枝豆摘芯(摘心)は「やったほうが必ず得」という作業ではなく、草勢の強さと作型に合わせて“効かせる”管理です。基本の目安は、本葉が5〜6枚(5〜6節)展開した頃に、主茎の先端(頂芽)を止めることです。これにより、わき芽(側枝)が伸びやすくなり、側枝にも莢がついて多収につながる、と整理されています。
ただし、ここで重要なのは「本葉の数え方」を現場で統一することです。子葉(双葉)と、その上に出る初生葉は“本葉の枚数に入れない”説明が一般的で、数え間違いが起きやすいポイントになります。人によって「もう5枚だと思って摘んだら、実は本葉3〜4枚相当だった」というズレが出ると、過度のストレスになったり、その後の枝の出方が想定と違ったりします。
タイミングの狙いは、側枝が伸びて花を付けるまでの“時間の余裕”を確保することです。遅すぎると、すでに主茎優勢の形が固まり、分枝が追いつきにくくなります。一方で早すぎても、株の体力が不足して回復が遅れたり、枝数は増えても莢の太りが乗らなかったりするので、まずは本葉5〜6枚付近を基準に、畑の草勢(地力、元肥、気温)で前後させるのが安全です。
・参考:摘芯の基本(本葉5〜6枚で主茎の先端を摘む、倒伏抑制や多収の狙い)
タキイのエダマメ栽培マニュアル(摘芯・潅水の章)
枝豆摘芯の方法はシンプルで、「主茎の頂点にある芽(頂芽)だけ」を落とします。目安として“本葉を5枚残して先端を摘む”という説明が多く、手でひねり取るか、ハサミで切ります。ハサミを使う場合は、刃を清潔に保つことが前提で、作業前に消毒しておく注意がよく書かれます。
現場で起きがちな失敗は、頂芽だけでなく“柔らかい茎ごと深く切ってしまう”ことです。深く切るほど回復に時間がかかり、側枝が出るまでのロスが増えます。また、摘芯した直後は株の形が一時的に乱れやすく、込み入った枝が出た場合は、風通しと採光を確保するために整理(間引き)を入れる考え方もあります。
作業の段取りとしては、次の順がミスが減ります。
✅ 摘芯の前に確認:本葉の枚数、草丈、圃場全体の揃い(遅れ株が多いなら待つ判断も)
✅ 道具:手なら清潔に、ハサミなら事前消毒
✅ 切る場所:頂芽だけ、切り口は最小限
✅ 作業後:側枝の伸び方を見て、込み合いが強い株だけ軽く整理
摘芯は「どこを切るか」より「どこまで残すか」が収量を左右します。枝豆は生育期間が短いので、切り過ぎの回復待ちがそのまま取り返しにくい遅れになります。
枝豆摘芯の代表的な効果は、(1)側枝が増えて莢を付ける“面積”が増える、(2)草丈が抑えられて倒伏しにくくなる、の2つです。とくに中生〜晩生で主茎長が長くなりやすいタイプは、摘芯の効果が出やすい、と栽培マニュアルでも整理されています。
一方で、摘芯だけで収量が自動的に上がるわけではありません。枝豆は開花初期の7〜10日が非常に重要で、この時期の水分不足や肥料不足、高温・低温、日照不足などのストレスで落花・落莢が増える、とされています。摘芯して枝数を増やしても、この“勝負の期間”に水と養分が足りなければ、花が落ちたり莢が太らなかったりして、結果として期待した増収にならないことがあります。
摘芯とセットで見直したいのは潅水です。開花以前の潅水は分枝・節数を増やす目的があり、開花着莢期の潅水は落花・落莢を防いで着莢率や秀品率を上げるために必要、という考え方が明確に示されています。摘芯で“枝を増やす方向”に舵を切ったなら、水管理で“枝を実に変える”ところまで支えるのがポイントです。
・参考:摘芯の効果(倒伏しづらい、わき芽が伸び側枝にも莢がつき多収)、開花期の水管理の重要性
タキイのエダマメ栽培マニュアル(摘芯・潅水の章)
品種(早生・中生・晩生)で、摘芯の“効き”は変わります。草丈がしっかり伸びる晩生寄りは摘芯の効果が出やすい一方、早生や草丈が低い品種では、摘芯しても効果が出にくい(むしろ莢つきがまとまりすぎて収量が伸びない)といった経験則が紹介されています。つまり、摘芯は「品種の弱点を補う作業」ではなく、「草勢が強すぎる時に、樹形を分枝型へ誘導して収量に変える作業」と捉えると判断が安定します。
現場では、同じ圃場でも畝ごとに地力差があり、同一品種でも草勢にムラが出ます。ここで全株一律に摘芯すると、強いところはちょうど良く、弱いところは逆効果、ということが起きます。安全策は「圃場を見て、強いゾーンだけ摘芯する」運用です(全面実施がダメという意味ではなく、判断の幅を持たせるという意味)。
また、摘芯の目的が倒伏回避なのか、収量狙いなのかで、判断も変わります。倒伏が心配なほど主茎が伸びているなら、摘芯で草丈を抑える意味が出ます。逆に、草丈がそもそも低い・節間が詰まっている・葉色が淡いといった株では、摘芯よりも水と根の状態、追肥の要否(やり過ぎ注意)を先に見直した方が結果が安定します。
摘芯の価値は「莢数」だけでなく、収穫・調製の作業性に効く点が、意外と見落とされがちです。大豆(えだまめ)産地の現地研修会資料では、草丈を抑えて収穫作業(脱莢・脱粒)の効率化を図る目的で、摘芯の時期(初生葉展開時/本葉5枚頃/開花前/摘芯なし)を比較し、草丈・莢数・収量・百粒重・作業性を調査する、という試験の組み立てが示されています。ここから読み取れるのは、「摘芯=収量アップ」だけではなく、「摘芯=作業設計の一部」という発想が、実務的にはかなり重要ということです。
作業性の観点で見ると、草丈が高く葉が茂りすぎる圃場は、
・防除の薬液が莢周りまで届きにくい
・収穫時に株が倒れて絡み、引き抜きや収穫が遅れる
・脱莢工程で扱いづらく、ロスが増える
といった“見えない損”が積み上がります。摘芯で草丈を抑え、株の形を整えると、この損が減る可能性があります。
さらに、摘芯の時期を試験している点も示唆的です。つまり「本葉5枚頃が基本」でも、圃場の目的(作業性優先、品質優先、倒伏回避優先)によっては、前後させる余地があるということです。毎年同じやり方で結果がブレる場合、摘芯を“作業の儀式”にせず、草丈・節間・葉色・揃い・天候(特に開花期の乾燥)まで含めて意思決定すると、改善の糸口が掴めます。
・参考:摘芯の目的に「収穫作業の効率化」を含め、時期別比較(初生葉展開時/本葉5枚頃/開花前/摘芯なし)で草丈・収量・作業性を調査する試験設計
第1回 あけぼの大豆現地研修会(摘芯による草丈抑制・収量増加の検討)
【現場メモ(すぐ使えるチェック)】
・摘芯するか迷うとき:晩生寄りで草丈が伸びる/肥沃で茎葉が旺盛→摘芯の意味が出やすい
・摘芯の基準:本葉5〜6枚(子葉・初生葉は数えない)
・摘芯後に大事なこと:開花期〜着莢期の乾燥を避ける(落花・落莢を増やさない)
・狙いを明確に:収量だけでなく、倒伏回避と作業性も“効果”に入れて評価する
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