ガスタード微粒剤の販売店は?通販価格とバスアミドとの違い

ガスタード微粒剤はどこで買える?JAや通販での販売価格、購入時の「劇物」手続きの壁とは。同じ成分のバスアミドとの違いや、専用の穴あき袋を使った便利な散布方法まで、農家が知りたい情報を網羅しました。
ガスタード微粒剤 購入のポイント
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購入場所

基本はJA(農協)。通販も可能だが書類郵送が必要。

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手続きの注意

劇物指定のため、購入には「譲受書」と「捺印」が必須。

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バスアミドとの違い

成分は同じ。ガスタードは「穴あき袋」での手軽な散布が強み。

ガスタード微粒剤の販売

ガスタード微粒剤は、土壌中の病原菌やセンチュウ雑草の種子を一度に防除できる優れた土壌消毒剤ですが、「どこで売っているのか」「通販で簡単に買えるのか」という疑問を持つ農家の方は少なくありません。劇物指定されているため、通常の農薬とは購入フローが少し異なります。ここでは、購入場所の選択肢から、通販特有の手続き、類似品との比較、そして現場で役立つ散布テクニックまでを詳しく解説します。

 

販売 通販やJAでの購入方法と劇物指定の壁

 

ガスタード微粒剤を購入する主なルートは、地域のJA(農協)の購買カウンターか、農薬専門のオンラインショップです。ホームセンターの店頭に並ぶことは稀で、基本的には対面販売で身元確認ができる場所か、厳格な手続きを行う通販サイトに限られます。

 

通販で購入する場合、Amazonや楽天などのボタン一つで翌日届くような買い方はできません。ガスタード微粒剤は「劇物(医薬用外劇物)」に指定されているため、法律により購入者の身元確認が義務付けられているからです 。

 

参考)毒物劇物指定農薬ガイド

通販購入の具体的な流れ:

  1. ネットで注文: 商品をカートに入れて決済処理をします。
  2. 譲受書のダウンロード: ショップから指定された「毒物劇物譲受書」をダウンロードし、印刷します。
  3. 記入と捺印: 住所、氏名、職業、使用目的などを記入し、必ず印鑑(認印可、シャチハタ不可の場合が多い)を押します。
  4. 郵送: 書類をショップへ郵送します(一部ショップでは鮮明な画像メールで仮受付し、後日原本郵送のケースもあり)。
  5. 発送: 書類がショップに到着し、不備がないことが確認されてから商品が発送されます。

この「書類の郵送」というワンクッションがあるため、急ぎで欲しい場合は、在庫を持つ地元のJAに直接出向くのが確実です。また、配送先は自宅や農場などの「登録住所」に限られ、営業所止めやコンビニ受取はできない点にも注意が必要です 。

 

参考)農家のお店おてんとさん 医薬用外毒物・劇物指定農薬の購入方法

参考リンク:医薬用外毒物・劇物指定農薬の購入方法(おてんとさん) - 購入に必要な譲受書の書き方や手続きの詳細

価格 ガスタード微粒剤の価格相場とバスアミドとの違い

ガスタード微粒剤の価格は、20kg袋で20,000円~23,000円前後が相場です。10kg袋や5kg袋も販売されていますが、単価(kgあたりのコスト)で見ると20kg袋が最も割安になります 。

 

参考)https://www.ja-asakano.or.jp/archives/member_topic/2810

よく比較されるのが、同じ有効成分「ダゾメット」を含む「バスアミド微粒剤」です。実は、ガスタードとバスアミドは成分濃度(ダゾメット96.5%)も性状も全く同じ薬剤です。

 

比較項目 ガスタード微粒剤 バスアミド微粒剤
メーカー クミアイ化学工業 アグロ カネショウ / 日本曹達
有効成分 ダゾメット 96.5% ダゾメット 96.5%
毒性 劇物 劇物
特徴的な包装 穴あき袋(5kg/10kg)あり 一般的な袋が中心
主な販路 JA(系統)ルートに強い 商系・一般販売店に強い

選ぶ基準は「入手しやすさ」と「価格」:
中身は同じなので、普段取引のある資材店やJAで安く手に入る方を選んで問題ありません。地域によっては「JA推奨銘柄がガスタードなので、JAではガスタードの方が在庫豊富」といった事情があります。逆に、商系の農薬販売店ではバスアミドの方が特売にかかりやすいこともあります。どちらか一方が極端に効き目が違うということはありません 。

 

