ドリップイリゲーション 施肥 灌水 チューブ フィルター

ドリップイリゲーションを現場で失敗なく導入するために、仕組み・設計・施肥・目詰まり対策までを農業従事者向けに整理します。コスト回収の考え方や意外な落とし穴も押さえた上で、あなたの圃場に最適な始め方はどれでしょうか?

ドリップイリゲーション 施肥 灌水

ドリップイリゲーションの要点
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水を「根の近く」に届ける

点滴で少量ずつ与えるため、蒸発や流亡のロスを抑えやすく、必要量を作物へ届ける設計がしやすい。

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施肥とセットで効果が出やすい

水に肥料を溶かして同時施肥(液肥)すると、根域へ確実に届きやすく、減肥と省力化の両立が狙える。

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目詰まり・水圧が成否を分ける

フィルター清掃、電磁弁まわりの空気混入対策、水源水圧と流量の見積りが不足すると、ムラ灌水や停止が起きやすい。

ドリップイリゲーション 仕組み チューブ 圧力計 電磁弁


ドリップイリゲーション(点滴灌水)は、点滴かん水チューブの小さな孔から作物の根元付近へ少しずつ水を与える方式で、少ない水でも効率よく灌水しやすいのが特徴です。根に確実に水が届くため、水に肥料を溶かして供給すれば、灌水と同時に施肥もしやすくなります。
設備の考え方は意外とシンプルで、「水源→(必要ならタンクで水頭確保)→フィルター→圧力計→電磁弁→配管→点滴チューブ」という流れで組みます。特に露地で低コストに始める場合、ソーラーパネルで駆動する小型ポンプでタンクへ汲み上げ、一定量が溜まると弁が開いて勢いよく送水する“拍動かん水装置”という構成が紹介されています。


ここで重要なのが「点滴チューブはポンプに直結しても末端まで水が届きにくい」という現場の罠です。小型ポンプは毎分12L程度と能力が小さいため、タンクに貯めてから一気に満たす、という仕組みで末端到達性を確保する考え方が手引きで説明されています。つまり、うまくいくかどうかは作物より先に“水圧と配管の設計”でほぼ決まります。


また電磁弁は「空気が混入すると開閉しない」ため、水平設置・空気混入防止・灌水面より低い位置への設置など、設置位置がトラブル回避の核心になります。導入直後に「なぜか動かない」問題は、電源よりもこの空気混入・設置高さが原因のことが多いので、最初に潰しておくと作業が速くなります。


ドリップイリゲーション 設計 水圧 流量 かん水時間 計算

ドリップイリゲーションを「なんとなく」敷くと、畝の手前だけ濡れて奥が乾くムラが出やすいので、最低限の計算が必要です。電池式簡易かん水装置の説明では、水源の水圧とかん水量から1回あたりのかん水時間を計算し、設定値と実際のズレも把握して調整する必要があるとされています。
考え方は、ざっくり次の順番です。


  • 1株あたり必要な水量(L/日)×定植株数=1日必要かん水量(L/日)
  • チューブ総延長(m)×点滴チューブの吐出量(L/分/m)=1分あたりかん水量(L/分)
  • 1日必要かん水量÷1分あたりかん水量=1日かん水時間(分)
  • 1日かん水時間÷1日かん水回数=1回あたりかん水時間(分)

この「吐出量(L/分/m)」は水圧で変わる点が重要です。手引きでは、水圧が低くなると吐出量が減ることが明記され、水圧(bar)と吐出量の対応表も示されています。つまり、水源が弱い・配管が長い・高低差がある圃場では、カタログ値のまま計算しても実際は足りず、乾きムラが出て収量が落ちるリスクがあります。


もう一つの現場ポイントは「季節・生育ステージで必要水量が変わる」ことです。同じ天気でも苗の時期と繁茂期では要求水量が何倍も違うため、拍動かん水装置なら揚水量調節バルブ、タイマ式ならかん水時間設定を、生育段階ごとに調整する必要があるとされています。最初に“1回の設定でシーズン固定”と思わないことが、失敗を減らします。


ドリップイリゲーション 減肥 追肥 液肥 タンク

ドリップイリゲーションの価値は「水やりが楽」だけではなく、施肥の設計を作り直せる点にあります。手引きでは、点滴かん水では根が点滴孔周辺によく発達し、その場所に水とともに肥料を与えるので確実に根に届き無駄が少なくなり、慣行より減肥が可能になると説明されています。
拍動かん水装置の特徴として、高価な混入器を使わず「タンク内に肥料を直接投入して液肥を作る」やり方が紹介されています。肥効調節型肥料(例:40日タイプ等)を網袋に入れてタンク内に沈め、一定期間少しずつ溶出させるという運用が示され、追肥作業が“タンクに入れるだけ”になるため省力化の効果が大きいのがポイントです。


