質も同等に保たれることが実証されています。
つまり労力削減の可能性もあるわけです。
ただしストレプトマイシンを使用する際には、適用のある製品に限定されることに注意が必要です。ぶどうの無種子化に登録のある製品としては「アグレプト液剤」などがあり、これらを規定の濃度と方法で使用することが求められます。適用外の製品を使用すると農薬取締法違反になる可能性があるため、製品ラベルの確認が必須です。
併用処理のスケジュール例を示すと、満開予定日14日前にストレプトマイシン散布、満開時(房尻まで8割以上開花)にジベレリン25ppm浸漬処理、満開10~15日後にジベレリン25ppm浸漬処理という流れになります。この3段階の処理により、ほぼ完全な無核化と十分な果粒肥大が同時に達成できるのです。
茨城県農業総合センターの「『シャインマスカット』の無核化にはストレプトマイシン処理が有効」では、併用処理の具体的なデータと効果が示されています。
ジベレリン処理の効果や適正な方法は、ぶどうの品種によって大きく異なります。品種ごとの特性を理解せずに画一的な処理を行うと、期待した効果が得られないばかりか、品質低下や商品価値の損失につながる恐れがあります。特にデラウェア、巨峰、シャインマスカットという日本の主要3品種では、それぞれ異なるアプローチが求められるのです。
デラウェアは小粒品種の代表格で、ジベレリン処理の歴史も長く、技術が確立されています。デラウェアでは2回のジベレリン処理が必要で、1回目は満開予定日約14日前、2回目は満開約10日後が処理適期とされています。処理濃度については品種特性に応じた調整が必要で、デラウェアは糖度が高く23度程度になるものもあるため、適切な処理によって小粒ながら高品質な商品が生産できます。
濃度管理が鍵ですね。
巨峰は日本で最も生産量の多い黒系大粒品種ですが、完全に種無しにするのが難しい品種として知られています。巨峰の標準的な処理方法は、1回目処理を満開時~満開3日後にジベレリン25ppm+フルメット5ppmで行い、2回目処理を満開10~15日後にジベレリン25ppm単用で実施します。フルメットの併用により無核化率と果粒肥大の両方が向上しますが、それでも数粒の種子が残る場合があるため、より確実な無核化を目指す場合はストレプトマイシン処理の併用が推奨されます。
シャインマスカットは欧州系品種の特性を持つため、ジベレリン処理の効果が現れやすい品種です。ただし巨峰よりも種が残りやすい傾向があるため、ストレプトマイシン処理がほぼ必須とされています。シャインマスカットの処理方法には2回処理法と1回処理法の2つがあり、2回処理法では満開3日後に1回目、満開10~15日後に2回目を行います。1回処理法は省力化を目的とした方法で、満開5日後にジベレリンとフルメットの混用処理を1回行うだけですが、果粒が球形になり穂軸の伸長が劣るため密着果房になりやすく、果粒肥大もやや劣るというデメリットがあります。
選択は状況次第です。
重要な注意点として、シャインマスカットでは2回目処理にフルメットを加用してはいけません。加用すると果粒肥大は進むものの、果皮が硬くなり皮が残って食感が悪くなるため、商品価値が著しく低下します。このように品種ごとの細かな注意事項を守ることが、高品質な商品生産には不可欠です。
処理作業の労力面でも品種による違いがあります。デラウェアは房が小さいため比較的短時間で処理できますが、シャインマスカットや巨峰などの大粒品種は房が大きく重いため、1房ずつ液に浸す作業に時間がかかります。ジベレリン処理や摘房、摘粒、袋がけなどの作業負担が大きく、特に作業に慣れないうちは1日で処理できる面積が限られるため、規模拡大を考える際には労力確保が重要な課題になります。
時間管理が必須ですね。
なお、種ありぶどうとして栽培する場合、ジベレリン処理を行わないため作業負担は大幅に軽減されますが、市場では種無しぶどうの需要が圧倒的に高いため、商品性と作業負担のバランスを考慮した品種選択と栽培方法の決定が求められます。
愛知県農業総合試験場の「消費者に大人気!ブドウ『シャインマスカット』の特性と栽培技術」では、品種特性に応じた処理法の詳細が解説されています。

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