参考)土壌消毒に使用するガスタード微粒剤はどこで買えますか? - …

使い方 穴あき袋で散布する「引きずり農法」のメリット

ガスタード微粒剤(特に5kg、10kg規格)の最大の特徴であり、現場で支持されているのが「穴あき袋(ロープ付き)」の存在です。これは、袋の底にあらかじめ散布用の穴が開いており、付属のロープを結んで引きずって歩くだけで薬剤を散布できるというアイデア包装です 。

引きずり散布(手散布)のメリット:

  • 機械が不要: 動力散布機やトラクターのアタッチメントがない小規模なハウスや、機械が入りにくい変形地でも手軽に散布できます。
  • 被爆リスクの低減: 薬剤の粉塵を浴びにくいです。散粒機を背負うと顔の近くで薬剤が舞うことがありますが、引きずり方式なら薬剤は足元以下の位置で排出され、自分は風上に立って前進すれば、薬剤を吸い込むリスクを大幅に減らせます。
  • 均一な散布: 歩く速度を一定に保つことで、意外とムラなく撒くことができます。「5kg袋で約10分で散布」といった目安があり、ペース配分もしやすい設計になっています。

コツ:
使用前に、散布予定の面積に合わせて袋の数を用意し、圃場全体に均等に配置してからスタートすると、「最後だけ足りない」といった失敗を防げます。袋を引きずる際は、地面に凸凹が多いと袋が跳ねて散布量にムラが出るため、事前の整地(耕起)を丁寧に行うことが綺麗に撒くポイントです。

 

効果 土壌消毒の効果を高めるガス抜きのコツ

ガスタード微粒剤(ダゾメット剤)は、土壌の水分と反応して「MITC(メチルイソチオシアネート)」というガスを発生させ、そのガスで土の中を燻蒸します。つまり、「水分」「密閉」が成功の鍵を握ります。

 

  1. 適切な土壌水分:

    散布時の土壌水分が適度(握って団子ができる程度)であることが必須です。乾いた土に撒いてもガス化せず、消毒効果が出ないばかりか、いつまでも薬剤が残留して後作に薬害(生育不良)を引き起こす原因になります 。乾燥している場合は、散布前に必ず灌水を行ってください。

  2. 被覆による密閉:

    薬剤を混和したら、すぐにビニールやポリマルチで地面を覆います。ガスを外に逃がさず、土の中に充満させるためです。被覆期間は地温にもよりますが、通常7日~14日程度必要です 。

  3. 徹底的なガス抜き:

    これが最も重要です。被覆期間が終わったらビニールを剥がし、耕うんしてガスを大気中に放出させます。これを「ガス抜き」と言います。ガスが残ったまま苗を植えると、根が焼けて枯れてしまいます。

     

    • 被覆除去後、2~3回は丁寧に耕うんする。
    • その後、さらに3~7日放置して完全にガスを抜く。
    • 安全確認:「簡易発芽試験(コマツナなどの種を撒いて正常に発芽するか見る)」を行うと確実です。

参考リンク:ガスタード・バスアミド微粒剤について(JA全農) - 水分条件とガス抜きの失敗例についての技術資料

注意点 使用時の服装と近隣への配慮

ガスタード微粒剤は、クロルピクリン剤のような強烈な刺激臭は少ないものの、劇物であることに変わりはありません。使用時は油断せず、安全対策を徹底してください。

 

  • 服装: 長袖、長ズボン、ゴム手袋、そして防護マスク(農薬用マスク)を必ず着用します。特に夏場のハウス内での作業は高温になりがちですが、肌の露出は避けてください。目に入ると激しい痛みや損傷の原因になります。保護メガネも必須です 。​
  • 近隣への配慮: 刺激臭が少ないとはいえ、ガス化する過程で臭気が発生することがあります。住宅地が近い圃場では、風向きを考慮し、近隣住民へ「土壌消毒を行う」旨を事前に伝えておくとトラブルを防げます。
  • 機械の洗浄: 散粒機を使用した場合は、使用後すぐに洗浄してください。薬剤が金属部分に付着したまま湿気を吸うと、錆びや腐食の原因となり、機械を傷めます 。​

ガスタード微粒剤は、適切な手順を踏めば、トラクターがない家庭菜園レベルからプロ農家まで幅広く使える便利な資材です。「水分確保」「被覆」「ガス抜き」の3ステップを確実に守り、安全に土壌病害をリセットしましょう。

 

 


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