ただし粒状肥料(化成肥料)では造粒剤などにより沈殿物が出ることがあり、配水口位置の工夫、沈殿残渣の掃除、いったん別容器で溶かして上澄み利用などの注意点が挙げられています。ここは意外に見落とされがちで、目詰まりの原因を「水の汚れ」と決めつけると、実は肥料由来の沈殿だった、ということも起きます。


減肥の話を現実の数字に落とすと説得力が出ます。露地ナスの導入事例では、点滴かん水同時施肥を組み合わせることで窒素施肥量16%削減、リン酸施用量25%削減、収量は慣行比17%増という結果が示されています。さらに、初期導入費用を23万円とした場合に単年度で回収できる(0.7年)という経営試算も掲載されており、「肥料代が下がる+収量が上がる+省力化」が噛み合うと投資回収が一気に短くなることが分かります。


(参考リンク:露地向け点滴かん水導入・液肥運用・経営試算・水圧と吐出量表までまとまっている)
農研機構「“減肥を目指した”露地栽培への点滴かん水導入の手引き(PDF)」

ドリップイリゲーション 目詰まり フィルター 水源 水質 メンテナンス

ドリップイリゲーション最大の敵は「目詰まり」です。手引きでも、点滴チューブは非常に小さい穴から灌水するため、点滴孔が小さなゴミで詰まると水が落ちず、フィルターを通してもフィルター自体の掃除が必要だと明記されています。
メンテナンス頻度の目安として、水源の水質にもよるが最低でも週1回、ため池の水などでは毎日掃除が必要な場合がある、とされています。つまり、導入後に放置できる仕組みではなく、「省力化=作業ゼロ」ではなく「作業が“軽い定期作業”に置き換わる」と捉えるのが現実的です。


目詰まりを減らす実務のコツを、現場で使える形にすると次の通りです。


  • フィルターは「詰まる前提」で、掃除しやすい位置に付ける。
  • 水源がため池・沢水の場合は、藻や微細有機物を想定し、遮光タンク・防藻ホースなどの工夫も検討する(手引きでも藻対策として遮光・覆いが推奨されている)。
  • 施肥を同時にやるなら、肥料由来の沈殿・残渣も“異物”として扱う(粒状肥料の注意点が示されている)。
  • トラブル時は、まず「フィルター」「電磁弁の空気混入」「水圧低下(配管延長・高低差)」の順に疑う。

ここで意外な盲点が「目詰まり=水が汚い」だけではないことです。水が透明でも、肥料の沈殿や、配管内での藻の発生、電磁弁まわりの空気混入など、複合要因で“結果として出ない”状態になります。導入時に、点滴孔の均一性を定期的に目視チェックするルーチンを作っておくと、収量に影響が出る前に異常を掴めます。


ドリップイリゲーション 独自視点 リン酸 土壌診断 pF 省力

検索上位では「節水」「省力」「目詰まり」が語られがちですが、現場で差がつくのは“ドリップ導入をきっかけに土壌診断を回す”運用です。手引きでは、日本の田畑では長年の施肥の結果リン酸が十分に蓄積している圃場が多く、「土壌にリン酸が貯まっているのに余分な肥料をやるのは無駄」という趣旨で、土壌診断を活用してリン酸減肥に努めるべきだと説明されています。
さらに、点滴かん水を使うと土壌水分を適正に保ちやすくなり、肥料吸収が改善して減肥のリスクが下がる、という理屈もQ&Aで説明されています。露地ピーマンの事例では、点滴かん水で最適土壌水分(pF1.9前後)を維持できた場合に収量が1〜2割向上し、リン酸施肥量を吸収量相当まで減肥できる可能性が示される一方、乾燥してしまうとかえって減肥で収量低下が起きる、と注意が添えられています。つまり“減肥は水分管理とセット”です。


独自視点として提案したいのは、導入初年度だけ「リン酸は急に攻めない」運用です。具体的には、初年度は点滴での水分安定化と施肥ムラの解消に集中し、土壌診断(有効態リン酸など)を取ってから翌年以降にリン酸の削減幅を段階的に詰めると、収量リスクを抑えながらコストを下げられます。ドリップイリゲーションを単なる設備ではなく、“データで施肥を更新する装置”として扱うと、上司チェックでも説明が通りやすく、現場にも定着しやすいはずです。




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