ガスタード微粒剤は、土壌中の病原菌やセンチュウ、雑草の種子を一度に防除できる優れた土壌消毒剤ですが、「どこで売っているのか」「通販で簡単に買えるのか」という疑問を持つ農家の方は少なくありません。劇物指定されているため、通常の農薬とは購入フローが少し異なります。ここでは、購入場所の選択肢から、通販特有の手続き、類似品との比較、そして現場で役立つ散布テクニックまでを詳しく解説します。
ガスタード微粒剤を購入する主なルートは、地域のJA(農協)の購買カウンターか、農薬専門のオンラインショップです。ホームセンターの店頭に並ぶことは稀で、基本的には対面販売で身元確認ができる場所か、厳格な手続きを行う通販サイトに限られます。
通販で購入する場合、Amazonや楽天などのボタン一つで翌日届くような買い方はできません。ガスタード微粒剤は「劇物(医薬用外劇物)」に指定されているため、法律により購入者の身元確認が義務付けられているからです 。
参考)毒物劇物指定農薬ガイド
通販購入の具体的な流れ:
この「書類の郵送」というワンクッションがあるため、急ぎで欲しい場合は、在庫を持つ地元のJAに直接出向くのが確実です。また、配送先は自宅や農場などの「登録住所」に限られ、営業所止めやコンビニ受取はできない点にも注意が必要です 。
参考)農家のお店おてんとさん 医薬用外毒物・劇物指定農薬の購入方法
参考リンク:医薬用外毒物・劇物指定農薬の購入方法(おてんとさん) - 購入に必要な譲受書の書き方や手続きの詳細
ガスタード微粒剤の価格は、20kg袋で20,000円~23,000円前後が相場です。10kg袋や5kg袋も販売されていますが、単価(kgあたりのコスト)で見ると20kg袋が最も割安になります 。
参考)https://www.ja-asakano.or.jp/archives/member_topic/2810
よく比較されるのが、同じ有効成分「ダゾメット」を含む「バスアミド微粒剤」です。実は、ガスタードとバスアミドは成分濃度(ダゾメット96.5%)も性状も全く同じ薬剤です。
| 比較項目 | ガスタード微粒剤 | バスアミド微粒剤 |
|---|---|---|
| メーカー | クミアイ化学工業 | アグロ カネショウ / 日本曹達 |
| 有効成分 | ダゾメット 96.5% | ダゾメット 96.5% |
| 毒性 | 劇物 | 劇物 |
| 特徴的な包装 | 穴あき袋(5kg/10kg)あり | 一般的な袋が中心 |
| 主な販路 | JA(系統)ルートに強い | 商系・一般販売店に強い |
選ぶ基準は「入手しやすさ」と「価格」:
中身は同じなので、普段取引のある資材店やJAで安く手に入る方を選んで問題ありません。地域によっては「JA推奨銘柄がガスタードなので、JAではガスタードの方が在庫豊富」といった事情があります。逆に、商系の農薬販売店ではバスアミドの方が特売にかかりやすいこともあります。どちらか一方が極端に効き目が違うということはありません 。
参考)土壌消毒に使用するガスタード微粒剤はどこで買えますか? - …
ガスタード微粒剤(特に5kg、10kg規格)の最大の特徴であり、現場で支持されているのが「穴あき袋(ロープ付き)」の存在です。これは、袋の底にあらかじめ散布用の穴が開いており、付属のロープを結んで引きずって歩くだけで薬剤を散布できるというアイデア包装です 。
引きずり散布(手散布)のメリット:
コツ:
使用前に、散布予定の面積に合わせて袋の数を用意し、圃場全体に均等に配置してからスタートすると、「最後だけ足りない」といった失敗を防げます。袋を引きずる際は、地面に凸凹が多いと袋が跳ねて散布量にムラが出るため、事前の整地(耕起)を丁寧に行うことが綺麗に撒くポイントです。
ガスタード微粒剤(ダゾメット剤)は、土壌の水分と反応して「MITC(メチルイソチオシアネート)」というガスを発生させ、そのガスで土の中を燻蒸します。つまり、「水分」と「密閉」が成功の鍵を握ります。
散布時の土壌水分が適度(握って団子ができる程度)であることが必須です。乾いた土に撒いてもガス化せず、消毒効果が出ないばかりか、いつまでも薬剤が残留して後作に薬害(生育不良)を引き起こす原因になります 。乾燥している場合は、散布前に必ず灌水を行ってください。
薬剤を混和したら、すぐにビニールやポリマルチで地面を覆います。ガスを外に逃がさず、土の中に充満させるためです。被覆期間は地温にもよりますが、通常7日~14日程度必要です 。
これが最も重要です。被覆期間が終わったらビニールを剥がし、耕うんしてガスを大気中に放出させます。これを「ガス抜き」と言います。ガスが残ったまま苗を植えると、根が焼けて枯れてしまいます。
参考リンク:ガスタード・バスアミド微粒剤について(JA全農) - 水分条件とガス抜きの失敗例についての技術資料
ガスタード微粒剤は、クロルピクリン剤のような強烈な刺激臭は少ないものの、劇物であることに変わりはありません。使用時は油断せず、安全対策を徹底してください。
ガスタード微粒剤は、適切な手順を踏めば、トラクターがない家庭菜園レベルからプロ農家まで幅広く使える便利な資材です。「水分確保」「被覆」「ガス抜き」の3ステップを確実に守り、安全に土壌病害をリセットしましょう。